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第6話 地下室

「よしっ!」

 家での父とのやり取りを振り払うかのようにスタンは声を出してから作業に取りかかった。

 廃屋の玄関内にある自家発電システムの操作コンソールを手際よく壁から外す。コンソールボックスの厚みはやや大袈裟で、コードが小さな穴を通って引き込まれていた。その蓋を外してみるとやはり、元の機能的には意味を感じられない基板が1枚、繋げられていた。

「やっぱりな・・・。」

 消費電力が偽装されているならば、この基板がその働きをしているのだろう。であれば、基板を外せば元の数値が分かるはずである。スタンは自身の予想を確かめるべく、基板を外してコンソールへ正しい情報が送られるようにした。

「これで、うまくいくはずだけど・・・。」

 後はコンソールの電源を入れるだけなのであるが、ここに来てスタンは躊躇した。冷静に考えれば、消費電力を偽装するなんて普通のことではない。もしかしたら自分はヤバいことに手を出そうとしているのではないか。自身の身に危険が及ぶ可能性が頭をよぎり、ためらう。しかし、スタンの中で、この廃屋の謎に対する好奇心も確かに大きくなっていたのも確かである。

「・・・いや、ヤバいってことなら、そもそも、もう不法侵入だし、器物損壊だも

んな!今更!」

 不安を拭うために、スタンは「えいや」っとばかりにコンソールのスイッチを入れた。起動するコンソールの画面に数値が映し出される。すると、明らかに消費電力は上昇していた。スタンが持ち込んだものと、空調以外に動く電化製品がないこの廃屋では、異常と言えるような数値である。

「・・・となると、やっぱりどこかで電気を大量に使ってるってことだよな。」

 新たな発見があれば、先ほどまでの不安など忘れてしまう。スタンはそういう少年だった。もう次の興味の先へ向かっている。コンソールから壁へと続くケーブルをたどり、壁の中をのぞき込んで見たが、さすがに奥の方は全く見えない。壁を破壊しながらケーブルをたどるという方法もあるだろうが、それほど野蛮な手段をとるというのは、さすがに思いとどまった。

 小さな息を吐いて顔を上げると、スタンはこの廃屋の中を改めて探索するために歩きだした。屋根裏から2階、1階まで電力消費の原因を探して歩き回った。それらしい電気製品は見当たらず、途中からは隠し部屋のようなものがあるのではないかと、壁を叩いたり、棚を押してみたりしながら30分近く探索した。しかし、それらしい発見はなく、いよいよ見取り図でも描いて怪しい空間でも探そうかと考えていた矢先だった。

「ん?」

廃屋のキッチンの隅、軋む床の違和感にスタンは足を止めた。

「そうだよな。隠し部屋なんかよりよっぽど現実的じゃないか。」


 一人で納得しながら、足元に敷かれている大きめのカーペットを剥ぐ。そこには、段差なくうまく加工されてはいるが、一目で地下室への入り口だろうと分かる扉があった。

「さて・・・、何があるのかな、と。」

 引き出し式の取っ手を引っ張ってみると、扉は重厚な作りのようで、そこそこの重さを感じさせた。蝶番などはなく、ただ枠の上に蓋のように置くだけの作りだ。鍵は掛かっていないようで、スタンはゆっくりと扉を持ち上げ、横に置いた。

 中をのぞき込むと、急な階段が下へと続いていて2m程下に床があるのが確認できた。スタンの場所からわかったのは、暗い地下室の床に伸びる淡い光と、微かに感じる電子機器の動く気配だった・・・。


 スタンは大きく息を吸い、気を引き締めると、興奮を抑えながら一歩一歩階段を下った。空気がやや冷たい。地下だからというだけでなく、もしかしたらこの地下室にも空調設備があるのだろうか。あるいは、冷却システムが室温にまで作用しているのかもしれない。

 スタンがそう思ったのは、階段を下りて視界に入ってきた部屋の奥の機械が、スーパーコンピューターだったからである。

「すっげえ。ちょっと古そうだけど、・・・かなりの性能だろうな。」

 奥の壁一面を埋め尽くした筐体にスタンは目を丸くした。左右の壁に並ぶのは変電機や大型バッテリーだろうか。

 

「珍しいよな。アクセスPC直付けなんて・・・。いや、ここで隠れて使うため・・・?」

 一般的に、スパコンを冷却するための環境が人間には辛いため、アクセスは別室から行われる。わざわざ同じ空間で使えるようにするのは、何か特別な意図があるようにしか思えないし、消費電力の偽装やこの部屋が隠されていたことからも、スタンがそのように考えることも当然だった。


「まあ、とりあえず、どんなものか見せてもらいましょうか・・・!」

 新しいおもちゃを開封するような顔で、スタンはアクセスPCをいじろうとする。

 しかし、ふとディスプレイ横につけられた付箋が目に入った。古くかすれた字は読みづらいが、筆跡は力強く、何らかの意志が感じられるものだった。


-人類を見守る神、アレルヤ-


「アレルヤ?」

 スタンは耳慣れぬ言葉に少し手を止めるが、すぐにアクセスPCのデータを閲覧し始めた。

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