第56話 彼らの開始位置
「マリアを助けるために、『アレルヤ』を復活させましょう・・・!」
部屋に戻ったマヤ達にスタンは言った。
「確かに『アレルヤ』なら、マリア君を助けられるかもしれん。だが、この前の話は・・・、この社会の変化を、その結果、誰かが傷つくかも知れないという可能性を引き受ける覚悟はあるのか?」
マリットが重々しく問う。
「正直・・・、この世の中のことよりも、今はマリアを助けることしか考えてません。」
道義的には正しくないことを言っている自覚はあった。しかしスタンは力強く続ける。
「でも間違いなく言えるのは、マリアが消えても良いなんて覚悟は、俺には出来ません。」
自分の大切な者以外のことは考えない。それは、無責任な高校生そのものの答えだったのかも知れない。しかし、スタンの目はどこまでも真剣だった。
「フフフ・・・あっはははははははは!」
突然マヤが笑い出す。マヤらしくもない場違いな行動にソーレンが聞く。
「なんだよ?どうしたんだよ?」
「自分がやりたいからやる。単純よね。本当に単純なことだわ。」
息をつき、マヤは妙にすっきりした顔でスタンの方を向いて言った。
「・・・私も、この前からずっと考えてた。『調停者』は許せない。正しくない。でも、自分は正しいのか?って。だけど肝心なのは、正しいか、正しくないかじゃないのよ。自分がやりたいことをやる。守りたいものを守る。それだけだわ。その点では私達も『調停者』も違いはない。でも、自分のわがままだと自覚して、『社会のため』とか言い訳しない分だけ、私達の方が上等よ。」
マリットは頭をかきながら笑う。
「はかなげな未亡人だったのに・・・、たくましくなったものだな・・・。」
「まあ、いいんじゃないかな?『調停者』によって保たれている今の社会が崩れたとして、それで傷つく人が居るかどうかは可能性の話だよ。良い方に転がる可能性だってある。少なくともマリアさんを救える可能性もあるし、これから『調停者』に処分される人が居なくなるのは間違いない。」
パトリックがポジティブに言った。ソーレンも乗っかる。
「おもしれえ!結局俺たちは、自分の興味を我慢できなくて『調停者』に目え付けられたヤツや、その身内だ。結局もとの位置に戻ったってことだな!」
『ふふ・・・』
皆の会話にマリアが小さく笑う。一同の視線が集まる。それはすでにマリアを心配するだけの視線ではなく、必ずマリアを助けようという決意の視線だった。
『ありがとう、みんな・・・。・・・ワタシも手伝う!かなり弱っちゃってるけど、まだまだ動けるよ!』
マリアの目にも、もとの元気が戻ってきていた。
「・・・ソーレンの言うとおりだな。所詮、我々『エクスキタティ』はパンドラの箱を『覗くな』と言われても止められない愚かな者達さ。ならば、最後に残った希望をつかみ取るのみだ。」
マリットが立ち上がり高らかに言った。
「では、行動しよう!罠を張るということは、そこに我々の目的が確かにあると言うことだ。『アレルヤ』を目覚めさせるため、国立航空宇宙技術開発センターへ!」




