第51話 入手と脱出
所長室を出て、また例の保管室へ向かうスタン。
改めて金庫の前に立ち、付箋に書いてあった番号の通りに、ダイヤルを回す。がちゃっと音を立てて、金庫が開いた。
「よし!」
『やった!』
無事にタスクをこなし、喜ぶ2人。
この厳重な金庫の中には、果たして何が入っていたのか。
息をのみつつ扉を開けると・・・、中にあったのは、1つのメモリースティックだった。
『これ・・・、ずいぶん古い物みたい・・・。製造は多分、50年前ぐらいのモデル・・・。』
マリアがメモリースティックの様子から検索した結果を伝える。
「つまりは、『アレルヤ』がいた頃ってことだ。持ち帰って調べてもらおう。」
スタンは慎重にメモリースティックを取り出し、再び金庫の扉を閉めた。
後は無事に研究所を出るだけである。
保管室を出たそのとき、スタンのスマートグラスに、マヤからのメッセージが流れた。
【もうすぐプログラムおわるロブくんがトイレに!】
かなり切迫した様子が文章から伝わってくる。
「まずいな。ロブがトイレに来るのも、あのメカトロニクスラボの前に人が集まってるのも・・・!」
『もう出るだけなら、多少派手になってもいいよね?』
マリアが不穏なことを言って悪い笑顔を見せる。
「・・・大丈夫、だよな?」
『大丈夫、だよ?』
引きつった顔で確認するスタンに、マリアがにっこりと返す。
「~~~~~っ。よし!任せた!!」
『ラジャ!』
マリアの返事と共に研究所内にけたたましい警報音が鳴り響いた。
【研究所内で火災が発生しました。所内人員は直ちに屋外へ退避してください。直ちに屋外へ退避してください。】
火災を伝える案内音声が流れる。廊下の向こうから、研究員達が避難する足音が聞こえてきた。
「なるほどな!これに紛れようってのか!」
スタンは、人波にのって、管理区画を抜け、さっと白衣を脱いでリュックにしまった。そして、何食わぬ顔で、オープンデーの一団らしき人々に交じった。
「あ、スタン!無事出てたのか!よかった!」
スタンを見付けたロブが声を掛けてきた。隣にはぐったりした表情のマヤがいる。長時間トイレにこもっている体のスタンのことをごまかしつつ、ロブの相手をしていたのだ。その苦労は想像に難くない。
「みなさん、申し訳ありません!火災警報は、装置の誤作動だったようです。研究所内に火災はありません。安全です!」
研究所内の状態を確認した所員から連絡を受け、係員がオープンデー参加者に呼び掛ける。ちょうどプログラムを終えるところだったので、係員からの丁寧な謝罪を受け、そのままオープンデーは解散となった。
「あれ?スタン?シンディさん?あれー?どこ行ったー?・・・せっかくだから飯でも一緒に食いたかったのになあ・・・。あ、でも腹の調子が悪いかー・・・。」
姿を消したスタンとマヤを探し、ロブがキョロキョロしている。これ以上ロブの相手をする必要のないスタンとマヤは、早々現場を離れ、物陰に隠れていたのだった。
「よっ!お疲れ!!」
急に後ろから声を掛けられ、ビクッとする2人。振り返ると、そこにいたのはソーレンだった。
「びっくりした。何してるのよ?ここで。」
マヤが急な出現を非難する。
「御挨拶だな。スタンとマリアちゃんのピンチを救ったのは俺なんだぜ?」
「え?」
聞けば、あのとき所長室から所長が出て行ったのは、受付でソーレンが「所長に取材の約束がある」と、ごねていたかららしい。
「助かりました。電話が鳴るまで、マジでもうダメかと思ってましたよ。」
ピンチを救われた礼を伝えるスタン。ソーレンも自分の仕事を誇らしげに笑う。
「頼りになるだろ?俺も。ところで、ゲットした物は何なんだよ。」
「ああ、これです。」
スタンは、金庫の中にあったメモリースティックを取り出した。
「古そうだな。『アレルヤ』の時代につながる匂いがプンプンするぜ!」
「ええ。」
「何にせよ、みんな無事で、目的を達成できて良かったわ・・・。」
3人で笑い合う中、マリアがささやく。
『早く、パトリックさんのオフィス戻ろ?私も嬉しい叫び声上げたい!』
今回の功労者ながら、いつもの調子のマリアに苦笑しながら、一行はパトリックのオフィスへ向かった。




