第47話 潜入開始 ~邪魔なあいつ~
翌日の昼、スタン達はカフェで昼食をとりながら、行動開始に向けて待機していた。
パトリックの姿はない。彼は次期先端技術研究所の友人をランチに誘い、それとなく研究所の内部で、どこを探るべきか参考になる情報を引き出す役割だ。
準備は万端。スタンは昨日のスマートグラスを掛け、マヤのリュックの中には例の3Dプリンターが入っている。
オープンデーの受付開始は13時半。もう間もなくスタン達も行かなければというときに、パトリックからの着信が鳴った。
「マリットだ。どうだ?パトリック。」
「やあ、お疲れ。食事を終えて友人と別れたところだよ。機密が多くてなかなか聞き出すのには苦労したけど、職員間での噂話として、気になる物があった。職員用区画の奥に、普段から誰も入らない小さな保管室があるらしいね。鍵も見たことがないそうだ。何かヤバい物が入ってるんじゃないかって。」
「そうか、分かった。ありがとう。」
電話を終えたマリットはマヤとスタンに告げる。
「目標がより具体的になったぞ。マリア君とデータを共有して、私もサポートするから、二人ともよろしく頼む!」
スタンとマヤは力強く頷き、カフェを後にした。
次期先端技術研究所オープンデーには、学生や保護者を含めて、3,40人が集まっていた。受付に着いたスタンとマヤも、列に並ぶ。そのときだった。
「あれ?スタン?スタンだよな!?なんでこんな所にいるんだよ?」
「え!?・・・ロ、ロブ!?」
声を掛けてきたのは、スタンのクラスメイト、ロブだった。
「どうしたんだよ、お前。眼鏡なんて掛けて、似合わないな。先週はずっと学校休んでたよな?引っ越しする予定って聞いたけど、この街なのか?」
ロブはヘラヘラしながら矢継ぎ早にスタンに質問してくる。
「いや、えっと・・・。」
「スタン君、こちらは?」
狼狽するスタンに、マヤが聞いた。
「あ、・・・同じ学校の、ロブです・・・。」
しどろもどろになりつつ、スタンがロブを紹介する。
「こんちは!えーっと?スタン、お前、お袋さんいなかったよな?誰?」
「はじめまして。私はスタン君の叔母のシンディです。よろしく。」
まだ慌てているスタンに代わり、マヤが答えた。「シンディ」とは、今回のオープンデーに申し込むために使っている偽名である。
「へえ。俺はロブです。スタン、お前、こんな美人のおばさんがいたのかよ。知らなかったぜ。」
相変わらずヘラヘラと話し続けるロブに、スタンの焦りは募った。
もうすぐスタン達の受付の番が回ってくる。スタンも偽名で申し込んでいるので、このまま「スタン」と呼んでくるロブが近くにいるのはまずい。どうしようかとスタンが慌てた頭で思案していると、ロブの端末が着信を告げた。
「はい、もしもし?え?キャンペーン当選?俺、そんなもん申し込んだ覚えないですけど・・・。スタン、悪い、後でな。よく分かんねえ電話が・・・。」
そう言いながら、ロブは離れていった。
スタンのスマートグラスに、マリアからのメッセージが流れる。
【マリアちゃんファインプレー!】
【適当な内容をでっち上げて、ロブに電話掛けといたよ!】
「助かった・・・。マリア。」
ほっと胸をなで下ろすスタン。しかし、ロブというイレギュラーの登場に、スタンの不安は大きくなるのだった。




