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第45話 パトリック

「やあ、よく来たね。マヤ、マリット。・・・その髪型、おもしろいね。」

 痩せて眼鏡を掛けた男が、バルデニア中央駅から出てきた一行を出迎えた。

「やあ、パトリック。出迎えありがとう。世話になるよ。変装のためだが・・・似合っていないか?」

 マリットが長髪のカツラを気にしながら、男と握手をした。男の名はパトリック。ここ、バルデニア・サイエンス・シティで、IT企業を営むエクスキタティの仲間である。

「元気そうね。パトリック。」

 マヤもパトリックと握手を交わす。

「初めましてだな。俺はソーレンだ。よろしく頼むぜ。」

「スタンです。よろしくお願いします。・・・ここは街中なんで、マリアは後で紹介します。」

 同じエクスキタティでも、ソーレンはパトリックに会うのは初めてのようで、スタン共々、自己紹介をした。

「頼まれた準備はしてある。まずは僕の会社のオフィスに行こうか。」

 挨拶を済ませた一行は、パトリックの会社へと向かった。


『はーい、初めまして!有能美少女AIのマリアでっす!』

「すごい!こんな自然に会話できるなんて、驚きだね。僕はパトリック。よろしくね。ぜひたくさんお話ししたいよ。」

 パトリックのオフィスに入ってすぐ、マリアが自己紹介した。パトリックもIT技術者らしく、マリアの会話や挙動に興味津々のようだ。

 パトリックの会社は、会社と言いつつも、パトリックの個人事務所で、時折繁忙期に短期契約社員を雇う以外は、彼一人で運営しているらしい。


「それで、パトリック。マリア君の本体だが、何とかなりそうか?」

 マリットが移動中にパトリックへメッセージを送り、相談しておいたことを切り出した。

「うん、ウチのスパコンで性能的には何とかなると思うけど、どうかな?」

 マリットとパトリックで考えたタイムラグへの解決案は、マリアの本体をパトリックの会社のスパコンに移すことだった。

「マリア君、どうかね?このオフィスのスパコンに移ってこれるかね?」

「これが、ウチのスパコンのIPだよ。」

 マリット達に促され、マリアは移動を試みる。

『オッケー。うん、よいしょっと。行っくよ-・・・。』

 間もなく、オフィスの奥のスパコンの部屋から聞こえる冷却装置の音が大きくなる。マリアのデータ受け入れと処理のため、スパコンが高稼働状態になったのだ。

「おう、すげえな・・・。マリアちゃんのデータ移動って結構大事なのな・・・。」

 音に驚いたソーレンが、しみじみと呟いている。

 数分間、その状態が続いた後、やがてまた冷却装置の音は静かになった。

『よし!お引っ越し完了!すごい!ウォズさんのスパコンよりも外に出やすい!これが、違法じゃない接続なのね!!』

 マリアがのびのびとした声で、快適になった環境を喜んだ。確かにマリア自身が言うように、彼女にとって初めてのしっかりとプロバイダに契約された通信環境での接続である。

「当然、お前自身の素性はカモフラージュできるように注意は怠るなよ」

『大丈夫!まっかせて!・・・ほら、ほら、タイムラグなーし!スムーズコミュニケーショ~ン!』

 警戒を促すも、明らかに調子に乗っているマリアに、スタンは頭を抱えるしかなかった。

「あはは、気に入ってもらえて良かったよ。それにしても本当にユニークで興味深いね。マリアさんとも話したいし、夕食はここで出前を取ろうか。」

 パトリックは愉快そうに、近隣の飲食店のテイクアウトメニューリストを差し出した。

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