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第42話 望まれぬ来訪

 オットーとトレイスは、ウォズの館の前に立っていた。

 彼らはまだ、ここが「エクスキタティ」にとって、スタンとマリアにとって、重要な場所であるとは気付いていない。スタンの家にあったモバイルルーターの通信記録から、怪しそうな場所を次々に当たっている途中であった。


「ここは・・・、怪しいかも知れませんね。しばらく空き家だった雰囲気があるのに、玄関周りの動線は草が踏まれているし、落ち葉もよけられている。玄関のドアノブも妙に汚れが付いていない。」

 オットーが鋭い視線で、館の様子の違和感からスタンらの痕跡を感じ取る。そのとき、トレイスの端末から着信音が鳴った。

「はい、トレイスです。はい。・・・はい。・・・分かりました。ご苦労様でした。」

 トレイスは電話を終え、オットーに報告する。

「やはり、あの館から、違法なネットワーク接続が最近開始されていました。既存のプロバイダを装っていたようです。その通信は・・・、今も続いている、と。」

「つまり・・・、中にいる可能性もありますね。」

 そう言いながら、オットーは懐の装備を確認する。トレイスはそれを苦しい表情で見つめる。スタンに対しそれが使われることを想像したのだ。

「心配いりません。テーザーですよ。使わないに越したことはありませんが。」

 トレイスの表情に気付いたオットーが穏やかにそう言った。しかし、彼の腰の方には実銃も携えられていることに、トレイスは気付いていた。中にいるならば、抵抗はしてほしくない。そう願いながら、トレイスは玄関ドアを確認しようと近づいた。

 ドアノブにそっと触れると、しっかりと施錠されているようだ。オットーはこれをどう解錠するつもりなのだろうと考えていると、突然腕をつかまれ、後ろに引き倒された。

「不用意ですよ。トレイス君。」

 オットーは厳しい表情で玄関ドアの上方を睨んだ。

「どうやら、あの監視カメラは生きています。こちらの動きを悟られた可能性があります。ここは一旦監視しつつ、こちらの手勢を増やしましょう。」


 オットーが様子見と入念に準備することを決めた頃、マリアは大いに慌てていた。

『どうする?どうしたらいい?ワタシの本体壊されちゃうかもしれない!どうしよ!?』

「落ち着け!お前が気付いたってことは、玄関のカメラとかで確認したんだろ?一度共有しよう。」

 スタンが一喝して、マリアに情報の共有を促した。マリアは慌てながらも、マリットのノートPCに玄関カメラの映像を転送しようとする。

「ああ、ここを探知されないようにいくつかのサーバーを経由して、あの館からのデータの経路を分からないように頼む。」

 マリットが抜け目なくマリアに作業について注文した。具体的な動作を指示されている内に、マリアも落ち着いてきたようだ。やがて、PCに映像が映し出された。

『ほら!これ!!』

 マリアが言うように、カメラにはトレイスが映し出されていた。

「こいつが『調停者』なんだな。神経質そうな面してやがる。」

 トレイスの顔を見て値踏みするソーレン。そうしている間に、トレイスの姿が後方にさっと動いて見えなくなった。

「・・・一瞬、後ろに男が映っているな。こいつが後ろからカメラに写らないように引っ張ったのだろう。もしかしたら、こいつは『調停者』の中でも上役の『執行官』かもしれん。」

「『執行官』?」

 マリットが口にした耳慣れない言葉にスタンが反応する。

「ああ。危険と判断した人間の追跡や処分を専門に担当する者達だ。こいつらは容赦がない。スタン、君の件は思った以上にヤツらに危険視されているようだな。」

 マリットの説明にマヤが続ける。

「周到で、躊躇のないヤツらよ。カメラに気付いたとなれば、短時間で十分な用意を調えて、一気呵成に動くはず。残念だけど・・・、ウォズの館は諦めるしかないわ・・・。」

 ウォズの形見とも言える館を諦めねばならない状況に、マヤは悔しさをにじませる。


『え、え!?ワタシは!?ワタシはどうすれば良いの!?』

 マヤの言葉にマリアがまた慌て出す。しかし、スタンが余裕をもった声で言った。

「大丈夫だ、マリア。逃げ道は用意してある。」

 きょとんとするマリアに、スタンはにやっと笑って見せた。

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