第33話 侵入作戦
朝になり、ゲイリーが飛行機の手配をする。ゲイリーが農繁期に短期契約のパイロットとして働いている会社で、よく趣味の飛行にも機体を貸してもらっているそうで、すんなりと用意が出来た。
決行は14時。
時間までは現地での偵察である。ゲイリーと一旦わかれたスタン達は研究所付近まで移動し、死角になる尾根の影から様子をうかがった。
「やっぱり、『旧』って付く割には警備の人間の数が多い気がするな。全部で5人だ。でも、見張られてるのは入り口周辺のみだな・・・。結構岩とか、死角になるところはあるから、何とかなりそうだ。」
ソーレンが双眼鏡を覗きながら伝える。
「OK。決行ね。」
マヤが確認すると、遠くから小型機のプロペラ音が聞こえてきた。ゲイリーである。
マヤは「予定通り決行」の合図としてフラッシュライトを小型機に向かって点滅させた。
「よーし、俺の名演技を見せてやるか。」
点滅を確認した機上のゲイリーは、張り切って操縦桿を左右に揺らす。あくまで自然なふらつき方で、小型機は高度を下げていく。近づいてくる爆音に、研究所の警備兵も気付いたようで、小型機を指さして何か言い合っている。
「さあ、行こう!」
小型機と研究所の様子を見定めて、マリットが声を掛ける。マヤ達の車も走り出した。運転席にはマヤ、後部座席にはソーレンが座り、その横にスタンとマリットが外から見えないように縮こまっている。飛行機が降りた後に到着できるようにタイミングを合わせて加速する。
間もなく小型機が研究所付近に向かって着陸態勢を取る。ふらふらした飛行を装いながら、未舗装の大地に無事着陸させるその様子を、スタンは現場に近づいてゆく車の窓から隠れて目にした。ゲイリーの操縦技術は相当なものなのだろうと思われた。
研究所のフェンスにぶつかりそうな距離に降り立った小型機を見て、警備兵が次々と駆けつける。
「おい!どうした!なぜこんな所に着陸する!?」
銃を向ける警備兵に対し、ゲイリーは力なく操縦席のドアを開け、迫真の演技で助けを求めた。
「すまない・・・。操縦してたら、急に気分が悪くなって・・・、頭が痛い。助けてくれ・・・。うっぷ・・・」
盛大に嘔吐までして見せた。彼自身の特技か、あるいは仕込みでもしていたのだろう。さすがに警備兵も銃を下ろしうろたえる。
「大丈夫か!?ひとまず機体から降ろすぞ!」
そこへ、マヤの運転する車も駆けつける。ちょうど入り口と小型機の間を遮るような位置へ停車する。
「大丈夫ですか?空港でもないのに飛行機が降りていくのが見えて・・・。力を貸せますか?」
運転席からマヤが声を掛ける。警備兵から見えない側の後部座席のドアを開け、ソーレンも口を出した。
「事故か?病院に運ぶなら協力するぜ!」
その間にマリットとスタンは車の影に隠れながら車外に出て、研究所の入り口を確認する。
まだ出入り口横の詰め所には1人警備兵が残っている。このままでは侵入することが出来ないと、マリットとスタンがまごついていると、ソーレンが残る警備兵に声を掛けてアシストした。
「おい、なんかあの操縦士、ふらふらしてるぜ。水ないか?水!」
水のボトルを手に、詰め所から出て行く警備兵。その隙に、マリットとスタンは研究所内部に滑りこむことに成功した。




