第32話 ゲイリーと作戦
夜になり、モーテルの駐車場にドロドロと力強いエンジン音のハーフトラックが乗り入れてきた。
「よお、マリット、マヤ、ソーレン!直接会うのは久しぶりだな!」
がっしりとした体つきの男が窓を開け顔を出す。
『エクスキタティ』の仲間、ゲイリーだ。年齢はマリットとそう変わらないように見えるが、老人と言うにはあまりにたくましい体つきをしているのが分かる。
ゲイリーはハーフトラックを駐車させると、どかっと地面に降り立った。
「元気そうだな!おっさん!」
「うるせえだけの若造よりはな!がはは!」
ソーレンとバンッと音を立てて握手するゲイリー。なかなか豪快そうだが、フレンドリーな人柄がそのやりとりから分かった。
「来てもらってすまんな。じゃあ、部屋で話そう。」
マリットが促し、一同はモーテルの部屋に入っていった。
「それで、君がスタン君か?俺はゲイリーだ。よろしくな。」
ゲイリーが腰を下ろす前にスタンへ右手を差し出す。
ことの成り行きは大まかにマリットからのメッセージでゲイリーにも伝えられていた。スタンも右手を差し出し握手を交わす。
「スタンです。よろしくお願いします。後・・・」
スタンはウェアラブル端末の画面をゲイリーに向ける。
『ワタシはマリア!よろしく!』
「うお!すげえな。本当に会話できるんだな!ゲイリーだ。よろしく頼むぜ。」
AIであるマリアに驚きを示すが、すんなりと受け入れて自己紹介をするゲイリーに、スタンは不思議と安心感を覚えた。
挨拶を終えたゲイリーは、どかっとベッドに腰を下ろし、具体的な話を始める。
「さて、『旧クラッグフェル空軍研究所』だな。実はよ、ここいらはパイロット時代の訓練空域でよ。何度か上空を飛んだことあるぜ。」
「なるほど、それは助かる。私としてはな・・・」
こうして、その後夜更けまで翌日の「旧クラッグフェル空軍研究所」潜入の手筈について、一行は検討を重ねた。
「エクスキタティ」一行が考えた作戦は次の通りである。
まず、ゲイリーが「現役時代が懐かしくなった」という名目で、小型機で上空を飛行する。空軍の予備役特権で訓練空域での飛行の許可を取ることが出来るらしい。
その上で、体調不良を装い、「旧クラッグフェル空軍研究所」入り口付近に緊急着陸をする。そこへ、残りの面々も「空港でもないのに飛行機が降りていくので心配して見に来た」という体で車で駆けつける。ただ、車を降りて対応するのはマヤとソーレンのみで、マリットとスタンは、警備兵が何事かと駆けつけてきた隙を突き、侵入する。
スタンが侵入担当になることを、マヤは最後まで反対したが、スタンのPC技術と若さ故の身の軽さは、この役割への何よりの適正だった。
「スタン君、絶対に無理はダメよ。」
結局マヤは折れたが、しつこいほどにスタンに念を押すのだった。




