第28話 次の行動へ
翌朝、朝食を終えたマヤ達は、今後の方針を決めるため、またリビングに集まっていた。当然のように一緒にソファに座っているスタンに、マヤが言った。
「スタン君、あなたは参加しなくても大丈夫よ。この先、私達と行動するのはかなり危険だわ。ちょっと窮屈かも知れないけど、この農場でなら隠れて生活できる・・・。」
『ダメだよ。マヤさん。今更私達をのけ者にしようったって。』
マヤが諭すのを遮ってマリアが言った。先を越されたスタンも続ける。
「そうですよ。俺たちはもう知ってしまったんです。最後まで付き合わせてください。俺、役に立てますよ。こう見えてPCにはかなり強いです。あの館に忍び込めたんだから・・・」
「危険なの!子どものあなたを巻き込みたくない!」
スタンが言い終わる前に、強い調子でマヤが断ち切った。
その勢いに、スタン達もたじろぐ。2人は知るよしもないが、マヤが夫とともに亡くした子どもは、生きていればスタンと同じほどの年になっているはずだった。亡くした我が子とスタンが、マヤにはどうしても重なって見えてしまっていたのだ。
「まあ、落ち着け、マヤ。」
マリットは静かにマヤをなだめた。マヤの思いをどことなく感じ取っていたのかもしれない。
「彼らが軽い気持ちで言っているようには見えんよ。子どもとは言っても、もう自分の決断の重さぐらいは理解できる年じゃないか。そうだろう?」
マリットはスタンを見つめた。優しくはあるが、1人の人間として、自身の判断に責任を求めるような厳しさもある瞳だった。
スタンは居住まいを正し、言葉を選びつつ伝えた。
「はい・・・。危険なことは承知です。一昨日『調停者』の先生に、拉致されそうになったから、怖さも感じます。でも、マリアを生み出す切っ掛けは俺が作りました。俺ももう、ウォズさんから大事なものを引き継いだ1人です。もちろん・・・マリアも。お願いします。あなたたちと一緒に、行動させてください。」
頭を下げるスタンを見て、ソーレンが頭をかきながら助け船を出した。
「・・・いいんじゃないか?スタンのPCの技術は確かそうだし・・・。この先長い人生、隠れて暮らすよりは、動いた方が後悔も少ない。」
『だよね、ソーレン!「挑戦しない人生なんて、生きてないと一緒だ!」よね!』
マリアが「マイ・バディ・アイン」の台詞を引用して、ソーレンに乗っかった。自身の作品の決め台詞を持ち出されて、ソーレンも悪い気はしていないようだ。
スタンの真剣な言葉と、皆の圧力に負け、マヤは深いため息をついた。
「『ウォズから引き継いだ1人』・・・。そんな言い方、ずるいわよ・・・。」
マヤはスタンの方に向き直り、目をまっすぐに見ながら伝えた。
「いいわ。でも、条件よ・・・。危なくなったら、あなた達は真っ先に逃がす。そして、絶対に無茶はしないで。」
マヤの気持ちを受け止め、スタンも目をそらさず答えた。
「分かりました。」
『スタンが無茶しそうになったら、ワタシも止めるよ!』
「お前が人のこと言えるかよ!」
2人のやりとりに、少しリビングの空気がほころんだ。
改めて、マリットが今後の動きについて話を始める。
「おそらく、あの映像の数字の羅列は、座標だろう。GPSの位置情報で問題なさそうだ。示された座標は3つ。内1つは斜線が引かれていた。『アレルヤの原典』のあった場所だろう。そして、2つ目は・・・ここだ。」
マリットが地図を広げて、数字から考えられる位置を示した。
「ここは・・・、閉鎖された軍事施設か?『旧クラッグフェル空軍研究所』。えーと・・・」
『ストップ!!』
施設名でweb検索して情報を集めようとしたソーレンを、マリアが声を上げて制止した。正確には声と言うよりも、一旦ソーレンの端末を強制的にオフラインにしたようだった。
「何すんだよ、マリアちゃん!」
通信不能になった端末を見て、ソーレンが抗議する。
『検索をかけた瞬間に、監視ボットが動き始めてた・・・。何とかごまかせたと思う・・・。何かある施設みたいだよ。そこ。』
「げ、マジかよ・・・。危なかったのか・・・。サンキュー。」
危険な状況を回避させられたことを知り、驚きながら感謝を述べるソーレンを傍目に、スタンとマリット、マヤはうなずき合った。
「そんな監視の目を光らせているということは・・・ビンゴですね。」
「うむ。」
「きっと、『アレルヤ』に関する情報が、何かあるのね・・・!」
マリットが、みんなに向かって確認をする。
「『アレルヤ』についての情報はまだ少ない。もっと多くの真実を知らなければ、我々の現在について納得をすることもできないし、政府の行動の善悪を判断することもできない。かなりの危険が予想されるが・・・」
『だから今更でしょ、マリットさん!』
マリアが意気込む。マヤ、スタン、ソーレンも目を合わせ同意を示した。
「よし、では行こう。『旧クラッグフェル空軍研究所』へ!」




