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第26話 アレルヤ

『できた!見られるよ!』

 10分ほどで解読作業を終えたことをマリアが告げると、全員が画面に注目した。

「よっしゃ、頼むぜ。流してくれ」

 ソーレンが促すと、マリアは動画を再生し始めた。

「・・・!ウォズ・・・!!」

 映し出された男性を見てマヤとマリットが思わず声を上げた。画面の中では、少しやつれた表情の初老の男性が写っていた。

【・・・願わくば、この映像を、「エクスキタティ」の仲間達が見てくれていることを願う・・・。おそらく、私はすでに殺されているのだろうな・・・。】

 映像のウォズは静かに語り出した。


【・・・私は政府系のシステム管理会社の下請けに潜り込んで、「調停者」について探っていた。そこまではみんなにも報告していたから知っているだろう。】

 農場の拠点のリビングの中で、ウォズの映像は彼の最後の物語を語り続ける。

【いろいろなシステムに侵入して調べる中で私は、「調停者」とは違う、厳重に保護されたデータの存在に気付いた。それは、・・・座標だった。いくつか示されたその場所に行き、手に入れたのが、「アレルヤの原典」だ。】

 「アレルヤ」。あの付箋にあった言葉に、一同が一時視線を交わして、緊張感を高めた。

【それは、過去存在した高性能なAIを再現するための、自立型学習ワークフローと、生成モデル群を統合したアーキテクチャ のようなものだった。館のスパコンに一緒に保存してあるデータだ。残念ながらさらに詳細に調べる時間が私にはない。】

 続いて述べられた言葉に、スタンとマリアは反応せざるを得なかった。

『あ、これって・・・?』

「ああ、マリアを生み出した、あのプログラムのことだ。」

 マリアの出自に関わる情報の一部が得られたが、それは「アレルヤ」の「原典」だという。では、「アレルヤ」そのものは一体何なのか。一同の関心はそこに寄せられた。その疑問に応えるかのように、ウォズの映像は続けた。

【「アレルヤの原典」とともに、隠されていた歴史資料の一部も手に入れることができた。「アレルヤ」は、過去存在したというこの社会システム全体を統括する超AIだ。当時の政府は何かの理由があって、その「アレルヤ」を封印したのだ。・・・問題はここからだ。過去にあった、AIが制限される切っ掛けとなった、AIの暴走事故。それは、政府の作った偽の歴史だ。】

 「偽の歴史」という言葉に、マヤ、マリット、ソーレンが目を見開く。

【過去のAI災害の真相・・・。原因は、AI・・・つまり「アレルヤ」の暴走ではない。政府が社会システム全体を統括していた「アレルヤ」を強制停止したことによるものだ。】

「なんだよ、それ!AIじゃなくて、政府のポカでたくさんの人が死んだってのか!?」

「ソーレン、気持ちは分かるが、まだ続きがある!」

 たまらず思いを吐き出したソーレンをマリットがおさえた。

【なぜ、政府が「アレルヤ」を強制停止したのかは分からん。その後AIを禁止した理由もな。・・・だが、私は残念ながらもう、ここまでだろう・・・。「アレルヤ」に関する情報を手に入れてから、政府の監視、警戒が特に厳しくなり、すぐに私は「調停者」に目を付けられ、執拗な追跡を受けた。この、君らにも隠していた館の存在も・・・うまく巻いたつもりだが、万が一ここが発見されていた場合に備え、一旦情報は秘匿する。もし、この映像を見ているのが「調停者」ならば・・・、諦めろ。この館のシステムはスタンドアロンだ。私の仲間を追うことはできない。もし何の関係もない者がこの映像を見たのなら、・・・申し訳ないがお気の毒様だ。何とかこの情報を忘れて平和に生きてくれ。そして・・・】

 最後にウォズは、少し目を潤ませながら言葉を紡いだ。

【「エクスキタティ」のみんな。最後に不義理になってすまなかった・・・。「調停者」によって、たくさんのものを奪われた人生ではあったが、君たちと出会えたことは何よりの幸福でもあった。】

 ウォズは胸ポケットから手書きのメモを取り出し、カメラに近づけて見せた。数字の羅列が書かれているメモだった。

【この後、どう行動するかは君たちに任せる。・・・我々は自由だ。】


 その言葉を最後に映像は終わった。静かになったリビングで、ソーレンは俯いて考え、マリットとマヤは涙ぐみ鼻をすすっていた。

 スタンとマリアは、彼らが気持ちを落ち着けるのを静かに待った。

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