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第25話 ローサの農場

 マヤ達エクスキタティの面々はスタンを連れ、廃屋を後にした。


 ソーレンの運転する車は街を抜けて、郊外の農場へと走って行く。

 なだらかな斜面に広大な果樹園が広がり、それに比べれば小さな畑では、数種類の野菜が栽培されているようだった。

 朝日を受けて美しく輝くその光景に、スタンは未だ追われる身の現状を暫し忘れた。


 農場の中の大きな平屋の前に車が止まると、ふくよかな女性が一行を出迎えた。

「お疲れさま!おや、なんだい?ずいぶん若いお客さんもいるじゃないさ。」

 女性は遊びに来た親戚達を出迎えるかのように言った。

「ただいまローサ。彼はスタン。行き掛かり上、しばらくここで匿ってもらいたいの。」

 マヤがスタンを紹介すると、ふくよかな女性、ローサは、スタンに右手を差し出しつつ言った。

「私はローサ、よろしくね。あんたもいろいろで、『調停者』に追われてるんだろ?いくらでもここにいていいからね。」

「ありがとうございます。よろしくお願いします。」

 スタンはローサと握手を交わし言った。

 ローサの気さくさがスタンに安心感を与えたのか、彼に生理現象を生じさせた。腹の音である。

「あっはっは!若者らしくて良いね!みんなも疲れたろ?とりあえず、朝ご飯食べてから休みな!」

 気まずく赤面するスタンをよそに、ローサは笑って手招きしながら、食事の準備のために平屋の中に引っ込んでいった。

「ま、とりあえず飯食って、少し寝てから考えようぜ。ほぼ徹夜だからなァ・・・。」

 あくびをしながらソーレンが皆を促した。


 農場らしく、新鮮な野菜がたっぷりと使われた朝食は、実に滋味深く絶品だった。仕事の忙しい父と生活していたスタンにとっては、野菜の多い健康的な食事など久しぶりなので、高校生らしい食べっぷりを見せて、作ったローサを喜ばせた。

『いいなぁ・・・。さすがにワタシも味覚は理解できないのが悔しいよぉ・・・。』

 ウェアラブル端末から、うらやましそうに食事を見つめるマリアだった。


「さて、それではウォズの残したデータを見てみよう。」

 マリットが切り出す。

 朝食を食べ終え、仮眠を取った後、一同は再びリビングに集まった。

『ローサさんは話を聞かないの?』

 マリアが尋ねる。朝食の間に、食べられないマリアは、ローサとの会話を楽しんでいた。ローサもはじめはマリアがAIということに驚いていたが、食事が終わる頃にはずいぶん打ち解けていたようだった。

「ローサは農場の仕事があるからな。彼女はジャーナリストだった息子を『調停者』によって廃人にされてな。俺らの活動に加わることはないけど、こうして拠点を提供するって形で協力してくれてる。」

 ソーレンがローサの立場を説明した。


 あんなに明るい人にも、そんな辛い過去があるのだ・・・。そう思うと同時に、母を亡くし、自分を育ててきた父のことがスタンの頭によぎった。

 どんな形であれ、「調停者」との問題を解決して、父のもとに戻って話がしたい。今後の行動に対する静かな動機がスタンの胸に起こっていた。


「どう?マリット。」

 廃屋で手に入れたデータをPCに取り込み、操作を続けるマリットにマヤが問う。

「うむ、とりあえず開くことはできたが・・・。これは・・・動画データか・・・?暗号化されてるいるな・・・。」

『ワタシ、手伝うよ!接続コード教えて!』

 マリアが申し出て、解読作業に手を貸した。パズルゲームを解くような風情で解読作業に向かうマリアの様子に、マリットは終始、

「ほう・・・、そういう感覚になるようプログラムされているのか?AIなりの五感や嗜好が設定されているということか・・・。」

などと、興味深そうにつぶやいていた。

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