第20話 深夜の来客
幸いにして、追っ手に見つかることなく、夜を迎えた。追っ手が掛かっているかもよく分からないのではあるが、マリアによれば、スタンのネット上のあらゆるアカウントや通信履歴に探索の手が伸びているらしい。マリアはそれらに対し、完璧に対処していると自負していた。
「お前さあ・・・。やり過ぎると、余計自分が『危険な存在』って認知されるぞ?」
改めて、彼女のこうした力を垣間見ると、トレイス達が、より血眼になってスタン達を探すであろうことが予想された。
『あ。やっばい?やばいかも?・・・でもでも、居場所を突き止められちゃうよりはいいじゃーん。』
マリアは弁解するが、スタンの言うとおりだと思う部分もあったようだ。
『・・・・・・ごめんね?』
小さく謝るマリアだった。
「じゃ、行くか。」
『うん、街中の監視カメラに写らないルート出すね。』
夜半を過ぎ、スタンは動き出す。ウェアラブル端末に表示されるマリアの指示に従い、注意深く廃屋への道を進んだ。
廃屋に到着し、マリアがロックを解錠し中に入る。勝手知ったる廃屋の中を進み、スタンはリビングの真ん中で重力に体を任せ大の字で横になった。
公園を逃げ出してから、追われているという緊張感の中でずっと過ごしていたので、疲労は相当なものだった。
「ちょっとぐらい寝てもいいよなあ・・・。つっっかれた・・・。」
『お疲れ様だけど・・・、先のことを考えておかないとジリ貧じゃない?ここ、電気はあるけど、水も食料もないから、スタンは干からびちゃうでしょ。』
マリアの指摘はもっともだったが、疲労困憊のスタンの頭はもう思考することを拒否していた。
「だよなあ・・・。でも・・・、今はとりあえず眠りたい・・・。」
言うが早いか、眠りに落ちるスタンだった。
『スタン。ねえ、スタンってば・・・!』
断続的なウェアラブル端末のバイブレーションと、小声で呼び掛けるマリアによって、スタンは目を覚ました。
「ん・・・。何だ?マリア・・・。」
まだ眠り足りないが、少し体力が回復していることを感じる。時計を見ると午前2時半。1時間半ほどは眠れただろうか。
『この前の、「ウォズ」って言ってた女の人の端末が、ここに近づいてる!』
「・・・マジか?」
マリアの言葉にスタンの頭は一気に覚醒した。あの女性は確かにまた来ることを予告していた。そのタイミングが来たのだろう。そしておそらく、彼女一人ではなく、「他のみんな」という、何人かの仲間を連れている可能性が高い。
『どうする?スタン。ロックを強化して追い返す?』
「いや、むしろ、迎え入れよう。」
『は?』
スタンの提案にマリアが驚きの声を上げる。
「敵の敵は味方だって、言うだろ?」
スタンは不敵に笑って見せた。




