第14話 ウォズの家
スタンは急ぎ廃屋を出て玄関にロックを掛け、高台の公園へ向かった。距離にして400m程。この廃屋を見付けた、あの高台の公園である。
『早く!スタン、もうすぐ来るよ!』
ウェアラブル端末からマリアが状況を知らせる。
「運ばれてるだけのヤツは気楽だよなあ!」
そこそこの量の荷物を背負って走るスタンは、息を荒く公園までの坂を駆け上った。
『シグナルの端末、家の前に着いた!』
ちょうど公園の入り口に着いたところでマリアが言った。
「はぁ、はぁ、はっ・・・オッケ!・・・マリア、玄関のカメラから、モニター・・・できるか?」
『ラジャ!』
ヘトヘトになりながらも、スタンは公園内の家が見下ろせる位置に急いだ。
公園内のベンチにスタンがやっと座り込むと、遠く廃屋の前で、車から降りて、廃屋の玄関へ向かっていく人影が見えた。女性だろうか。
『映像と音声、端末に出すよ!』
マリアが告げると共に、スタンの端末に玄関のインターホンカメラの映像が映し出された。
〈ピンポーン・・・・・・ピンポーン〉
何度かインターホンを押しているのはやはり女性だ。ショートヘアで整った身なり。年齢は40代ぐらいだろうか。深刻そうな表情をしている。インターホンを押しても返答がないことを確かめて、女性はため息をついた。
〈いないの?ウォズ・・・。そうよね。生きて会えるなんて、期待が過ぎたわ・・・。〉
思い詰めた表情のまま女性はつぶやく。
〈シグナルは受け取ったわ・・・。あなたなら何かを残しているはず。今度また、他のみんなと確かめに来る・・・。〉
それだけ言うと、女性は踵を返し玄関から離れる。
肉眼で廃屋の方を確認すると、女性は再び車に乗り込み、走り去ってしまった。
小さくなっていく車を、スタンは見つめていた。
『どんな人だったんだろうね。何か、悲しそうだった・・・。』
「そうだな・・・。」
正直、もっと悪そうな大人の男性が現れるかも、とスタンは何となく考えていた。しかし、今の女性はとてもそういった悪事に手を染めているような感じには見えなかった。
女性の話した内容から分かることは、廃屋の持ち主らしき人物がウォズという名前であり、おそらくは、すでに亡くなっているだろうということ。
自分がお気楽に秘密基地と考えていた廃屋の背後に何らかの物語を感じ、スタンはしばらく公園のベンチから動けなかった。




