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「割に合わないので、辞めます。」 ——元金ランクの天才魔道士、全部計算で解決したかったのに計算外の相棒ができました——  作者: わんだ


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片目の再会——第4階の死闘

【片目の再会——第4階の死闘】


 最初に来たのは、無傷の方だった。

 暗紫色の巨体が、通路の奥から現れた。6本脚。頭部の角。赤黒い目が、あたしたちを見据えている。渓谷の個体と同じサイズ——いや、わずかに大きい。


 ハルグが叫んだ。


「前衛、盾構え! 後衛、支援魔法準備!」


 銀ランクの前衛4人が盾を構えた。深層種が突進してきた。

 盾に激突。4人が同時に押し戻された。足が地面に溝を刻む。1人が吹き飛んだ。盾ごと。


「——硬い! 攻撃が通らない!」


 銀ランクの攻撃が深層種の体表に当たる。剣が弾かれる。矢が跳ね返る。魔法が——浅い傷しか残さない。


 ガイルが動いた。金ランクの剣技。深層種の前脚の関節に、渾身の斬撃。——わずかに切れた。だが、深層種は怯まない。反撃の尾が横薙ぎ。ガイルが跳んで回避した。


「関節は切れる! だが1人じゃ——」


 もう1人の金ランクが、反対側から関節を狙った。同時攻撃。深層種の前脚が1本、折れた。


 深層種が咆哮した。5本脚でもなお、動きが速い。怒りで攻撃が激しくなる。尾と角と残り5本の脚が、全方位に暴れる。

 銀ランクの1人が角に薙がれた。壁に叩きつけられる。もう1人が尾に巻き込まれて転倒。


 あたしは目を狙った。魔力弾を精密に。

 命中。左目に直撃。深層種が悲鳴を上げた。——片目が潰れた。


 だが。

 その瞬間、後方から——2体目が来た。


 片目の個体。渓谷であたしが右目を潰した、あの深層種。

 傷が残っている。右目は潰れたまま。でも——怒りが残っている。あたしを覚えている。


 片目の深層種が、まっすぐあたしに向かってきた。


「——2体同時!」


 ハルグが叫んだ。12人の討伐隊が、2体の深層種に挟まれた。


 あたしは片目の個体と対峙した。渓谷と同じ。だが、今度は逃げる場所がない。ダンジョンの通路は渓谷より狭い。壁面反射で避ける空間が限られている。


 1発。顔面に。——弾かれた。渓谷で学習している。頭を振って魔力弾を弾いた。

 2発、3発。喉元を狙う。——硬い。表皮が前回より厚い。成長しているのか?


 片目の深層種が口を開けた。口腔内に——赤黒い光が溜まっている。

 ブレス。深層種が魔力ブレスを——。


「全員伏せろ!」


 あたしの叫びと同時に、赤黒い光線が通路を焼いた。壁が溶けた。天井が崩れた。

 あたしは地面に伏せて回避した。髪が焦げた。ジャケットの襟に穴が開いた。


 ブレス。渓谷では使わなかった。追い詰められて、新しい攻撃手段を——。


「負傷者3! 退避組、後退しろ!」


 ハルグの声。12人中、戦闘可能なのは——8人。金ランク2人、銀ランク4人、あたし、リィナ。


 2体の深層種が、広間の中央で合流した。並んでいる。片目の個体と無傷だった個体——今は片目の個体が2体。あたしが1体の目を潰した。


 だが、2体とも動きが鈍らない。6本脚のうち1体は1本折れているが、5本でも十分すぎる速度。


「イグリット——無理だ。退くべきだ」


 ガイルが血を拭きながら言った。左腕に浅い裂傷。


「退いたら、こいつらが第2階に上がる。第1階に——市街地に」


「わかってる。だが、このままじゃ全滅だ」


 あたしは計算した。

 8人の戦力。深層種2体。弱点は目と喉元だが、学習して防御している。ブレスがある。通路が狭い。


 計算結果。——勝てない。指輪をつけたままでは。


 指輪を見た。黒い指輪が、灼けるように熱い。

 外せば——勝てる。たぶん。

 でも——暴走するかもしれない。8歳の事故が。この狭いダンジョンの中で。味方が8人いる。暴走したら——。


 2体の深層種が、同時に動いた。挟撃。

 あたしは天井に向かって跳んだ。壁を蹴って、2体の頭上を通過した。着地。


 指輪が——痛い。灼けるのではなく、痛い。指輪自体が悲鳴を上げている。

 あたしの魔力が、指輪の制限を圧迫している。感情が——魔力を押し上げている。恐怖と怒りと——。


 外さなければ。

 でも——外したら——。


 2体目の深層種がブレスの構えをとった。口腔が光る。

 金ランクの2人が剣を構える。銀ランクが盾を出す。


 間に合わない。このブレスの範囲に、全員がいる。


 その時——ダンジョンの入口側から、足音が聞こえた。

 走ってくる。1人。軽い足音。剣の鞘が揺れる音。


 あたしの探知が捉えた。


 ——シオン。


「来るなって——言ったのに——」


 シオンが、第4階の広間に飛び込んできた。


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