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「割に合わないので、辞めます。」 ——元金ランクの天才魔道士、全部計算で解決したかったのに計算外の相棒ができました——  作者: わんだ


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討伐隊と、12人の配置図

【討伐隊と、12人の配置図】


 討伐隊は12人で編成された。

 銀ランク6名。銅ランク4名。金ランク2名——アウレクスの所属、ガイルとハルグ。そしてあたし。ランク外のリィナが偵察担当で加わり、計13名。


 第2階で態勢を整えた。灰角獣2体と深層種2体の情報は共有済みだ。問題は——深層種の行動パターンが不明なこと。


 グレイフが隊を率いる形だったが、実質的な戦術は——あたしに振られた。


「イグリット。配置を頼めるか。おまえが一番、あの深層種を知っている」


 断る理由がない。

 あたしは第3階の地図を広げた。13人の顔を見渡した。


「まず、全員の得意距離と攻撃手段を教えてください。30秒で。1人ずつ」


 銀ランクの先頭が答えた。剣士。近距離。突進型。

 2人目。弓。中距離。精密射撃が得意。

 3人目。魔道士。中距離。火属性。範囲攻撃寄り。

 順番に聞いていく。全員の情報を頭に入れた。30秒では足りなかったが、45秒で終わった。


 計算した。

 深層種の体長5メートル。6本脚。突進速度は銀ランクの反応限界を超える。正面からの白兵戦は自殺行為。

 弱点は目と喉元。ただし、渓谷でのデータでは——正面攻撃に対する学習速度が高い。同じ攻撃パターンは2回で見切られる。


「配置を出します。覚えてください。1回しか言いません」


 あたしは地図の上に指で線を引いた。


「3班に分ける。A班——ガイルとハルグを中心に前衛4名。深層種を正面で受ける。ただし10秒ごとに左右に散開して、正面を空ける。空いた正面にB班——弓手2名と魔道士1名が精密射撃。目と喉元を狙う。C班——残りの4名は壁際に配置。深層種が逃走を試みた場合の封鎖線」


「10秒ごとに散開——」


「10秒以上同じ位置にいると、深層種が攻撃パターンを学習します。灰角獣でも3回で見切ってきた。深層種はそれ以上に速い。だから、こちらも10秒ごとに配置を変える」


 ガイルが口笛を吹いた。


「10秒ローテーション。——やれるか?」


「やってもらいます。わたしが合図を出します。『左』で左に散開。『右』で右。『落ちろ』で全員伏せ。合図が聞こえたら考えずに動いてください」


「おまえの声が聞こえなかったら?」


「リィナが中継します。リィナは後方の高台から全体を見る。わたしの合図を拡声する」


「了解。——アタシは拡声器か」


「最も重要な拡声器」


 リィナが肩をすくめたが、否定はしなかった。


 あたしの役割。B班の中核。精密射撃。

 A班が作る10秒の窓に、目か喉元を正確に撃ち抜く。

 ——指輪つきの出力で、深層種の急所を貫通できるか。先日の3日間の連戦で身体が覚えた天井。あの天井を、精密さで超える。出力が足りないなら、角度で補う。壁面反射。多段反射。使える手は全部使う。


「質問は」


 誰も手を上げなかった。


「では——降下します」


 12人が動いた。リィナが先行して第3階に消えた。

 あたしはA班の後ろについた。指先に魔力を灯す。赤い光。

 灰角獣は討伐隊が掃討済み。第3階は一応安全——だが、第4階の先に深層種がいる。


 第4階への階段を降りた。空気が変わった。重い。魔力の密度が濃い。

 指輪が温度を持ち始めた。


 リィナのハンドサインが来た。「前方200メートル。反応あり。大型2体」


 深層種。2体。


「配置。A班——前衛。B班——後方30メートル。C班——左右の壁際。全員、わたしの合図を待ってください」


 12人が位置についた。

 あたしは壁面の角度を計算した。この通路の幅は4メートル。天井高3メートル。反射角を使うなら——左壁から右壁への2段反射で、約35度の仰角で喉元に到達する。


 暗がりの奥で、赤黒い光が2つ、動いた。

 深層種が——来る。


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