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「割に合わないので、辞めます。」 ——元金ランクの天才魔道士、全部計算で解決したかったのに計算外の相棒ができました——  作者: わんだ
割に合わない

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7回目の街道と、3人の足音

【7回目の街道と、3人の足音】


 回復して2日後。7回目の護衛依頼。


「今回はアタシも行く」


 リィナが東門の前に立っていた。軽装。ショートソード2本。偵察用の小道具一式。


「街道の偵察もしたい。渓谷の深層種の情報をこの目で確認したい」


 口実だ。あたしが3日間の消耗戦で削れていることを知っている。

 でも、指摘しない。リィナにはリィナの建前がある。


 シオンがにこにこしている。


「3人で歩くの、初めてですね」


 3人の街道行。

 リィナが先行偵察。あたしが中衛で火力。シオンが荷車を引きながら殿。

 連携は——初めてとは思えないほど噛み合った。リィナのハンドサインをあたしが読み、あたしの指示でシオンが動く。3人の距離感が自然に決まる。


 第1区間。角猪10頭。過去最多。

 リィナが2頭の位置を事前に察知。あたしが6頭を処理。シオンが1頭を単独撃破。残り1頭は逃走。


 シオンの単独撃破を、リィナが初めて見た。


「——ちょっと待て。あの兄ちゃん、2ヶ月前より全然動き違うぞ」


 あたしは答えなかった。でも、内心で同意している。シオンの成長は——説明しきれない。2ヶ月で鉄ランクの少年が、角猪を単独で倒せるようになるのは——通常ありえない。


 昼食。渓谷の手前で荷車を止めた。

 シオンが弁当箱を3つ出した。あたしの分、リィナの分、自分の分。

 鶏の唐揚げ。甘酢漬けの野菜。昆布の佃煮。おにぎり2つ。


 リィナが食べた。


「……なんだこれ。うまいぞ」


「ありがとうございます」


 リィナが唐揚げを3つ目に手を伸ばしながら、あたしを見た。


「お前、毎回これ食ってんの?」


「契約に含まれてる」


「契約ねえ」


 リィナの「契約ねえ」の声に、シオンが一瞬だけあたしの方を見た。

 ——あの「嘘ですね」の目。

 あたしは黙っておにぎりを齧った。味噌味。中に鮭。


 渓谷に入った。空気が変わった。

 岩蜥蜴が全滅している。渓谷全域が空白区画化。前回灰角獣を倒した場所も、何も戻っていない。

 リィナの表情が硬くなった。ダンジョンで見たのと同じ光景が、地上にも。


「——イグリット。これ、前回の灰角獣のテリトリーか」


「そう。ここで倒した。でも——」


 探知を飛ばした。

 渓谷の奥。500メートル先。


 いる。

 灰角獣ではない。もっと大きい。もっと重い。魔力の密度が——桁違い。


「リィナ。シオン。止まって」


 あたしの声が硬くなった。


「この先に——何かいる。灰角獣じゃない。もっと上の存在」


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