日記9
安眠と代償
私は過去の「私を責める記憶たち」と「強盗」と「裁判」の件で、参っていた。
会社は休職扱いにしてもらってから、夜も眠れず、父と母の、金、金、金と、ふざけた態度にも苦しんでいた。
私は父の猟銃を破壊したのを思い出した。
「絶対的な武器があれば、私は眠れるのではないか?」
そう思って、銃砲店に行き、必要な書類を揃えて試験を受けた。
簡単な試験だった。
試験から猟銃を取得するまで半年かかったが、私は猟銃持ちになった。
銃砲店で大きな剥ぎ取りナイフを買い、寝床に置いて、抜き身の刀身を眺めていると、不思議と気が落ち着き、眠る事が出来た。
私が猟銃持ちになったことで、父も母も私に一切何もしなくなった。
父は、かつて自分がやったように、私に銃口を向けられて殺される、とでも思ったのだろう。
本当は両親とも射殺して、自分の頭をぶち抜いても良かったのだが、実際に銃に弾丸を込めて銃口を口に咥えてみた事もあったが、私は生きる悦びを知ってしまったために、自殺が出来なかった。
殺戮の楽しさを知ってしまった。
白銀の狩場で獲物を殺し、はらわたを引きずり出し、首を落とし、返り血を浴びる。
雪がザクロの花のような、鮮やかな色になるのが美しかった。
ピンクの臓物が大蛇のようにうねりながら飛び出て来るのが、楽しくて仕方なかった。
私は穢れて行った。
この頃だろうか、私は獲物から恨まれるようになっていて、それを避ける為にタバコを吸うようになっていた。
「煙は蛇を遠ざける。蛇は邪とも読める。蛇を、邪を遠ざけるには、タバコが一番だ。」
そう猟友会の会合で、老いたハンターに教えて貰ったのだ。
タバコの煙で穢れた私に寄って来る、変なものは近寄れなかった。
1年が経って、休職から復帰したら、部長は他の支部の社長になって、部長は会社から姿を消していて、ポンコツ課長が部長となっていて、私の出来る仕事は無くなっていた。
更に追い討ちを掛けたのは、コンビニで働いていた時の彼女が、私が大手の企業に就職が決まって働いている事を知って、会社の事務所に「大介を出せ!」と何度も電話してきた事だった。
何でも私と別れてから、顔だけのボンクラと付き合って、デキ婚したら、DVのクソ野郎だったらしく、助けてくれと何度も電話してきたのだった。
私は会社で電話を受けて、その夜、ファミレスで会って話し合う約束をした。
私は壮絶に、後腐れなく振ってやった。
「お前の事など知るか。それはお前の都合であって俺の都合じゃねえよ。勘違いしてんじゃねえぞ性格ブス!」
彼女が涙目になったところへ、更に追い込みを掛けた。
「結婚してガキも居るって言ったな?ガキ捨てて来たら考えてやるよ。じゃなきゃお前とはお断りだ。何で自分のガキじゃねえガキ育てなきゃならんのだ。ナメてんのか。ガイジかよ。」
壮絶に辛辣な、普通の人ならば、1ヶ(か)月以上は引きずるような発言で彼女を黙らせた。
結果、彼女は引いた。電話も一切してこなくなった。
だがその事で、彼女が執拗に会社に電話を掛けて来たことで、会社内で根も葉もない噂が立ち、完全に私は職場で居場所を失って、退職することになった。
女とは何と自分勝手で、恐ろしい生き物なのだろうかと、私は今でも思うのだ。
2017.7.29 土曜日 平成29年




