↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20XXの人間失格者  作者: 来栖総一郎
62/78

日記8

裁判(さいばん)の顛末(てんまつ)

「これ以上(いじょう)の上告(じょうこく)は難(むずか)しい。」

弁護士(べんごし)先生(せんせい)が言(い)った。


「そんな…」

私(わたし)は絶望(ぜつぼう)していた。


「これ以上(いじょう)突(つ)っ込(こ)むと、君(きみ)の両親(りょうしん)が加害者(かがいしゃ)を恐喝(きょうかつ)していた事(こと)が出(で)てきて、こちらが不利(ふり)になる。残念(ざんねん)だが、示談(じだん)にしよう。」

私(わたし)の両親(りょうしん)が加害者(かがいしゃ)に対(たい)して、脅迫(きょうはく)まがいの恐喝(きょうかつ)で、お金(かね)を受(う)け取(と)っていた事(こと)が分(わ)かり、これ以上(いじょう)の民事(みんじ)裁判(さいばん)の上告(じょうこく)は、こちらが不利(ふり)になるために、「50万円(まんえん)で手打(てう)ちにしよう」という話(はなし)になった。


「せめて君(きみ)の両親(りょうしん)が、何(なに)もしていなかったら話(はなし)は変(か)わったかもしれない。残念(ざんねん)だ。」

弁護士(べんごし)先生(せんせい)は本当(ほんとう)に残念(ざんねん)そうだった。


「報酬(ほうしゅう)はこの場(ば)で受(う)け取(と)っておくよ。気(き)を落(お)とさないように。では。」

先生(せんせい)は5万円(まんえん)を受(う)け取(と)り、その場(ば)で領収書(りょうしゅうしょ)を切(き)って、裁判所(さいばんしょ)を去(さ)って行(い)った。


「私(わたし)の裁判(さいばん)、私(わたし)の復讐(ふくしゅう)、私(わたし)の…」

色(いろいろ)々な考(かんが)えが頭(あたま)を巡(めぐ)って、裁判所(さいばんしょ)の廊下(ろうか)で、私(わたし)は呆(ほう)けていた。


私(わたし)は怒(いか)り心頭(しんとう)で自宅(じたく)に戻(もど)り、両親(りょうしん)に「お前(まえ)ら何(なん)て事(こと)をしてくれていたんだ!全(すべ)て台無(だいな)しになった!」と責(せ)め立(た)てた。


「子供(こども)のケンカの始末(しまつ)をつけるのは、親(おや)として当然(とうぜん)の事(こと)だ!何(なに)が悪(わる)い!」

父(ちち)が悪(わる)びれもせずふんぞり返(かえ)り、母(はは)は目(め)を合(あ)わせなかった。


「私(わたし)は大人(おとな)だ!私(わたし)のケンカを奪(うば)いやがって!」

ぶっ殺(ころ)してやろうかと、私(わたし)は殺気(さっき)立(だ)った。


「お前(まえ)は大人(おとな)になったが、俺(おれ)たちの子供(こども)だ。子供(こども)が親(おや)に楯(たて)突(つ)くな。黙(だま)れ!」

父(ちち)に怒号(どごう)を浴(あ)びせられた。

それでも私は食い下がった。


「相手(あいて)から脅(おど)し取(と)ったカネはどうした!」

私(わたし)は怒(いか)りと悔(くや)しさが入(い)り混(ま)じった声(こえ)で言(い)い返(かえ)した。


「黙(だま)れと言(い)っているだろう!そうだな、お前(まえ)を育(そだ)ててやったカネを貰(もら)っていない!これでいいだろう!話(はなし)は終(お)わりだ!部屋(へや)に戻(もど)れ!」

屁理屈(へりくつ)だった。

理不尽(りふじん)だった。


部屋(へや)に戻(もど)り呆けていると日(ひ)が暮(くれ)れた。

夜空(よぞら)を見上(みあ)げていると、このクソみたいな両親(りょうしん)が、私(わたし)の親(おや)なのだと思(おも)い返(かえ)すと、本当(ほんとう)に殺(ころ)して、私(わたし)も死(し)のうかと思(おも)ったのを良(よ)く覚(おぼ)えている。


月明(つきあ)かりの夜(よる)に、ひぐらしが鳴(な)いていたのを覚(おぼ)えている。

2017.7.29 土曜日 平成29年

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。