満員に近い傍聴席。
こちらを見ている傍聴席の人たちの視線が痛い。
裁判長が何かを読み上げている。
私の真横10mぐらいに丸刈りにされて、手錠を掛けられ、腰縄をされている、青い服を着た、腕に根性焼きが多数入った人物が2人座って居た。
両隣には警察官だろうか、制服のゴツイ男性が2人を挟むように座っている。
学級裁判などではない。
本物の刑事裁判だった。
加害者側の弁護が始まっていた。
加害者の母親がヒステリックに裁判長に訴えていた。
「私の子は普段から大人しく、こんな大それたマネをするような子じゃないんです!」
「一度だって、学校でケンカなんてしたこともないし、マジメで成績だって優秀だったんです!」
「悪い事なんて一切したこともない良い子なんです!」
母親の涙声の訴えが終わり、加害者側の弁護士さんが話し始めた。
「このように、普段から真面目に生きてきた人間ですので、情状酌量を求めます。」
こんな感じだっただろうか。
私の味方は検事さんだった。
「こちらは被告の、加害者の素行調査を行いました。近所、学校、あらゆる人間関係を調査しました。」
「調査報告によると、被告らは暴行、恐喝、薬物乱用、飲酒、喫煙などで高校時代に5回の停学の処分を受けて退学になっています。」
「更に、人間関係の調査を行った所、被告の母親による金銭の受け渡しによって、被害者が被害を取り下げるといった事案が、4件程見つかりました。」
「学校の関係者にも調査したところ「いつかやると思っていた」などという発言も多数見られ、情状酌量の余地は無いと思います。」
検事さんが向こうの嘘をばっさりと、資料と共に裁判長に提出して切り落とした。
裁判長が証人出廷として、私を呼び出した。
「前へどうぞ。」
裁判長の前、良くテレビで見たような裁判所の証人席に私は立っていた。
「随分傷の治りが早いのですね。」
裁判長が質問してきた。
「これはもう私の顔ではありません。鏡を見ると別人になっていました。」
発言の通りだった。
私の顔は複雑骨折により、元の顔ではなくなっていた。
右顎の手術で神経が抜かれ、右側の口の筋肉が上手く動かせなくなっていた。
「そうですか。」
裁判長が何かに字を書き込んでいた。
「次に、被告人、つまり、あなたからお金を奪い、卑劣な手段によって傷つけられた事に対して、彼らの罪を重くしたいと思いますか?それとも軽くしたいと思いますか?」
「一番重たい罰を、社会の悪に罰を示さなければ、同じような事件が頻発すると思います。」
私はさらりと答えた。
裁判長が再び聞いてきた。
「では重い罰を望みますか?」
当たり前だ。
絶対に許さない。
「はい。私は彼らに、一番重い罰を望みます!」
私は大声で叫んだ。
傍聴席のざわめきと、被告人席の加害者の母親の泣き叫ぶ声が聞こえた。
裁判長の声が続く。
「分かりました。下がって着席して良いですよ。お疲れ様でした。」
私はそれから記憶がない。
どうやら発言した直後、発作を起こして倒れたそうだ。
後日、運び込まれた病院で「パニック発作」と言われたのを覚えている。
検事さんからの求刑は「強盗傷害による求刑5年」だったと後から誰かから聞いた。