日記4
強盗 1/2
私は仕事のストレスの発散の為に、新車に乗り換えて車のパーツにお金を掛けて、深夜のドライブを楽しむようになっていた。
私は週末に仕事が空いた日に、同じ車を走らせるのが趣味の仲間に電話をかけていた。
そんなある週末、私が実家のリビングで、携帯電話で仲間を誘っていると父が激怒した。
「お前1人で行け!他人を巻き込むな!」
父が無責任な怒号を私に言い放った。
「うるせえんだよ!わかった今日は1人で行くわぃ!」
私はいつもは複数の人数で車で走りに行っていたが、父の言葉に激怒して、その日は1人で峠に車で走りに行った。
ガソリンスタンドでいつものようにハイオク満タンを頼み、峠道に続く国道を安全運転で車を走らせた。
初夏の深夜の峠の駐車場、車の窓を開けて涼しい車内。
私は父の態度と言葉に苛立ちつつも、ぼんやりとした明かりを放つ街灯を眺めていると、いつの間にか眠っていた。
「おい起きろオラア!」
自慢の車が何かの衝撃で揺れて目が覚めた。
「何をしやがるんだテメェ!」
そう叫んだ私は後悔した。
金髪のゴリラのような、私の車を蹴った男が、怒髪天の表情で車の運転席の私を覗き込んで居た。
「俺の地球を汚しやがって!カネを出せ!」
私は胸倉を掴まれ、何度も私の顔面を金髪ゴリラの拳が捉える。
20回までは覚えている。
それ以上は正確な打撃回数を覚えていない。
子供の時に父に殴られた時と変わらない、体の奥から鉄を舐めたような味がした。
いきなり殴り掛かられるとは思っていなかった。
反撃することも出来ず、私は体に全く力が入らなくなっていた。
「つまんねえな。こいつの頭を車で轢き潰してやろうぜ!」
私は金髪ゴリラの仲間に、車から引きずり出され、その仲間たちは私の財布から、千円札1枚だけの金を奪い、「チッ、コイツ千円しか持ってねえよ」などと、ゲラゲラと笑っていた。
変な連中に絡まれた。
父を恨んだ。
1人で来なければこんな目に、こんな糞共に会わなかっただろうと。
だがこのままだったら、証拠隠滅のために確実にこいつらは私を殺すだろうと、私はアスファルトの上で、糸の切れた操り人形のような不自然な体勢で、糞共に蹴り転がされながら、思考を巡らせていた。
考えろ、考えろ、考えろ。
頭は朦朧としつつも、私は生き残るために。
こいつらは何を私に求めているのかを。
そんな事を考えて、私は体が動かなくても出来る事を思いついた。
「頭が!ああ!割れるようだ!ヴォェ!」
私はアスファルトに、ビチャビチャと血の混じった嘔吐物を出した。
私は気持ち悪くなくても、戻すことが出来るという特技を小学生の時に得ていた。
それを糞共に披露したのだ。
「チッ、しゃあねえなズラかるか。ほっといても死ぬだろコイツ。」
強盗たち6人は、ワゴン車に乗り込み去っていった。
痛む顔面、口からの血が止まらない。
車は私の財布から金を抜き、私をさんざん蹴っていたの2人の強盗犯に、トランポリンのように乗られて跳ねられたり、体当たりや蹴られたりとボコボコにされていたが、車のタイヤをパンクさせられなかったのは幸いだった。
私はよろよろと立ち上がり、車の運転席に座り、エンジンキーを捻った。
エンジンが動いた。
私は朦朧とする意識の中、峠道をゆっくりと降りて、その先にある自衛隊駐屯地の衛門所に到着し、助けを求めた。
「強盗に会った。警察を呼んでください。」
対応に混乱する自衛官たち。
「そのまま待て。」
「いや、こちらへどうぞ。」
数分間の自衛官たちの混乱の後、私は衛門の受付へ通され、パイプ椅子を提供してもらって警察の到着を待った。
「警察は呼びました。それまでお茶をどうぞ。」
「いえ、結構です。」
口の中がズタズタで飲み物が飲める気がしなかった。
頭が朦朧とした。
吐き気がした。
血の味がする。
自衛隊時代の講習で、骨が折れた時は強い吐き気がする事を知っていた。
かなりの時間が経った。
事件発生00:50から自衛隊に到着したのが01:30、通報まで約30分、通報から警察がまだ来ない。
05:30警察官が到着した。
事件発生から5時間経過して到着したのは、村の駐在だった。
「今ならまだ間に合うんだよ?」
駐在が悪びれもせず、私に言い放った。
「良く居るんだよね。自爆事故起こして強盗に合ったとか言う奴。」
私は駐在の態度と言動にイライラし始めた。
「今なら無かった事にしてやるから言っちゃいなよ?悪い事は言わないからさ。」
駐在の態度と言葉に、私はついにキレた。
「ふざけるな!通報から何時間経ったと思っている!犯人捕まらなかったらお前のせいだぞ!とっとと捕まえろ!クソ警官!」
私は血を振りまきながら立ち上がり怒号を上げた。
駐在は私の怒号と態度に身体を硬直させ顔色を変えた。
「チッ!どうなっても知らんぞ!」
駐在の警察無線から交通機動隊へ通達されて本格的に警察が動き始めた。
私はそれを見て気が抜けて崩れ落ちた。
2017.7.29 土曜日 平成29年




