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20XXの人間失格者  作者: 来栖総一郎
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日記2

コンビニエンスストア

いくつかの募集(ぼしゅう)に応募(おうぼ)したが元(もと)自衛官(じえいかん)を雇(やと)ってくれる所(ところ)は無(な)かった。

世(よ)の中(なか)には自衛隊(じえいたい)という組織(そしき)に対(たい)して否定的(ひていてき)な考(かんが)えを持(も)つ人(ひと)たちが多(おお)く、それは企業(きぎょう)の姿勢(しせい)にも反映(はんえい)されていて、元(もと)自衛官(じえいかん)という肩書(かたが)きは、まるで犯罪者(はんざいしゃ)のような扱(あつか)いだった。


私(わたし)は世界(せかい)の半分(はんぶん)以上(いじょう)が敵(てき)になったように感(かん)じた。

仕方(しかた)ないのかもしれない。

自衛官(じえいかん)だった私(わたし)は、生(なま)の自衛官(じえいかん)を見(み)てきた。

あの人(ひと)たちは傲慢(ごうまん)で、言(い)われた以外(いがい)の事(こと)を絶対(ぜったい)にやらない人(ひと)たちなのだから。

彼(かれ)らと同(おな)じと思(おも)われて、面接(めんせつ)すら断(ことわ)られるのは仕方(しかた)がない事(こと)なのだと思(おも)った。


自衛官(じえいたい)の頃(ころ)から酒(さけ)を飲(の)んだくれてた店(みせ)で、コンビニのバイトの口利(くちき)きを、店長(てんちょう)にしてもらった。


コンビニのバイトは大変(たいへん)だった。

頭(あたま)のおかしい客(きゃく)ばかり、クレーマーだらけ、商品(しょうひん)を窃盗(せっとう)する少年(しょうねん)少女(しょうじょ)、客(きゃく)というチンパンジーの群(む)ればかりで滅(め)入(い)っていた。


だが金(かね)は正義(せいぎ)だとも思(おも)っていた。


金(かね)さえ出(だ)せば何(なに)をしても、何(なに)を言(い)っても構(かま)わない。

それがこの世界(せかい)のルールだと、私(わたし)はしっかりと覚(おぼ)えた。

そして接客(せっきゃく)マニュアルという物(もの)が店(みせ)にはあって、それを私(わたし)は貪(むさぼ)るように読(よ)んで、そして上(うわ)っ面(つら)の良(よ)い人(えん)を演(えん)じる、目(め)に見(み)えない仮面(かめん)を私(わたし)は手(て)に入(い)れた。


オーナーからの信頼(しんらい)を勝(か)ち取(と)り、私(わたし)はアルバイトの面接(めんせつ)まで任(まか)されるようになっていた。


アルバイトの女性(じょせい)が入(はい)り、彼女(かのじょ)も私(わたし)を面接(めんせつ)の時(とき)には気(き)に入(い)っていたらしく、私(わたし)には「自慢(じまん)の美人(びじん)の彼女(かのじょ)」が出来(でき)た。


彼女(かのじょ)は1人(ひとり)暮(ぐ)らしで、私(わたし)は彼女(かのじょ)の借(か)りている賃貸(ちんたい)の家(いえ)へ転(ころ)がり込(こ)んだ。

それからしばらく同棲(どうせい)して、彼女(かのじょ)の父親(ちちおや)に挨拶(あいさつ)することになった。


彼女(かのじょ)の父親(ちちおや)は「仕事(しごと)を紹介(しょうかい)してやる」という高圧的(こうあつてき)な条件(じょうけん)で、結婚(けっこん)を認(みと)めてやるという話(はなし)になった。


私(わたし)はコンビニのオーナーが「辞(や)められたら困(こま)る」と食(く)い下(さ)がるコンビニを辞(や)めて、彼女(かのじょ)の父(ちち)の口利(くちき)きで運送(うんそう)会社(がいしゃ)に入社(にゅうしゃ)した。


仕事(しごと)は3日(みっか)で首(くび)になった。

身(み)に余(あま)る重(おも)い荷物(にもつ)を持(も)ち上(あ)げようとして、ぎっくり腰(こし)を起(お)こした。

次(つぎ)の日(ひ)に腰(こし)が痛(いた)む身体(からだ)を引(ひ)きずって出社(しゅっしゃ)すると、店長(てんちょう)に呼(よ)ばれた。

「残念(ざんねん)だが、腰(こし)をやってしまった者(もの)を使(つか)う訳(わけ)にはいかないんだ。分(わ)かってくれ。お大事(だいじ)に。」

私(わたし)は紹介(しょうかい)された仕事(しごと)を辞(や)めざるを得(え)なかった。


「何(なん)で怪我(けが)なんてしたの!信(しん)じられない!結婚(けっこん)したくないの!?」

彼女(かのじょ)は発狂(はっきょう)し、ヒステリーを起(お)こした。


「信(しん)じられないのはこっちのセリフだ。何(なん)だよそれ。心配(しんぱい)とか無(な)いのか…」

呆(あき)れて私(わたし)は彼女(かのじょ)を捨(す)てた。



傷心(しょうしん)しつつも実家(じっか)に戻(もど)ると私(わたし)の居場所(いばしょ)の部屋(へや)は弟(おとうと)に占領(せんりょう)されていて存在(そんざい)しなかった。

私(わたし)は実家(じっか)の仏間(ぶつま)で眠(ねむ)る事(こと)になった。


月間(げっかん)5000円(えん)の食費(しょくひ)だけ、両親(りょうしん)には金(かね)をくれてやった。


「600万円(まんえん)も私(わたし)から騙(だま)し取(と)ったのだから良(よ)いだろう」と言(い)い放(はな)ったら、両親(りょうしん)は何(なに)も言(い)わなかった。

2017.7.29 土曜日 平成29年


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