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20XXの人間失格者  作者: 来栖総一郎
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焼けた手帳5-3

カミングアウト

私(わたし)は精神(せいしん)に限界(げんかい)が来(き)て、ある日(ひ)、班長(はんちょう)に「仕事(しごと)を続(つづ)けて行(い)ける気(き)がしない」と相談(そうだん)すると、班長(はんちょう)はすぐに私(わたし)に退職(たいしょく)届(とど)けを書(か)けと、除隊(じょたい)を勧(すす)めてきた。


「おまえが居(い)なくなっても代(か)わりの者(もの)がいる。別(べつ)にお前(まえ)じゃなくてもいいんだ。だから辞(や)めろ。お前(まえ)はこの仕事(しごと)に向(む)いていない。」

班長(はんちょう)だけではなく、小隊長(しょうたいちょう)、隊付(たいづき)、中隊長(ちゅうたいちょう)にまで同(おな)じような事(こと)を言(い)われた。


次(つぎ)の年(とし)の4月(がつ)から仙台(せんだい)に行(い)く事(こと)が決(き)まっていた。


それを蹴(け)って今(いま)すぐ辞(や)めろと圧(あつ)をかけられた。

私(わたし)はそれを受(う)け入(い)れた。

私(わたし)は心(こころ)が弱(よわ)っていた。


「自衛隊(じえいたい)を辞(や)める事(こと)になったら死(し)ね。」

自衛隊(じえいたい)入隊前(にゅうたいまえ)、実家(じっか)から出(で)る時(とき)に父(ちち)が私(わたし)に強(つよ)く言(い)った言葉(ことば)だ。

辞(や)めたら死(し)ぬのだなと、父(ちち)の言葉(ことば)が頭(あたま)の中(なか)でグルグル回(まわ)っていた。


退職(たいしょく)届(とど)けを言(い)われるがままに書(か)いて提出(ていしゅつ)すると「退職(たいしょく)動機(どうき)がおかしい。これでは我(われわれ)々に責任(せきにん)が来(く)る。書(か)き直(なお)せ。」と中隊長(ちゅうたいちょう)、小隊長(しょうたいちょう)、隊付(たいづき)、班長(はんちょう)に各(かく)それぞれに強(つよ)くダメ出(だ)しをされて、小(ちい)さな退職(たいしょく)理由(りゆう)欄(らん)に何度(なんど)も何度(なんど)も鉛筆(えんぴつ)で、書(かき)き直(なお)させられた。


小(ちい)さな退職(たいしょく)理由(りゆう)欄(らん)が小(ちい)さな文字(もじ)で400文字(もじ)ぐらいだろうか。

それだけ私(わたし)は私(わたし)を責(せ)める言葉(ことば)を書(か)いた。

心(こころ)にも無(な)い事(こと)を書(かい)いて欄(らん)を文字(もじ)で埋(う)めた。

中隊(ちゅうたい)付(づき)はその書類(しょるい)を満足(まんぞく)そうな顔(かお)をして、禿(は)げた頭(あたま)を撫(な)でながら言(い)った。

「これでいい。これで責任(せきにん)は全部(ぜんぶ)お前(まえ)にある。外(そと)に出(で)てもがんばれよ。まあ、お前(まえ)みたいな奴(やつ)が外(そと)で生(い)き残(のこ)れるとは思(おも)えないがな。」


悪意(あくい)の塊(かたまり)のような顔(かお)をしていたのが忘(わす)れられない。


居室(きょしつ)のベッドに腰(こし)掛(か)けてでぼんやりしていると、誰(だれ)かが強(つよ)い勢(いきお)いで居室(きょしつ)のドアを開(あ)けて私(わたし)に詰(つ)め寄(よ)って来(き)た。


「お前(まえ)が辞(や)めたら次(つぎ)は俺(おれ)に目(め)が向(む)くじゃねえか!ふざけるな!今(いま)までお前(まえ)に全部(ぜんぶ)なすりつけていたものが全部(ぜんぶ)俺(おれ)に来(く)る!クソが!死(し)ね!」

何(なに)かと世話(せわ)を焼(や)いてくれていた隣(となり)の居室(きょしつ)の同期(どうき)に言(い)われ、ツバを掛(か)けられた。


同期(どうき)の彼(かれ)は、私(わたし)をハメていたのをカミングアウトして床(ゆか)にもツバを吐(は)いた。


こいつが私(わたし)の人脈(じんみゃく)という財産(ざいさん)を破壊(はかい)していたのかと思(おも)ったが、「これから自分(じぶん)の身(み)が破滅(はめつ)するのだったら良(い)い気味(きみ)だ」と、別(べつ)に復讐(ふくしゅう)しようなどとは思(おも)わなかった。


こうして私(わたし)は自衛隊(じえいたい)を去(さ)る事(こと)になった。


「この仕事(しごと)を辞(や)める事(こと)になったら死(し)ね。」


父(ちち)の言葉(ことば)が頭(あたま)をグルグルと回(まわ)っていた。

帰(かえ)ったら、どう死(し)のうかをずっと考(かんが)えていた

2017.7.29 土曜日 平成29年

自衛隊編終了。

手帳編終了。

日記シリーズへ。

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