手帳3-3
悪への制裁 1/2
無い。
私のカバンの中にあった文房具の、まだパッケージを開けていない消しゴムが無くなっていた。
私の隣の席で、ぎゃあぎゃあと騒ぐ男子生徒たちの中、私の消しゴムがあった。
「消しゴム落とし」というゲームに興じている男子生徒の消しゴムの中に、パッケージされたままの、私の消しゴムがあったのだ。
「おい、その消しゴムは私のではないのか?」
そう彼らに尋ねると、1人の生意気な男子生徒が答えた。
「ああ、そうだよ。お前のカバンから借りた。返すからいいだろう。」
「続きをやろうぜ」と、そいつは私に背を向けてゲームの続きをやろうと周りに言った。
「ふざけるな!この泥棒野郎!返せ!」
私はゲーム盤となっている机から私の消しゴムを奪い取った。
泥棒生徒が舌打ちをしながら私に文句を言い始めた。
「ちょっとぐらいイイじゃねえかクソが!」
彼は椅子を強く蹴り飛ばし、それを私に当てた。
頭の中が真っ白になった。
「うわあ!やめてくれ!」
彼の悲鳴が聞こえた。
私は椅子を、彼が蹴り飛ばし私に当てた椅子手に持ち、振りかぶり、そして彼に振り下ろしたのだ。
「ぐっ…」
彼は頭を押さえて苦悶の表情を浮かべて床にうなだれた。
ぽたぽたと床に血が落ちる。
教室は女子生徒の悲鳴、男子生徒の叫びで恐慌状態となった。
彼はゲームに興じていた男子生徒2人と一緒に保健室へ行った。
私はそのまま教室に残り、次の英語の授業を受けた。
空気が何か、妙な雰囲気だったのを覚えている。
”3年A組出席番号XX番、大至急職員室に来い”
英語の授業が終わり、すぐさまの校内放送だった。
私を呼ぶ校内放送だった。
私は無視した。
私は正義を実行した。
呼び出される筋合いは無い。
用があるならそっちから来い、そう思って無視していると、担任が教室に入ってきた。
鬼のような形相で私の頭を殴りつけた。
父からの暴力と同じ威力だった。
「このクソッタレのゴミが!呼ばれたなら来い!」
私の腕を強引に掴むと、引きずるように教室から出されて、職員室に連行された。
「お前の主張など聞きたくもない。だが責任は取ってもらうからな。」
机を担任教員が叩いて威嚇しながら言い放った。
「今日あったことをちゃんと親に言え。絶対に隠すなよ。」
ギロギロと私と書類を見ながら担任は何かをしていた。
「わかったらさっさと出て行け。」
私は職員室から追い出された。
私を殴るため、文句を言うためだけに呼んだのかと思うと、学校という施設は何と言うか、言葉が通じる動物園のように感じた。
動物園の動物はアイドルで、虐待されないだけマシのような気もした。
私は学校帰りに、泥棒生徒とゲームに興じていた生徒の1人に呼び止められた。
「なあ、ちょっといいか?」
私は無言で彼の顔を見た。
泥棒を肯定するこいつもまた、泥棒と同じなのだ。
そう思うと私はイライラしていた。
「あいつさ、片親なんだよ。だからさ、」
私は言葉を遮った。
「片親だから何だ?泥棒しても許されるのか?泥棒を擁護するお前も私の中では同じだぞ。」
思っている事を伝えた。
更に続ける。
「お前も頭をカチ割られたいのか?」
そう言い放つと彼は固まった。
何も言えず顔を下に向けて言葉が出ないようだった。
「私に話しかけるな。クソが。」
彼にそう言い放つと、私は家路に急ぎ自宅に向かった。
担任教員に言われたように、今日の事を報告しなくてはならない。
そう思っていた。
担任に殴られた頭が痛い。
気分も悪い。
最悪な日だった。
果たして私が実行した正義は、正しかったのだろうか。
少なくとも私に後悔はないが、やり過ぎだったのではないだろうか。
そんな疑問が記憶として頭に残っている。
そして私は中学校の関係者を、一切信用しなくなる光景を見る事になった。
2017.7.27 木曜日 平成29年




