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20XXの人間失格者  作者: 来栖総一郎
35/78

手帳3-2

恋(こい)をした。

私(わたし)の家(いえ)の近所(きんじょ)、私(わたし)のクラスに女(おんな)の子(こ)が転校(てんこう)してきた。


彼女(かのじょ)は輝(かがや)いて見(み)えた。

金髪(きんぱつ)に近(ちか)い栗色(くりいろ)の髪(かみ)の毛(け)。

淡(あわい)い色(いろ)の瞳(ひとみ)。

透(す)き通(とお)るような白(しろ)い肌(はだ)。

鈴(すず)の音(ね)のような声(こえ)。


私(わたし)は彼女(かのじょ)を見(み)る度(たび)に胸(むね)が痛(いた)かった。

それが一体(いったい)何(なん)なのか分(わ)からなかった。


他(ほか)の女子(じょし)を見(み)ても胸(むね)は痛(いた)くならなかった。


多分(たぶん)私(わたし)は初(はじ)めて恋(こい)をしたのだと思(おも)う。


彼女(かのじょ)と話(はなし)をしてみたかった。


だが何(なに)を話(はな)せば良(よ)いのか分(わ)からなかった。


ただ私(わたし)は彼女(かのじょ)を見(み)ているだけで、幸(しあわ)せな気持(きも)ちになった。


今(いま)考(かんが)えると確実(かくじつ)に恋(こい)だったと思(おも)う。


しかし今(いま)の私(わたし)は「見(み)た目(め)だけで人間(にんげん)を判断(はんだん)すると大火傷(おおやけど)をする」という事(こと)を知(し)っている。


その時(とき)に告白(こくはく)とか、話(はなし)をするとか、そういう事(こと)をしなくて良(よ)かったと、心(こころ)から思(おも)う。


しかし恋(こい)をしたことで私(わたし)は「清潔感(せいけつかん)のある人(ひと)に見(み)られたい」という欲求(よっきゅう)が出(で)て、毎日(まいにち)髪型(かみがた)を整(ととの)え、最低(さいてい)でも清潔(せいけつ)な服(ふく)を着(き)るように努力(どりょく)した。


このキッカケが無(な)ければ、私(わたし)は未(いま)だ身(み)だしなみが出来(で)ない、不潔(ふけつ)な人間(にんげん)だったのだろうと思(おも)う。


額(ひたい)から右目(みぎめ)に伸(の)びる傷(きず)を隠(かく)すために前髪(まえがみ)を伸(の)ばした。


親(おや)が「長(なが)すぎるから切(き)ってこい」と渡(わた)されたお金(かね)で、理髪店(りはつてん)に行(い)き、親(おや)の「短(みじか)く切(き)って来(こ)い」と言(い)われたのを無視(むし)した。


店主(てんしゅ)に前髪(まえがみ)の長(なが)さを指定(してい)すると「こっちの方(ほう)がカッコイイから」と指定(してい)した以上(いじょう)に短(みじか)くカットする店主(てんしゅ)にブチギレて、怒鳴(どな)り散(ち)らすような、私(わたし)は嫌(いや)な子供(こども)だった。


「お金(かね)があれば何(なに)を言(い)っても許(ゆる)される」と思(おも)っていたクソガキだった。


だが「現代(げんだい)でもお金(かね)を出(だ)せば何(なに)を言(い)っても、何(なに)をやっても許(ゆる)されると考(かんが)える奴(やつ)は、雑草(ざっそう)のようにいるから、それは普通(ふつう)ではないか」、などと甘(あま)えて腐(くさ)った考(かんが)えをしている、そんな私(わたし)を今(いま)は許(ゆる)せない。


私(わたし)は我侭(わがまま)で傲慢(ごうまん)な人格(じんかく)を形成(けいせい)して行(い)った。


人間(にんげん)は見(み)た目(め)よりも中身(なかみ)が、ずっと大事(だいじ)だという事(こと)は、今(いま)の私(わたし)は良(よ)く分(わ)かっている。


自分(じぶん)の中身(なかみ)を磨(みが)かなかった。

自分(じぶん)の中身(なかみ)を磨(みが)く努力(どりょく)をしなかった。

自分(じぶん)の中身(なかみ)を磨(みが)く必要性(ひつようせい)を認識(にんしき)できなかった愚(おろ)かな私(わたし)。


これが私(わたし)を責(せ)めている記憶(きおく)の1つだ。

2017.7.27 木曜日 平成29年

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