手帳2-9
学級裁判
母が仕事と子育てが大変だからと、祖母が私の家へ手伝いに来てくれていた。
私は祖母が家へ来てくれた事で、母の暴力と、辛辣な言葉からしばらく守られていた。
そんなある日、私は学校での出来事で、痛みと屈辱で泣いていた。
「もう学校へ行きたくない。」
本当に学校へ行きたくなかった。
時間は夕暮れ時、母がグズった私に対してヒステリーを起こした。
「だったらそんな脚、必要無いから切り落としてやる!」
母が父の工具箱からノコギリを持ち出して、私の脚に刃を当てて引いた。
その傷は右脚に今でもある。
「息子に対して何てことするのさ!」
祖母が身体を張って庇ってくれた。
母からノコギリを取り上げて正座させ、ガミガミと叱り付けていた。
祖母が私の脚の傷を手当してくれた。
「大介、どうして学校に行きたくないんだい?」
祖母が優しく聞いてくれた。
その日の小学校
「大介君が図書の本を返していません。」
学級裁判が始まっていた。
「図書委員に返却を頼んだ。」
私はそう主張した。
私が返却を頼んだ、その図書委員は引越していて、すでにクラスから居なくなっていた。
私を捲くし立てていた女子は、その後任の子だった。
「でも返却の紙には返却された事がありませーん。」
ひらひらと図書返却カードを図書委員の女子が目立つように振り回していた。
「これは返していないって事ですよね。嘘はやめてくださーい。」
図書委員の女子は大声で叫んだ。
「どっちが本当なんだ?」
「大介が嘘だろ。あいつ嘘つきだし」
「そうだな図書委員が正しい」
クラスのあちこちからざわめきが聞こえ、ついには大合唱になった。
「うーそつき!うーそつき!うーそつき!」
「あーやまれ!あーやまれ!あーやまれ!」
その大合唱に心が折れて、私は、自分の正しさを曲げて謝罪した。
悔し涙を流しながら。
「謝ったね。じゃあ本を弁償してください」
鬼の首を取ったかのように、図書委員が詰め寄って来た。
「謝れというから謝ったが、私は本を返した!これは事実だ!弁償などしない!おまえら全員敵だ!」
大声で私は宣言した。
「そんなものは知らない。弁償しろ!」
図書委員の女子が私の席に詰め寄って来て、平手を私の机に叩きつけて威嚇した。
「このクソ野郎!死ね」
私は図書委員を両手で突き飛ばした。
教員が割って入り、私は担任教員に顔面を殴りつけられた。
「いい加減にしろ大介!そして弁償はいい。みんなも言いすぎだ。全員反省しろ。」
教員から殴りつけられた顔面がじんじん痛む。
理不尽だった。
学校が終わり、自宅に戻ると祖母と母がいた。
今日あった事を伝え、もう学校へ行きたくないと伝えると、そんな事は許さない、朝になったら外に出して鍵をかけてやる、出て行かないなら脚を切り落としてやる。
こうなったのだ。
「どうしたものかねぇ…」
祖母は母への説教を終えて困惑していた。
家の呼び鈴が鳴った。
「この度はご子息に暴力を振るってしまいました。謝罪に参りました。」
私を殴った担任教員だった。
「いいんですよ。大体コレが悪いんで、どんどん殴っていいですから」
母のその発言を聞いて祖母が怒った。
「これが親の言う事か!」
祖母は母に暴力を容認するとは何事かと怒っていた。
祖母の言葉が、とても嬉しかったのを覚えている。
次の日。
学校の図書室で私が借りた本を探してみた。
私が借りた本があった。
多分だが、引っ越した図書委員前任の彼女は、私から本を受け取り手続きせず、そのまま図書室の本棚に戻したのだろう。
私は自分の責任を放棄して、雑な仕事をする人間が嫌いになった。
そして暴力を肯定する母も、教員も含めて、何かあれば「後で謝れば殴りつけても良い」という大人たち、全てが嫌いになった。
私は存在するだけで、他人に迷惑をかける悪なのだと思うようにもなった。
2017.7.23 日曜日 平成29年




