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20XXの人間失格者  作者: 来栖総一郎
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手帳2-10

給食費(きゅうしょくひ)

「おまえに食(く)わせる給食(きゅうしょく)はない。」

担任(たんにん)教員(きょういん)が給食(きゅうしょく)時間(じかん)の昼(ひる)に、私(わたし)を名指(なざ)しして、クラスメイト全員(ぜんいん)に聞(き)こえるように言(い)い放(はな)った。


突然(とつぜん)の担任(たんにん)教員(きょういん)の発言(はつげん)、その出来事(できごと)で私(わたし)は固(かた)まっていた。


「何回(なんかい)でも言(い)うぞ。大介(だいすけ)は給食費(きゅうしょくひ)を払(はら)っていない。つまりタダ飯(めし)を食(た)べているんだ。これが皆(みんな)許(ゆる)せるか。」

担任(たんにん)教員(きょういん)は繰(く)り返(かえ)す。

まるで鬼(おに)の首(くび)を取(と)ったかのように。

数週間(すうしゅうかん)前(まえ)の図書(としょ)委員(いいん)のように、私(わたし)を晒(さら)し者(もの)にし始(はじ)めたのだ。


「全員(ぜんいん)聞(き)け。給食費(きゅうしょくひ)を払(はら)わない奴(やつ)はこういう事(こと)になる。」

矢継(やつ)ぎ早(ばや)に担任(たんにん)教員(きょういん)が捲(ま)くし立(た)てる。


「みんな、大介(だいすけ)に給食(きゅうしょく)を恵(めぐ)んでやるつもりはあるか?話(はな)し合(あ)ってくれ。」

担任(たんにん)がクラス全員(ぜんいん)に提案(ていあん)した。

私(わたし)は完全(かんぜん)に吊(つ)るし上(あ)げられた。

発言(はつげん)する権利(けんり)など無(な)かった。


「マジかよ最悪(さいあく)」

「払(はら)ってないなら食(く)う資格(しかく)ねえよな」

「でも可哀想(かわいそう)じゃない?」

「私(わたし)は恵(めぐ)んであげてもいいと思(おも)うな」

「ゲー、最悪(さいあく)。あいつに恵(めぐ)んでやるの?オレはイヤだぜ」


批難(ひなん)と困惑(こんわく)で教室(きょうしつ)がざわめいていた。


「じゃあ採決(さいけつ)を取(と)るぞ。大介(だいすけ)に恵(めぐ)んでやりたくない奴(やつ)は手(て)を挙(あ)げろ。」

数人(すうにん)のクラスメイトが手(て)を挙(あ)げた。


「そうか。大体(だいたい)の奴(やつ)は大介(だいすけ)に給食(きゅうしょく)を恵(めぐ)んでやっても良(よ)いと思(おも)ってるって事(こと)で、大介(だいすけ)には給食(きゅうしょく)を恵(めぐ)んでやろうとと言(い)う事(こと)に決定(けってい)だ。」

私(わたし)は何(なに)も言(い)えない立場(たちば)だったが、悔(くや)し涙(なみだ)を流(なが)していた。


教室(きょうしつ)は静(しず)かに給食(きゅうしょく)がクラスメイト全員(ぜんいん)分(ぶん)支給(しきゅう)された。

もちろん私(わたし)の分(ぶん)もだ。


「良(よ)く味(あじ)わって食(く)え。これはクラス全員(ぜんいん)から恵(めぐ)んでもらった物(もの)なのだからな。」

担任(たんにん)教員(たんにん)の言葉(ことば)が、私(わたし)の心(こころ)を抉(えぐ)った。

私(わたし)は涙(なみだ)が止(と)まらなかった。


学校(がっこう)という施設(しせつ)は何(なん)と不愉快(ふゆかい)なのだろうと、何故(なぜ)この施設(しせつ)に通(かよ)わなくてはならないのだろうかと、私(わたし)は辛(つら)くて仕方(しかた)なかった。


この担任(たんにん)教員(きょういん)だが、今(いま)から考(かんが)えると私(わたし)を殴(なぐ)りつけて、それが問題(もんだい)になる前(まえ)にもみ消(け)し、そして頭(あたま)を下(さ)げた腹(はら)いせに、私(わたし)を吊(つ)るし上(あ)げて侮辱(ぶじょく)する事(こと)で、自尊心(じそんしん)を保(たも)っていたのではないかと想像(そうぞう)している。


私(わたし)が学校(がっこう)の教員(きょういん)たちを「先生(せんせい)」とか「教師(きょうし)」などと、尊敬(そんけい)の念(ねん)がある言葉(ことば)が不愉快(ふゆかい)で、絶対(ぜったい)に使(つか)わないのは、この最悪(さいあく)な記憶(きおく)にある。


そもそも、私(わたし)がみすぼらしく、汚(きたな)く、臭(くさ)く、視界(しかい)に入(はい)るだけで他人(よそ)様(さま)に不快感(ふかいかん)を与(あた)える存在(そんざい)だった事(こと)に、原因(げんいん)があると思(おも)う。


それが両親(りょうしん)への憎悪(ぞうお)に変化(へんか)し、その憎悪(ぞうお)が、世間(せけん)様(さま)が見(み)たら、親(おや)に対(たい)して尊敬(そんけい)と感謝(かんしゃ)の念(ねん)を持(も)たないどころか、憎悪(ぞうお)している子供(こども)は、許(ゆる)される者(もの)ではないだろう。


私(わたし)はどうしたら救(すく)われたのだろうかと、今(いま)でも考(かんが)えている。

2017.7.23 日曜日 平成29年

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