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20XXの人間失格者  作者: 来栖総一郎
20/78

手帳2-2

他人(たにん)を不快(ふかい)にさせる言葉(ことば)遣(づか)い

教室(きょうしつ)で座(すわ)っていた。

図工(ずこう)の時間(じかん)が終(お)わり、休(やす)み時間(じかん)だった。


「おいお前(まえ)、靴(くつ)の裏(うら)をみせろ。」

不意(ふい)に声(こえ)をかけてきたクラスメイト。

今(いま)まで話(はなし)をしたことも無(な)かった奴(やつ)だった。



靴(くつ)を見(み)せると急(きゅう)に髪(かみ)の毛(け)を掴(つか)まれて、何度(なんど)も何度(なんど)も殴(なぐ)られた。


私(わたし)は悲鳴(ひめい)を上(あ)げながら泣(な)いた。


教室(きょうしつ)で他(ほか)の子(こ)からも悲鳴(ひめい)が上(あ)がり、教室(きょうしつ)は恐慌(きょうこう)状態(じょうたい)になった。


教員(きょういん)が割(わ)って入(はい)るも、彼(かれ)はまだ怒(いか)りが収(おさ)まらず「殺(ころ)してやる」と叫(さけ)んでいた。



教員(きょういん)がいる目(め)の前(まえ)での、クラスメイトの彼(かれ)が凶行(きょうこう)に至(いた)ったのは理由(りゆう)があった。



彼(かれ)が描(か)いた絵(え)には、踏(ふ)まれて大(おお)きく足跡(あしあと)がついていた。

その足跡(あしあと)が私(わたし)の靴(くつ)と同一(どういつ)だったのだ。


だが靴(くつ)は量産品(りょうさんひん)で、多(おお)くの生徒(せいと)が履(は)いているもので、私(わたし)が彼(かれ)の絵(え)を踏(ふ)みに行(い)く理由(りゆう)も無(な)いし、何(なに)より彼(かれ)の近(ちか)くに行(い)った事(こと)はない。


教員(きょういん)は私(わたし)と凶行(きょうこう)に及(およ)んだ彼(かれ)とで職員室(しょくいんしつ)で話(はな)し合(あ)った。


「こいつが一番(いちばん)怪(あや)しいと思(おも)った。変(へん)だし。」


私(わたし)は彼(かれ)の絵(え)を踏(ふ)む理由(りゆう)が無(な)い事(こと)、近寄(ちかよ)っていない事(こと)を主張(しゅちょう)した。


「一(いちいち)々気持(きも)ち悪(わる)いんだよ!おまえの話(はなし)し方(かた)が!だから怪(あや)しいんだよ!」

私(わたし)は驚(おどろ)いた。

話(はな)し方(かた)が変(へん)だと疑(うたが)われるものなのだと。


私(わたし)は自分(じぶん)の話(はな)し方(かた)が変(へん)だと初(はじ)めて自覚(じかく)した。


周(まわ)りを良(よ)く観察(かんさつ)して言葉(ことば)の使(つか)い方(かた)をマネるように、そうやって周(まわ)りの男(おとこ)の子(こ)が話(はな)すように、話(はな)し方(かた)をマネする様(よう)になったのはこの頃(ころ)からだ。


だが、話(はな)す内容(ないよう)にまで成人(せいじん)するまで気(き)が回(まわ)らなかったのは、我(われ)ながら残念(ざんねん)だと思(おも)う。



その日(ひ)の夕方(ゆうがた)


私(わたし)を殴(なぐ)った彼(かれ)は教員(きょういん)と一緒(いっしょ)に、私(わたし)の家(いえ)まで来(き)て謝(あやま)りに来(き)た。


「子供(こども)のやることだから。お前(まえ)も許(ゆる)してやりなさい」

母(はは)がそう言(い)った。

私(わたし)は許(ゆる)してあげると伝(つた)えると彼(かれ)は笑顔(えがお)で去(さ)って行(い)った。



後日(ごじつ)の学校(がっこう)


「昨日(きのう)の事(こと)は許(ゆる)してあげるから、友達(ともだち)にならないか。」

そう言(い)う私(わたし)に対(たい)して彼(かれ)は信(しん)じられない言葉(ことば)を返(かえ)した。


「先生(せんせい)と親(おや)がうるさいから謝(あやま)っただけだ。調子(ちょうし)に乗(の)るな。気持(きも)ち悪(わる)いんだよ。死(し)ね」

そう言(い)うと彼(かれ)はツバを私(わたし)に掛(か)けて逃(に)げるようにトイレに入(はい)って行(い)った。


私(わたし)は泣(な)いていた。


あいつが謝(あやま)りに来(き)た時(とき)、玄関(げんかん)の花瓶(かびん)で頭(あたま)をカチ割(わ)ってやれば良(よ)かったと、今(いま)でも後悔(こうかい)している。


その後悔(こうかい)もまた、私(わたし)が普通(ふつう)ではない考(かんが)え方(かた)をする最悪(さいあく)で最低(さいてい)な人間(にんげん)なのだと、私(わたし)を責(せ)めるのだ。


「私(わたし)の話(はなし)し方(かた)が気持(きも)ち悪(わる)い。」

これも同時(どうじ)に私(わたし)を責(せ)める。

今(いま)でも責(せ)める。

私(わたし)の何(なに)がそんなに気持(きも)ちが悪(わる)いのか分(わ)からない。



2017.7.21 金曜日

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