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20XXの人間失格者  作者: 来栖総一郎
19/78

手帳2-1

幼稚(ようち)園(えん)卒園(そつえん)


小学校(しょうがっこう)へ

両親(りょうしん)が来(こ)ない幼稚(ようち)園(えん)での卒園(そつえん)式(しき)が終(お)わった。


ひどく退屈(たいくつ)で、窮屈(きゅうくつ)で、恥(は)ずかしくて、吐(は)き気(け)とひどい臭(にお)いと、痛(いた)みと恐怖(きょうふ)の幼稚(ようち)園(えん)が終(お)わった。


私(わたし)は二度(にど)と幼稚(ようち)園(えん)という施設(しせつ)に行(い)かなくて良(よ)いのだと、内心(ないしん)嬉(うれ)しく思(おも)っていた。


しかし、時間(じかん)を置(お)かず、また別(べつ)の施設(しせつ)に通(かよ)う事(こと)になった。


小学校(しょうがっこう)だ。


思(おも)えば私(わたし)の中(なか)で長(なが)い、気(き)の遠(とお)くなるような時間(じかん)だった。


6年間(ねんかん)。


私(わたし)は他人(たにん)と心(こころ)を通(かよ)わせる手段(しゅだん)を持(も)たず、そして、関(かか)わろうとも思(おも)わなかった。


幼稚(ようち)園(えん)を超(こ)える地獄(じごく)が待(ま)っていた。

そして小学校(しょうがっこう)よりも、私(わたし)は自分(じぶん)の家(いえ)が嫌(きら)いだった。


突然(とつぜん)怒(いか)り狂(くる)い、暴力(ぼうりょく)と恥辱(ちじょく)を私(わたし)に与(あた)える父(ちち)。


常(つね)にイライラしていて私(わたし)に辛(つら)く当(あ)たり、全(まった)く家事(かじ)をしない母(はは)。


何(なに)を考(かんが)えているのか全(まった)く分(わ)からない弟(おとうと)たち。


私(わたし)はどこにも居場所(いばしょ)を見(み)つけられなかった。

今(いま)から考(かんが)えても、私(わたし)はどこへ行(い)けば良(よ)かったのかわからない。


ただ分(わ)かっていたのは、父(ちち)を追(お)い出(だ)せば、家庭(かてい)が崩壊(ほうかい)すること。

母(はは)を責(せ)めたら、二度(にど)と祖父母(そふぼ)に会(あ)えないこと。


それだけは分(わ)かっていた。


それだけは避(さ)けたかった。


私(わたし)は悪(わる)い奴(やつ)だ。

打算(ださん)で物事(ものごと)を考(かんが)える悪(わる)い人間(にんげん)で、存在(そんざい)することで家族(かぞく)や多(おお)くの人(ひと)たちに迷惑(めいわく)がかかる、最悪(さいあく)にして最低(さいてい)な存在(そんざい)なのだと認識(にんしき)していた。


辛(つら)かった。


消(き)えて無(な)くなりたかった。


今(いま)でも消(き)えなかった後悔(こうかい)で、辛(つら)く思(おも)う。


当時(とうじ)は消(き)えて無(な)くなる方法(ほうほう)を知(し)らなかった。

死(し)ぬ方法(ほうほう)を知(し)らなかった。

知(し)っていたら死(し)んでいたかもしれない。


こう思(おも)うと父(ちち)に感謝(かんしゃ)が沸(わ)いてくる。

父(ちち)は私(わたし)に「死(し)ね」とは言(い)うものの、「死(し)ぬ方法(ほうほう)」を教(おし)えなかった。


もし知(し)っていたら実行(じっこう)に移(うつ)して死(し)んでいたかもしれない。


だが、今(いま)の心境(しんきょう)は「何故(なぜ)教(おし)えてくれなかったのか」ということ、それがとても残酷(ざんこく)な事(こと)だったのを、私(わたし)は感謝(かんしゃ)しつつも、それが死(し)ぬ事(こと)が出来(でき)なかった怒(いか)りに変換(へんかん)される。


それがとても、今(いま)も苦(くる)しいのだ。

2017.7.21 金曜日


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