僕は両親にとって何なのか
動物?
大介兄さんの日記を閉じた。
野生動物。
愛玩動物。
経済動物。
思いもしなかった言葉に、僕は大介兄さんの文字が、自分に重なった。
僕はどうなのか、親父とお袋にとって、僕はどの動物なのか。
そんな疑問が頭をよぎって、それがぐるぐる回り始めて止まらなかった。
「父さん。」
「ん?」
「僕は父さんにとって経済動物かな?」
僕のその言葉を聞いた瞬間、親父は立ち上がった。
「バカ野郎!何てこと言うんだ!」
親父が僕の両肩を掴んで、目を見て言った。
「いいか?お前に、父さんと母さんは、会いたかったんだ!父さんと母さんの、わがままで生まれてきたんだ!お前を牛や馬のように、利用するために授かったんじゃない!」
そう親父はそう強く言うと僕を抱きしめた。
心に穴が開いたような気がした僕の心は、とても幸せな気持ちで満たされた。
同時に涙が出た。
「うん。」
そしてに哀れみも沸いてきた。
「大介兄さんが…可哀想だよ。」
自分を経済動物と判断して、野生動物として生きると決意した大介兄さん。
もし今の僕の親父のように言われて、抱きしめられたら、兄さんはまた別の考え方に至ったのだろうか。
「やっぱり、この本は置いて行け。危険だ。」
僕はぎょっとした。
「待って。日記も手帳も読みきっていないよ。」
僕は読むと決めた。
予想外に闇が深い大介兄さんの心を写した文字。
だけどそれを読んだら、飲み込んだら、僕は強くなれる。
教え子たちを救える。
そう思ったんだ。
「うぅん…」
親父はソファに腰掛けて、日記と手帳を見ている。
「距離を置いて読め。引っ張られるぞ。それだけ危ない本なんだ。」
かちりとライターの音がすると、親父が紫煙を噴いていた。
「うん。」
僕は再び手帳を手に取った。
日記と手帳。
多分日記は大介兄さんが、過去と決別した時から書かれたものだろう。
すると、手帳はそれ以前の体験の記憶ということになる。
兄さんがどうして極限状態に慣れてしまったのかは、過去が教えてくれると思う。
僕は手帳の続きを読み始めた。
暑いです。2017.7.11




