夜になった。
私は夜空の月を見上げて考えていた。
この世界には動物に区別がある。
野生動物。
愛玩動物。
そして、経済動物。
野生動物は、人間が管理していない、又は管理出来ない、人間に害を及ぼす可能性がある動物である。
愛玩動物は、人間に従順であり、人間が管理出来る、そして人間に可愛がられる動物である。
経済動物は、人間に従順になるように調教され、畜産物を享受させる動物である。
私は高校で習った言葉を思い出していた。
人間は知性を持った動物である。
人間は動物である。
人は動物なのだ。
ならば私は何の区別に入る動物なのだろうか?
今の私は母にとって、どうやら経済動物のようだ。
今の私は父にとって、同じく経済動物のようだ。
幼い頃の私は、両親にとって何だったのだろう。
愛玩動物なのか?
父の暴力は愛玩動物への愛情表現だったのか?
母の辛辣な態度は愛玩動物への態度として適切だったのか?
私はもう父の言う事は聞かない。
昼の件でわかった。
もう私の方が父より強い。
強い者に弱い者は、逆らう事は出来ない。
私は母に600万円を没収された。
600万円あれば、月間5万円を家に入金したと思っても、10年分になる。
それを散財して、両親は更に私からカネを毟ろうとするのか。
ぎりぎりと歯軋りが鳴った。
私は両親の経済動物ではない。
私は両親の愛玩動物でもない。
今日の事で私は両親にとって、野生動物になったのだ。
この家にはもう、私の居場所は無い。
求職情報誌と書き上げた履歴書が、目に映る。
私は何のために稼ぐのだろうか。
私は何のために働くのだろうか。
私は何のために生きるのだろうか。
疑問ばかりが頭に浮いてくる。
やはり私は父の言う通り死ぬべきだろうか。
だが父の言葉も、私が強さで上位になったことで、意味を上書きされた。
私は私のために生きよう。
そう考えた。
私は経済動物ではない。
私は愛玩動物ではない。
私は野生動物なのだから、自分のために、生きるためにお金を稼いで、自分のために生きて行こうと思った。
求職情報誌を見て、自分が出来そうな仕事を絞る。
履歴書は何枚も書いたが証明写真は6枚しかない。
写真を撮るお金がない。
面接へ行くためのガソリンも、車のタンクに残っているものしかない。
ギリギリだ。
就職の狙いを外せば野垂れ死にだ。
慎重に選ばなくては。
眠い。
疲れた。
昼間の事で父は刃物で、私のはらわたを引きずり出しに来るかもしれない。
眠ったら抵抗出来ないだろう。
母は今日の事で食い物に、毒を入れるかもしれない。
私はこの家から早く、1日でも、1秒でも早く出なくては、私の命が危ない。
恐怖、諦め、疲労、ごちゃまぜだ。
ああ、眠い。