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第9話 ついてくる少女

最初の町――。

町へ続く街道を、ハルたちは歩いていた。

「やっと町だ……」

ハルが大きく伸びをする。

「ここで食料を買いましょう!」

ミルフィーユが元気よく叫ぶ。

「その前に、あなたは財布を確認しなさい」

キャサリンが言う。

「……あれ?」

「まさか」

「ない」

「また忘れたの!?」

そんなやり取りをしながら歩いていると――

ハルは、ふと立ち止まった。

「……?」

後ろを振り返る。

誰もいない。

「気のせいかな」

再び歩く。

しばらくすると――

ガサッ。

ハルが振り返る。

やはり誰もいない。

しかし、茂みの陰から小さな顔が覗いていた。

少女だった。

ハルと目が合った瞬間――

サッ!

少女は隠れた。

「……?」

ハルは首を傾げる。

クロが少女の方を見る。

「グル?」

ハルたちは歩き続けた。

すると今度は――

少女が少し離れた場所からついてくる。

歩けば歩く。

止まれば止まる。

曲がれば曲がる。

「……ずっといる」

ミルフィーユが振り返る。

「誰?」

「分からない」

キャサリンは面白そうに笑った。

「気づいてなかったの?」

「師匠は気づいてたんですか?」

「もちろん」

「早く言ってくださいよ!」

「面白いから見てたのよ」

「師匠……」

少女は物陰に隠れながら、必死についてくる。

やがてハルたちは町へ入った。

そして――

少女はハルたちより先に、町の広場へ回り込んだ。

「?」

ハルが広場へ入った瞬間――

少女が柱の陰から飛び出した。

「あ……!」

ハルと目が合う。

少女の顔が真っ赤になる。

「……」

「……」

「…………」

「どうしたの?」

ハルが一歩近づく。

少女は後ずさる。

「えっと……」

ハルがさらに一歩。

「……!」

少女は顔を真っ赤にしたまま――

「……いい匂い」

「え?」

少女は小さな声で呟いた。

「あなたから……いい匂いがする」

ハルは自分の服を嗅いだ。

「俺?」

少女はコクコク頷く。

「ずっと……追いかけてた」

「どうして?」

少女は答えようとする。

しかし――

人見知りの限界を超えた。

「……あ……」

ふらっ。

「え?」

少女はその場で気を失った。

「うわっ!」

ハルが慌てて支える。

「大丈夫!?」

ミルフィーユが駆け寄る。

「急に倒れた!」

キャサリンは少女を見つめる。

「この子……」

「何か分かるんですか?」

「ええ」

キャサリンはハルを見る。

「この子は、あなたの香りに引き寄せられたのよ」

「俺の香りに?」

「普通の香りじゃないわ」

ハルは黙った。

少女の顔を見る。

すると――

ハルの鼻に、かすかな香りが届いた。

それは少女自身から漂う香り。

「……この子からも匂いがする」

「どんな香り?」

ハルは目を閉じる。

「雨上がりの花みたいな……」

キャサリンの表情が変わった。

「雨上がりの花……」

「知ってるんですか?」

「ええ」

キャサリンは静かに答えた。

「今の世界では、ほとんど残っていない香りよ」

ハルは少女を見つめた。

なぜ、この少女は自分を追ってきたのか。

なぜ、自分からだけ香りを感じたのか。

そして――

なぜ、この少女から失われたはずの香りがするのか。

少女がゆっくり目を開ける。

「……ここ……どこ?」

ハルが笑いかける。

「大丈夫。俺たちが助けるよ」

少女はハルを見る。

そしてまた顔を真っ赤にした。

「……!」

「え?」

「……いい匂い……」

「また?」

少女は再び目を閉じた。

「寝た……?」

ミルフィーユが呟く。

クロは少女とハルを交互に見て――

「グル……」

またしても、遠い目をした。

そのとき。

町の鐘が鳴った。

カーン……。

キャサリンが立ち上がる。

「この町で、何かが起きているわ」

「何が?」

キャサリンは少女を見る。

「この子が知っている可能性がある」

ハルは少女を見つめた。

一つ目の町。

そこで出会った、不思議な少女。

彼女との出会いが――

失われた香りの謎を大きく動かすことになる。

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