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倹約皇子に今日も愛されてます  作者: 海野豹香


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大波乱のお妃選び


宮廷の広間には、美しく着飾った婦女ばかりが集まっていた。皆、皇子のお妃選びに立候補した者たちだ。

その中には、明らかに場違いな身なりの女が立っていた。



あちこちから嘲笑の笑い声が聞こえる。


「ねえ...ご覧になって、あんな格好で参加するなんて...」


自分がバカにされているのはわかっているが、この催しを開いた主催者が「身分は問わない」と言ってるんだ。場違いなのは重々承知だけど、出ると決めたからには「なんでも望みをひとつ叶える」という例のお沙汰を目指して頑張らなければ。


しばらくすると、広間女たちは次々に謎のグループに振り分けられて別の部屋に連れて行かれた。


広間に残ったのは、私含めて5人。200人以上はいたであろうぎゅうぎゅう詰めだった広間が、今は閑散としている。


「え?選別すら参加できない感じなの?」

さすがに早すぎる終結に心の中で絶望していると、身なりのいい高官のような男が部屋に入ってきて言った。


「...ここに残られた皆様、次の試験にお進みください。次の試験は未の刻に隣の部屋で開始しますので、それまでこの広間でお待ちください」


そう言って足早に去っていく。


残れた喜びよりも、あれだけの女性たちが集まっていたのに自分が残ったことに驚いていた。選別の基準が謎すぎる。


呆気に取られていると、残ったうちのひとりが明るく話しかけてくれた。


「皆様、ごきげんよう。こうして出会ったのも何かのご縁ですし、お話しません?」


残った5人は集まって自己紹介をした。


「私の名前は孫美花ソンメイファ、年は十六です。今回の選別は官吏の父にどうしてもと薦められて...」


美花は他の4人と違って、気品溢れるご令嬢だ。きっとこの中では有力候補だろう。なんだっていい、私は最終候補に残って望みを叶えてもらえれば。第一、この私が妃なんて務まるはずがないし。



「私は雪英シュイン。年は十七。都の外れにある茶屋の娘よ、よろしくね」


紅華ホンファよ。十九だからこの中では私が一番年上かしら。父が武官で、そろそろお見合いをするかこの選別に出るか迫られて...」


チェン)です。私は農家の娘で......」


春が顔を赤らめてモジモジとしている。


やっと自分と似たような境遇の子に出会えたことにホッとして、私も名乗る勇気がでた。


美雨メイユイといいます。ユイと呼んでください。年は十七で、普段は畑仕事をしています。よろしくお願いします」



美花と紅華は物珍しい様子で私を見た。きっとお嬢様育ちの彼女たちには私のような者が住む世界は異世界なのだろう。


「...いったいどんな基準で選ばれてるのかしらね。身分に関係なく選ばれるなんて、前代未聞じゃない?」

雪英が不思議そうに言うと、みんな頭の上に「?」が浮かんだ。


「ど、どんなお考えなのか分からないけれど...最後まで残れば望みを叶えてもらえるって...私、大家族で...10人きょうだいで、私が一番上だから...大変で...家もすごく狭くて寝られないから...大きな家が欲しくて...」


春がモジモジしながら、ぽつりぽつりと身の上話をする。この妃選びに参加した動機が、私と同じで家族のためだった春に少し同情した。



ちょうど未の刻を知らせる鐘が鳴った。



先ほどの身なりのいい官吏に連れられて隣部屋に移動した私たちの前に、ひとりの美しい男が現れた。


「みなさん、お集まりいただきありがとう。私が劉清嵐リウセイランだ」


突然の殿下の登場に私たちは各々礼をする。


「残っていただいたあなた方には、一人ずつ私に特技を披露していただきたい。必要なものがあれば、できる限り何でも用意しよう」


そう言って、前にある椅子に腰掛けた。



私たちは一度部屋の外に出て、準備をする。

...困った。披露できるものがない。


他の者たちは琴や笛を持ち出してきたり、舞の振りを確認し始めたりしていた。


春は突然のことに戸惑いながらも、手習所で昔習ったという生け花の準備をしていた。


美花から名前が呼ばれ、一人ずつ部屋に通される。


私と春が残るだけとなった。春の手が震えているのが見えた。


「...きっと大丈夫だよ。春らしく頑張れば大丈夫」


春が「...ありがとう」と小さく笑って部屋に入った。




どうしよう!何も準備できてない!

他人のことを元気づけてる場合じゃないのに!


最後の一人になった私は心の中で嘆いていた。悶々と頭を抱えていると、ふとあるものが目に入った。


「これしかない!!!」


部屋の前から見える庭園の脇に生えていたタンポポの花を急いで摘んだ。



「次の者、入りなさい」


部屋に入ると、殿下と身なりのいい官吏がこちらを見ている。


「...美雨と申します。私の特技は......」


私の手にあるタンポポの花を見て、清嵐殿下はため息をつきながら言った。


「生け花か?先ほどの者も同じことを...」


「いえ、違います。この花を食べます」


そう言って私はタンポポを口に入れた。

お金がないときは、こうして食べられる野花を見つけては食べていたのだ。いつもは茹でて食べるが、仕方がない。それでも宮廷に生えてるタンポポは美味しく感じた。


「...っな!?なにをしている!」


あまりに突然の出来事に、殿下は目を見開いて立ち上がった。周りの官吏たちも驚いて私を見る。


「なにって...タンポポを食べただけです。生活が苦しいときは、こうして野草を食べるんですよ。これが私の特技です」


宮殿育ちのお坊っちゃまには少し刺激が強かったようだ。信じられないという目でこちらを見ていらっしゃる。もう諦めよう、最初からわかっていた結果だ。


お辞儀をして帰ろうとしたとき、殿下が笑って言った。

「ははっ...待て。気に入った、美雨だったか?これから妃候補として宮仕えを頼む」


その一言に、私よりもまわりの官吏たちが驚いていた。


「どういうことだ?まだ最終選別の試験が残っているはずでは?」と官吏たちが困惑してヒソヒソと話している。


「清嵐様、いけません!貴方様の妃としてはあまりにも...」

殿下の横にいた身なりのいい官吏が猛反対している。


「廉、この妃選びだけは口出ししない約束だぞ。帝は俺に『妃を迎えろ』と命を下されたが、その妃については特にご指定はなかったはずだ。これは決定だ」


清嵐殿下はそのまま立ち上がり、「まだ執務があるのでこれで」と私に一瞥をくれて立ち上がった。


その場に残された私たちは、お互いの困った顔を見合わせるだけだった。


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