堕ちた花
清嵐様と廉様と作戦を立ててから数日経った。
私はいつものように妃教育を終え、一人で宮中の回廊を歩いていた。護衛の武官は数日前から外してもらっている。
「次は翠青宮で久しぶりに畑の様子を確認しなくちゃ」私はウキウキで翠青宮へと帰っていた。
そのとき、いきなり背後から誰かに口に布を当てられ、そのまま視界がぼやけていく。
「...せい...らんさま...」
私はそのまま意識を失った。
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目が覚めると、薄暗い部屋の中で柱に手を括られている。口は布で塞がれて、声が出ない。苦しい。
「あら、やっと気づいたの?」
目が覚めると、そこには孫美花と男が数人いた。私が暴れると、男のひとりが口に巻いていた布を乱暴に取る。
「...っ美花、どうしてこんなことを...」
「どうして?...あなた、本気で言ってるの?...清嵐殿下の妃に相応しいのは私のはずだったのに!お父様にもずっと私こそ妃に相応しいと仰っていたわ!...なのにどうしてあなたみたいな汚い平民が選ばれるのよ!ふざけるな!あなたを消したら、私が妃になるの。...そうそう、その腹には清嵐様の子がいるのでしょう?...邪魔者は消えて!」
美花は突然人格が変わったように怒鳴り、持っていた扇子で私の頬を叩く。
「...こんなことをして、どうなるかわからないほど馬鹿じゃないでしょう?...確かに私はあなたのように妃になりたくてなった訳じゃなかった。でも、今は清嵐様のことを側で支えたい。一緒に彼と歩んで行きたいって思えたの。...あなたのような自分勝手な人は、あの方の妃に相応しくなどないわ!」
「...っこの!」
二発目がくると思って身構えたが、大きな音がしてその場の全員の気が逸れる。
「動くな!」
声の主は清嵐様だった。武官が次々と部屋に入り、男たちを制圧する。
「美雨!」
清嵐様は柱にくくりつけられた私を見て駆けつけ、短剣で縄を切ってくれた。
「...孫美花。お前と一族の処遇はおって沙汰を出す。それまで牢に入っていろ」
清嵐様が見たこともない表情で美花を睨んだ。
「...っそんな!牢だなんて、父が黙っていませんわ!」
狼狽える美花に、清嵐様は冷たく言い放った。
「お前の父親や親戚たちも、すでに牢に入れている。お前たち一族がこれまでの数々の汚職を働いたことはわかっている。さらに今回の皇子妃暗殺未遂。...もう逃げられはしない」
武官たちが美花を取り押さえ、連行していく。
「...俺の妃に手を出すなんて愚かな真似をしたこと、残りの人生悔いて過ごすがいい」
「おのれぇえ!清嵐!」
美花の目は真っ赤に充血し、乱れた髪や衣服でもはや別人のようだった。妃選びの会で会った彼女の面影はどこにもない。
美花たちが連れて行かれ、部屋は静まり返る。
「美雨、無茶をするなとあれほど言ったのに...」
清嵐様が私の腫れた頬に優しく触れる。
「大丈夫です。大した怪我もしてませんし。助けに来てくださってありがとうございます」
清嵐様が私を抱き抱える。
「念のため医局で診てもらおう」
そう言って私は清嵐様に抱っこされたまま宮廷の医局に連れて行かれた。




