第29.5話 こいつら、ほんと最低
#第29.5話 こいつら、ほんと最低
煌都のネオンが、じんわりと夜を照らしている。
その下、路地をゆっくり歩く三人の影が、舗装の上にゆらりと伸びていた。
ルカがぽつりとこぼす。
「……つーかさ、臣くん。最後、どうやって勝ったんだよ」
「ん?」
缶コーヒーを片手に、臣が気の抜けた声で返す。
「たまたま。」
あまりにも軽すぎる返答に、ナオが顔をしかめた。
「マジかよ……」
「マジマジ。」
笑いもせず、さらりと断言する臣に、ルカが信じられねぇとでも言うように首を振る。
「最後のチップだっただろ?負けてたら、どうする気だったんだよ。」
その瞬間、臣の視線が、ぴたりとルカの腰元に落ちる。
ルカが一瞬だけ、嫌な予感を察したように眉を寄せた。
「……やだよ?これ特注だぜ? 革職人が魂込めて仕上げたんだからな?」
「だって俺、金目のもん持ってねぇし?」
「知らねぇよ!勝手に俺のベルトを質草にすんな!」
缶のプルタブが引かれ、乾いた音が夜に響く。
「……ま、それでも足りねぇな。」
「だから、どうするつもりだったんだよ。マジで。」
ルカの問いに、臣の視線が横へずれる。
ぴたりと、ナオの顔に止まる。
じーーーーーーーーーーー。
「………………」
ナオは、じわじわと半歩後ずさった。
「……俺も、金になりそうなもんは持ってねぇぞ?」
「顔、いいよな。」
「は?」
「整ってるし、タッパもあるし。声もいい。
なにより――スーツがエロい。」
「…………」
ナオの目が、細くなる。
その横で、ルカが両手を振って慌てたように叫ぶ。
「ちょ、臣くん!?それ以上言ったらダメ!うちのナオを変な目で見ないで!!」
「いやだって、あそこさ、金持ってるマダムいっぱいいたじゃん?ワンチャン、囲われ──」
「──だあああああああああ!!!!!」
叫ぶルカ、口を閉ざすナオ。
三人の間に、気まずい沈黙が落ちる。
ぽつり、とナオがつぶやく。
「……最低だな。」
臣は悪びれることもなく笑い、缶を傾ける。
その表情に、ナオがジト目で睨み返した。
「……臣が身を切ればよかっただろ。」
「俺? 無理無理、俺、純情だもん。」
「俺もだよ。」
「ちげーよ、ダーリンはどっちかって言うとムッツリ……」
「黙れ、クソ。」
ナオがぴしゃりと切り捨てた。
その横で、ルカはふいに咳払いをひとつして、どこか真顔で臣を睨む。
「……いいか、臣くん。
ナオをエロい目で見ていいのは、俺だけだから。」
「あいあい。」
軽く手を上げてごまかす臣に、ナオが静かに呟いた。
「……お前ら、二人とも最低だ。」
夜風が、ゆるく三人をすり抜けていく。
歩幅は揃っているのに、漂う空気は三者三様。
それでも、三人の足音だけが静かに夜道へ溶けていった。




