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箱庭シンドローム  作者: 彩音
第二章 心を持ったロボット~Love and hate~
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第二章 心を持ったロボット~Love and hate~ 2話


ベトット博士のお家は郊外の山の奥深くにありました。

周りには誰も住んでないような僻地に、一軒だけ赤い屋根の小さなお家が立ってます。

横には工房っぽい建物がたっていました。


アレクサンダーさんは迷わず、工房のような建物のドアをノックして、入っていきます。



「博士、いる?」



「おう、アレクサンダーか。・・・10年ぶりか?

全く、シーナやロビンはたまにワシの所に来るというのに、お前は全く顔を出さないんだな。」



初老のいかにも職人さんというおじいさんが何かの作業をしながらいいました。

ペトッド博士は、よく分からない機械をいじってます。

・・・なにかの部品・・・のようです。



「・・・・こんな僻地まで行くの面倒じゃねーか。」



と、アレクサンダーさんは工房の入口の側にある来客用のテーブルに座りながら言いました。

わたしもアレクサンダーさんの隣に座ります。


アレクサンダーさんは早速タバコに火をつけてタバコを吸いはじめました。



「・・・おい、ここは禁煙だ。吸うならよそで吸え。」



「なんだよ、博士。タバコ辞めたのか?」



「・・・ふん。医者に止められたんだ。仕方あるまい。」



「じゃ、俺、外で吸って来るから。」



と、アレクサンダーさんは面倒臭そうに立ち上がり、外に出てしまいました。



・・・・えっと、わたしはどうしたらいいんでしょう。



「・・・・お嬢ちゃん、名は何というのだ?」


ペトット博士は作業を中断し、初めてこちらをみました。

わたしのことを伺っているような鋭い視線を感じます・・・怪しい人だと疑われているんでしょうか。



「マグノリアです。」



「ほう・・・春の花の名前か。いい名前じゃな。」



と、ペトット博士の目が細くなり、優しい顔になりました。



・・・良かった。疑われているわけではなかったのですね。



その時、工房の奥のドアから少年が入ってきました。

少年はトレイにお茶を持ち、わたしにお茶を出してくれました。



「お客様、お茶をお持ちしました。」



ちゃんと丁寧にお辞儀までしてくれて・・・とても礼儀正しい子ですね。


お孫さん・・・なんでしょうか?



「ありがとうございます。」



「博士も。」



そう言って、少年はベトット博士にコーヒーを出してくれました。



「ありがとな。ワトリー。」



と、ペトット博士は一言お礼を言って、コーヒーを一口飲みました。

わたしもお茶を一口飲みます。


とても香りも風味も味も素晴らしい美味しいお茶でした。



「・・・美味しいです。あの、お孫さんなんですか?」



ペトット博士は嬉しそうにニヤッと笑って



「そう見えるか?実はな、こいつはロボットなんだ。ワシの息子だよ。」



「えっ!?」



わたしは思わず大きな声を出してしまいました。



だって、ワトリーさんはどこからどう見ても普通の少年にしか見えません。

ロボットなんて、そんなの言われなきゃ分かりません。



「ワシの最後の作品じゃ。

長年夢見てきた「人間のような心を持ったロボット」を開発したくてな。

やっと、試運転の段階まできたんじゃ。」



と、ペトット博士は感慨深そうにワトリーさんを見つめました。



「・・・とてもびっくりしました。まさか、ロボットだとは思わなかったです。素晴らしい発明ですね。」



「・・・いや、まだ、こいつは完成してないんじゃ。」



と、今度は険しい顔でワトリーさんを見ます。



「・・・まだ、人間でいう「喜怒哀楽」の「哀」の部分が未完成でな。なかなか涙を流してくれないんじゃよ。

涙を流すプログラムは作ったのに・・うまく動かないんじゃ。」



・・・そうなんですね。

今でも充分人間のような気がしますが、ペトット博士に言わせれば、まだまだの完成度、らしいです。


その時、入口のドアが開いてロビンさんが入って来ました。



「やっほー!博士元気?」



「おう、ロビンか。」



「ロビンさん、こんにちは。」



「わっ!ワトリーじゃん!すごーい!動けるようになったんだ!」



ロビンさんの反応を見て、ペトットさんが満足そうに笑った。



「お主のおかげじゃよ。あの人の感情の研究結果のデータは多いに役立った。」



「良かった!あれさー、超作るの苦労したんですよ?

ま、おかげで、僕も新しい魔法が作れたから良かったんですけどねー。」



ロビンさんが朗らかに笑って、ペトットさんもガハハと笑いました。



「相変わらずじゃのー!人の手柄も自分の手柄にするその狡猾さ!いやー、さすがじゃな。」



「・・・えっと、ロビンさんのおかげでワトリーさんが出来たんですか?」



「そうそう。ちょうど10年前・・・魔王を倒してすぐくらいに

ペトット博士に依頼されて「人の感情」を魔法的な観点で研究したんだよ。

いやー、ホント大変だったよー。おかけで「感情を操る魔法」が出来たんだけどね。」



「感情を操る・・・・ですか。」



「例えば、哀しみに暮れる人を元気にさせたりとか・・・ね。

ただ、ちょっと使い方次第では危険でさー、人の破壊衝動を強めたりとかも出来るんだよね。」



「それって、ものすごく危険じゃないですか!」



「そうだね。大雑把に言えば、人の気持ちを自由に操れるからね。

あ、自由というのはちょっと語弊があるかな?完全に「人の心を操る」事までは出来ないし・・・。


それでも危険であることは間違いないんだけどね。

まあ、大丈夫だよ。複雑過ぎて、まず、僕以外は使えないし、僕は使う気もないからさ。」



と、ロビンさんは笑いながら言いました。



・・・それなら良かったです。だって、そんなものが自由に使えたら大変なことになってしまいますからね。



「あ、でも・・・・一回だけ。使いたいと思った時があったなぁ。」



と、ロビンさんは目を細めて遠くを見ながら言いました。



「なんじゃい。珍しい。お前さんはそんなモノに頼るほど馬鹿ではあるまい。」



「うーん、そうなんですけどね・・・。ほら、恋は人を狂わすってよく言うじゃないですか。」



「恋って・・・恋愛のことですよね?

ロビンさん、誰か好きな人がいるんですか?」



わたしがそう聞くと、ロビンさんは小さく笑いました。



「失礼な。僕だって24の男子なんだよ?恋の一つや二つくらいしているよ。

あ、でも・・・あの子は特別だけどね。」



そう言って笑ったロビンさんは、確かに「男」の表情をしていました。

今はロビンさんは女の姿をしていますが、「男」に見えて・・・なんだか不思議なものです。



「わあ!気になります!良ければ聞かせて下さいよ!」





「あれは三年くらい前かなぁ・・・。

その時、僕は仕事で他の国に行っていたんだ。北の雪国スノーガデーデンにね。

ただ、行く途中の山で吹雪がすごくてさー、あまりの寒さに僕、倒れちゃったんだよねー。」



「ええっ!?」



「どうやら肺炎起こしちゃって倒れたみたいでさー。あの時、もう死んだかと思ったんだよ。

・・・だけどね、そんな僕を助けてくれた女神がいたんだ。」



「女神・・・運命の人のことですね!」



「そうそう。彼女は倒れていた僕を家まで運んで献身的に僕を看病してくれたんだ。

・・・だけどね、いざ、肺炎が治って目が覚めたら・・・彼女はどこにもいなかったんだよ。」



「ま、まさか・・・幽霊ですか?」



「マグノリアちゃん、電車での僕の話聞いていた?

この世界に幽霊が存在するわけないんだよ。ただの迷信さ。」



ロビンさんがむっとしながら言いました。

そう言えばそうでしたね。



「でも、それならどうして彼女は消えてしまったんでしょう?」



「さあ・・・その後彼女の姿を見ることはなかったから・・・。

でも、あの時、せめて名前だけでも聞いて置けば良かったなって・・・今でも思うんだ。」



ロビンさんは大きくため息をつきながら言いました。



「大丈夫ですよ。きっと、また、会えますって。」



「・・・そうかな?マグノリアちゃんに言ってもらえるとそんな気がしてきたよ。」



と、ロビンさんは小さく笑いました。




きっと、また、運命が廻って再会できる日が来るとわたしは信じています。



神様、どうか、ロビンさんの恋が叶いますように。




わたしは、小さく神様にロビンさんの恋路がうまく行くように祈りました。





-------------




夕食はワトリーさんが作ってくれました。


とても濃厚な味のビーフシチュー。

まさに料理のプロが作ったみたいな美味しさです。



「すごい美味しいですー!ワトリーさんって、お料理も美味しいんですね。」



「ありがとうございます。お褒めに預かり、光栄です。」



「こいつはなー。もっと人間らしく不完全に作りたかったんだが、

さすがにロボットに欠点っていうのは難しくて、何でも万能にできるんじゃぞ。」



ペトット博士がまるで息子さんを自慢するかのように誇らしげに言いました。



「・・・ペトット博士は本当にワトリーさんを息子のように思っているんですね。」



「もちろん!今まで作ったロボットは全部息子のようなものじゃ!そう言えば、トミーは元気か?」



「はい!今日はノルディックタウンに配達に行ってますが、元気ですよ!」



「そうかい。そうかい。いやー、元気そうで良かったわい。

最近の若いモンはロボットを道具としてしか思ってなくてな、それがイカンのじゃ。」



「・・・ロボットに心なんてないだろ。」



と、わたしの横にいたアレクサンダーさんが冷めた視線で突っ込みを入れます。



「いや、道具にだって心はある。

だから、ちゃんと大事に使ってやらなきゃダメなんじゃ。」



と、博士ははっきりとそう言いました。



「・・・まあ、確かに最近のこの街は何か変ですよね。

昔はロボットと人が共存する街だったのに、だんだんロボットを道具として使っていて・・・・。」



「そうじゃろう?

昔はな、この街で兵器は作ってなかったんじゃ。人の役に立つ為のロボットしか作ってなかった。

だけど・・・・・今、この街では政府の指示で人を殺す為のロボットが量産されているんじゃ・・・」



ペトット博士は虚しそうにそう言いました。



わたしは、この街の昔の姿を知らないけれど。


でも、そういう街に変わってしまったというのなら、とても残念です。



「・・・兵器なんか作ってどうするんでしょう・・・。もう、魔王はいないのに・・・」



「だからこそ、だろ。戦争でもはじめるんじゃないか?」



と、アレクサンダーさんはまるで他人事のように言います。



「せ、戦争ですか!?」



「・・・悲しい事に否定出来ないね。

魔王がいない今だからこそ、世界を征服する・・・あの狂った王が考えそうなことだよ。」



と、ロビンさんは大きなため息をつき、



「そういうつもりなんじゃろうな・・・。実際、この国はこの10年間、戦闘面で強化されておる・・・。」



博士も悲しそうに言いました。



世界を征服していた魔王がいなくなり、

世界は平和になったはずなのに、この世界ではまだ黒い思惑が動いている。



・・・・本当に世界が平和になるには、どうしたらいいのでしょうか。




どうして、皆仲良く暮らすことが出来ないんでしょうか・・・・。





「そう言えば、アレクサンダーとロビン、お前達に頼みがあるんじゃ。」



と、ペトット博士はコーヒーを飲みながら言いました。



「・・・何だよ?」



「・・・いや、最近な・・・。街の方で悪魔を見たという噂があってな。

ワシはこんな僻地に住んでいるし、もしかしたら、

風の噂かもしれないが、ちょっと確かめてきて欲しいんじゃ。」



「何で俺たちが・・・」



と、面倒臭そうにアレクサンダーさんは頭を掻きました。



「まあまあ、いいじゃない。どうせ国を出る許可が出るまで時間はかかるんだし、

僕たちもこの家にお世話になっているんだしさ。

博士、その噂、僕たちが確かめますよ!」



と、ロビンさんは力強く胸を叩きました。



「・・・・っていうか、お前が勝手にここに泊まるって言ったんだろう。」



と、不貞腐れたようにアレクサンダーさんがつぶやいて、「タバコ」と言って外に出て行きました。



・・・・全く、アレクサンダーさんにも困ったものです。



何でいつもあんなに面倒臭がるんでしょうか?

困った人を助けるのは基本中の基本なのに・・・・。



まあ、でも、そこが、アレクサンダーさんらしいとも言えるんですけど・・・・。



なぜだかわかりませんが、自分以外はどうでもいい・・・そんな感じがします。



きっと、わたしの気のせい・・・・ですよね?

だって、アレクサンダーさんは赤の他人のわたしを助けてくれたのですから・・・・



END


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