第二章 心を持ったロボット~Love and hate~ 1話
箱庭シンドローム 2章 心を持ったロボット~Love and hate~
わたしは今、日記を書いてます。
と、いうのも、アレクサンダーもロビンさんもわたしを置いて、
買い物に出かけてしまったので、手持ち無沙汰なんです。
なので、わたしはホテルのロビーでアレクサンダーさんに買ってもらった日記を書いてました。
書きたいことが多すぎて、日記というよりは自伝みたいな感じになっています。
でも、それでもいいんです。
とにかく出来るだけ詳細に「わたし」が「わたし」であったことを残しておかないと。
また、記憶を失ってしまったら困りますからね。
今はちょうどノルディックタウンに滞在した最後の日のことを書いてました。
あの日はとにかく書いていきたいことがたくさんありすぎて、ペンが進みます。
・・・そういえば、クロークさんが持っていたあのナイフ・・・・
わたしがノー村で見たものととてもよく似ていたような気がします。
結局あのナイフは何だったのでしょうか?聞きそびれていましたね。
後でアレクサンダーさんに聞いてみよう、と思ってわたしは休憩がてら、一旦ペンを置いて周りを見渡しました。
わたしの目の前で走り回っていた子供さんが、派手に転びます。
「わーん!痛いよー!」
なんと、泣き出してしまいました。これは大変です。
「大丈夫?ぼうや?」
「うわーーーーん!」
子供さんは派手に泣きじゃくるばかりでわたしの言葉は届いてないようです。
よしっ、それなら・・・
「ぼうや、大丈夫ですよ、痛くありませんから。」
わたしは子供さんに優しく微笑みかけました。
子供さんが泣き止んで、不思議そうにわたしを見ます。
「痛くない、痛くない・・・ほら、痛いの消えたでしょう?」
「うわぁ!ホントだ!魔法みたい!お姉ちゃんありがとう!」
子供さんは元気な笑顔を見せて、また走り出しました。
ふう、いいことをした後というのは気持ちが良いものですね。
「お前、本当に懲りないんだな。」
怒りを押し殺したような低い声がわたしの背後から聞こえました。
この声は・・・間違えようがありません。
わたしが、今、一番会いたかった人の声です。
「アレクサンダーさん!」
わたしが振り向くと険しい顔をしたアレクサンダーさんと
笑顔のロビンさんが買い物袋を持って立っていました。
「お前なあ、何回言ったら分かるんだ?言霊を使うなって言ってんだろ。」
「まあまあ、さっきのは言われなきゃ分からないし、いいじゃない。」
ロビンさんが怒っているアレクサンダーさんをなだめます。
「・・・よくない。どうせまた使うんだろ。」
と、アレクサンダーさんがじろりとわたしを睨みます。
「そんなに睨まなくても大丈夫ですよ!」
と、言って見ますが、アレクサンダーさんの視線は変わりません。
「ほら、ほら、早く駅に行きましょ。電車の時間もあるんだから。」
「電車?どこに行くんですか?」
「国境にあるロボット工学の街アインタインよ。ここから国を出るの。」
わたしはこの国のことしか知らないので(それでもまだ一部しか知りませんが)
新しい国に行くというのはとてもわくわくします。
国の外というのはどんな風になっているのでしょう!
「ロビンさん!行きましょう!いざ、世界へ!」
わたしは日記と万年筆をポシェットにしまって、ロビンさんと一緒に歩き出しました。
アレクサンダーさんは小さくため息をついて、わたしたちの後ろについてきました。
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はじめて電車というものに乗りました。
この国の電車はとても発達しているらしく、ほとんど音も振動もなく早く目的地につくそうです。
四人用のボックス席に座り、わたしは窓の外からの景色を見ました。
「うわー。すごいですね、早いですね!」
「早さだけならもっと早くなるらしいんだけど、景色が楽しめるようにわざとちょっと速度を落としているのよ。」
「へえええ、すごいです!
あ、そうだ、ロビンさん少し聞きたい事があるんですけど・・・」
わたしは窓から目の前に座っていたロビンさんへと視線を向けました。
「うん?何?」
「あの、クロークさんが持っていたナイフ・・・
わたしがノー村で見たものととてもよく似ていたような気がするんですけど・・・」
「ああ、これのこと?」
そう言ってロビンさんは懐からナイフを取り出しました。
だけど、あの時はナイフが赤く染まっていたのに、今度は真っ黒に染まっています。
「えっ?持っていたんですか?」
「ふふっ、ちょっとくすねてきちゃった☆」
・・・いいのでしょうか。
わたしの横で話を聞いていたアレクサンダーが呆れた顔で何も言わないのできっといいんでしょう、たぶん。
「えーっと、これは世界の理の話になるんだけど・・」
「えっ?あの、世界の理とはなんですか?」
「ああ、ごめん。そこからだったね。
世界の理っていうのは、まあ、簡単に言うとこの世界のルールみたいなものよ。
世界なんてただ存在しているだけのように見えるけど、
魔法使い的に言わせれば、細かいルールの上で成り立っているのね。そのことを理と言うんだー。
このルールが変わったりすれば、もちろん世界は変わるんだよね。
・・・まあ、建物で言えば基礎のようなものなんだ。」
「よく分かりませんが、とりあえずいくつか決まり事があるんですね。」
「そうそう。
それでね、世界の理では「この世界には霊的な物体は存在出来ない」となっているのよ。
だから、魔法使いに言わせれば「幽霊」なんて迷信だし、天使も悪魔も存在出来ないってことになるんだー。」
「あれ?でもおかしいですね。この世界には「妖精」がいるんですよね?」
「そう。妖精はちょっと特別で・・・妖精は霊的存在じゃなくて、「魔力を持った木」の分身だから・・・。
簡単に言えば、妖精の存在自体が魔法みたいなものなんだ。」
むむう。なかなか難しい話です。
でも、なんか妖精が魔法みたいな存在なんてロマンがありますね。
「それで、まあ、ルール上悪魔は存在出来ないってことになっているんだけどさ、
実は「ナイフ」として存在しているんだよねー。」.
「な、ナイフですか?」
「うん。悪魔なんだけど、この世界ではナイフとして存在しているんだ。
だから、悪魔達は契約の時に契約者の血をナイフに染み込ませて、
真っ赤なナイフが出来、悪魔が死ぬとこのように真っ黒になるんだ。
原理は分かってないけど、とにかくそういうことになっているみたい。」
「・・・・はあ。それでナイフが黒くなったんですね。」
よく分かったような・・・よく分からないような。
とにかく、悪魔はこの世界では「ナイフ」として存在していて・・・
契約中はナイフが真っ赤になって、契約が終わると真っ黒になる・・・ということらしいです。
「それで、ノー村にあったナイフの方なんだけど、これは「人工的に作られた悪魔のナイフ」なのよね。
ずっと昔、魔王がこの世界に来る前に作られたナイフで・・・
普通の悪魔のナイフは悪魔が死んでしまうと二度と使いものにはならないんだけど、
このナイフはどういうワケか不老不死の魔法がかかっていて・・・どれだけ殺しても悪魔が蘇るんよ。
おまけに普通、悪魔に乗っ取られても自我は残るのに、このナイフと契約したら、自我は消えてしまうの。
おまけに契約した人まで不老不死となり、永遠に悪魔として生活し続けるという恐ろしいものなんだ。」
契約したら、自分が自分でなくなり、悪魔として生き続けるナイフ・・・・
背中が寒くなって、変な汗が吹き出ます。
そんな恐ろしいものがどうして・・・・
「・・・でも、ちょっとおかしいんだよね。
普通なら、もう持っているだけで悪魔になって行くはずなのにアレクサンダーさんは何ともないし・・・。」
と、ロビンさんは何か考えながらつぶやきます。
「えっ?アレクサンダーさん、あのナイフ持っているんですか?」
「・・・まあ。」
アレクサンダーさんはタバコを吸いながらうなづきました。
「そ、そんなもの持っていて平気なんですか?
アレクサンダーさんがアレクサンダーさんじゃなくなったら大変ですよ!」
「何ともないから。・・・そんなことより、もう、着くぞ。」
そう言ってアレクサンダーさんはタバコを消して、荷物をまとめはじめました。
何でこの人はこんなに平気そうなんでしょう?
普通そんなもの持っていたら怖いはずなのに・・・・
そう言えば、アレクサンダーさんが怖がる所をわたしは見たことがありません。
この間のノルディックタウンだって、異変があった時に真っ直ぐに敵の元へと走っていきました。
・・・・アレクサンダーさんは、怖いと思ったことがないのかな。
死ぬのが怖くないのかな。
わたしは、いつも恐怖を感じているというのに。
いつ、どこで、自分がいなくなってしまうのか、それがとても怖いのに――――
どうして、そんなに強いんでしょうか・・・・
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アインタインは人工的な建物とロボットがたくさんいる街でした。
・・・むしろ、人の姿はほとんどなく、街中がロボットだらけです。
「ここはね、ロボットの街と呼ばれていて・・・ほとんどここに人は住んでないんだ。
まあ、僻地だし、好んで住むような人なんてほとんどいないんだけどね。」
ロビンさんが説明をしてくれました。
「ほとんど住む人がいないのに、どうしてこんなにロボットがいるんですか?」
「それは、ロボット工学の第一人者であるペトット博士がいるから、だよ。
今では博士に弟子入りをした研究者達が次の世代の研究者へと技術を継いでいる・・・らしいよ。
ま、そのせいか知らないけど・・・ここは10年前とはすっかり変わってしまったね。」
ロビンさんは少し寂しそうに街の景色を見ていました。
「・・・確かに、この街はすごく変わったな。」
アレクサンダーさんもタバコを吸いながら街を見ています。
「昔はね・・・こんな近代的な建物が並ぶ人工的な街じゃなかったんだ。
人とロボットと美しい自然が共存する街だったのに・・・・。時代の流れというやつなんだろうねー。」
ロビンさんは大きくため息をつきました。
わたしは10年前を知らないので、何とも言えませんが、とにかくこの街は何もかも変わってしまったようです。
「・・・さて、アタシはちょっと国境を出る為の手続きをしてくるね。
たぶん、一週間くらいかかるから、アレクサンダーさんはベトット博士の所に行ってよ。」
「なんで博士の所なんだ?ホテルでもいいだろ。」
「この街のホテルはご飯が美味しくないんだよ!
そりゃあもうインスタントって味しかしないのさ。そんな所に泊まりたくないもんね!」
「・・・そ、そういう理由なんですか。」
確かにご飯が美味しくないというのは大問題な気がしますが・・・・うーん、いいんでしょうか。
アレクサンダーさんは大きくため息をついて、
「分かったよ、行けばいいだろ。」
と吐き捨てるように言って、すたすたと歩き出しました。
「え、えーっと、アレクサンダーさん!待って下さいよぉ!」
わたしは慌ててアレクサンダーさんを追いかけました。
ロビンさんが、いってらっしゃーいと手を振り、わたしたちを送り出してくれました。
END




