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箱庭シンドローム  作者: 彩音
第五章 預言の巫女~Sophia and Magnolia~
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第六章 シーナの願い~Once again~ 3話



・・・どうして、あの時、「勇者」を殺せなかったのだろう。




確かに、アタシのナイフは急所を狙っていた。

だけど、刺す瞬間、一瞬だけためらいがあり、急所を微妙ずれてしまった。




・・まあ、あのまま放置しても死ぬだけなんだけど。




・・・どうにも解せない。どうしてアタシは・・・・一発で殺せなかったのかしら。




そんなことを考えながら、アタシはアジトでシャワーを浴びていた。




別に血をつけたままでも良かったが、「儀式」のためには身を清める必要があり、仕方なくシャワーを浴びている。

浴室から出て、体を吹き、先ほどまで着ていた白いワンピースに目をやる。





・・・・白い色なんて大っ嫌い。こんなの、破いてしまおうか。





アタシはワンピースに手をかけて、服を破こうとした。





・・・・でも、出来なかった。






どうしても、手に力が入らず、アタシはワンピースを床に叩きつけた。





・・・・なんで、出来ないのよ。





このワンピースは、マグノリアにとっては大事なものだけど、アタシには・・・関係ないのに。

なのに、このワンピースを手にすると、このワンピースを買ってもらった時の記憶が頭に浮かぶの。





・・・どうして。




「おーい、ソフィア。はじめるってよー。」



外から声が聞こえる。





・・・時間か。





アタシは儀式用の黒い服に着替えて、ワンピースは、悩んだ末にそっとハンガーにかけておいた。




-------



「遅かったですね。」



グーリーが少し怒ったような顔で睨む。



「女の着替えっていうのは手間取るもんなのよ。」



「・・・そうですか。」



「アタシのいない間に・・・すっかり準備が整ったってこと?」



「ええ・・・・・ようやく完成しましたよ。終焉を引き起こす「魔法」が・・・・。

全く、この世界のルールがややこしくて、少し時間がかかってしまいました。」



そう言って、グーリーは一枚の羊皮紙をアタシに渡す。



「あなたは、この言霊を歌い続ければいいのです。」



「・・・・あっそ。りょーかい。」



羊皮紙には、ぎっしりと、文字が書かれている。

・・・これを一字一句間違いなく読み上げるのか・・・と思うと少し気が重くなった。




だけど・・・グーリーを魔王にするのは、アタシの願い。





彼を魔王にするために・・・アタシは、全てをかけて、これまでやってきた。





・・・ようやく、その悲願が叶う。






そう、ずっと、ずっと・・・・アタシが望んできた結末がもうすぐ届くというのに・・・・







それなのに・・・・






どうして躊躇う気持ちがあるんだろう?





アタシの中にまだマグノリアがいるのだろうか。





・・・ううん、そんなこと、あるはずがないわ。


だって、あの子はアタシが殺したから。





それよりも・・・儀式に集中しないと・・・・


--------------





「あれ?天気悪くなってきたね。」



ロビンが空を見上げながら、そう言った。


俺も空を見上げると、空は黒い雲で覆われている。今にも雨が降り出しそうだ。



「・・山の天気は変わりやすいと言うしねー。こりゃー、一雨くるかも。」



フリージアが、うっとおしそうに空を見上げて言った。



「・・・いえ、この雲・・・雨ではないようです。」



ワトリーが難しい顔をしながらそう言った。



「雪・・・なワケないよね。そんなに寒くないし。」



「・・・灰」



「えっ?」



「雲の中の成分は、黒い灰・・・ですね。」



ワトリーがそう言うのと同時に、黒い灰がはらり、はらり、と雲から降ってきた。



「・・・これは、まさか・・・終焉の預言にある灰?」



ワトリーが灰をとって、舐めた。



「・・この灰毒性があるようです。即効性ではありませんが・・・吸い続けると危険です。」



「・・・ちなみに、どのくらい危険なの?」



「そこまで脅威ではありません。人間だと・・・三年くらい吸い続けて、ようやく致死量に達するくらいです。

ただ、この灰が植物や水に吸収されると・・・灰が降らなくても、10年は毒性が残るようですね。」



「なるほど。僕たちの飲み水や食べ物に毒性が残ってしまったら、

「今」死ぬことはなくても、いずれは死んでしまう・・・ということか、」



ロビンが考え込みながら、そう言った。



「魔法で毒性を消せないのか?」



「簡単に言わないでよ、アレクサンダーさん・・・。

いくら僕が天才でも、新しい魔法を作るのって大変なんだからねっ!」



「あのさ、この灰について語るのはいいんだけどさ、あんたたち、大事な事を忘れていない?

もしこれが終焉のはじまりだとしたら、大地が燃えたり、海面が上昇したりするのよ。

そんな灰なんかにかまってられないわよ。」



フリージアが呆れたように俺たちを見る。



「確かに、そうだね。・・・・そうなる前に止めないと。」



「でも、どうやって止めるんだ?」



「この灰は自然に存在するものじゃないわ。

・・・たぶん、魔法で降らせているのよ。だから、妖精の森に戻れば・・・」



「あの、フリージアさん。」



フリージアの言葉を遮って、ワトリーが少しためらいがちに話しかけてきた。




フリージアがむっとした顔をしながら、ワトリーを睨む。



「・・・何よ。話の途中なんだけど。」



「えっと・・・その、妖精の森が・・・燃えているんですけど・・・・」



「へっ?」



俺たちは慌てて山の上から妖精の森を見下ろした。

そこは、黒い煙と赤い火に覆われていた。



どうして・・・いつの間に火が付いたんだ?



「大変!早く消さないと!」



フリージアは、森が燃えていることを確認するなり、妖精の森へ飛んで行ってしまった。



「あっ!フリージア!アレクサンダーさん!僕たちもフリージアを追おう!」



ロビンが杖で魔方陣を書き始める。








・・・吸い続けていれば死ぬ灰、妖精の森が燃えている事・・・・







ここまでは、預言の通り、ってことか・・・。





―――そう、これはまだ、地獄のはじまりに過ぎなかった。






俺たちはこの後、本当の地獄を見る事となる。








END

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