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箱庭シンドローム  作者: 彩音
第五章 預言の巫女~Sophia and Magnolia~
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第六章 シーナの願い~Once again~ 2話


マグノリアの過去を聞いた俺は、言葉を失っていた。


想像以上に悲惨な過去で・・・言葉がでなかったんだ。




・・・でも。



「一つだけ、聞いてもいいか?」



「何?」



「さっき、グーリーは手遅れと言っていたけど・・・グーリーにも、そういう悲惨な過去があるんじゃないか?」



「・・・・」



シーナは難しい顔をしながら、黙ってしまった。



「あのね、私、ほら、不可抗力で無意識のうちに人の過去を見ちゃう時あるじゃない?

グーリーもね・・・旅の途中に過去を見たことがあったの。でも・・・・」



そこで、シーナは一旦言葉を切った。




「・・・・真っ暗だったの。」



シーナは暗い顔をしながら、そう言った。



「真っ暗?」



「・・・・・・何もない・・・・闇。彼の過去は闇しか見えなかった・・・・」



「・・・でも、それって、おかしいじゃないか。」



シーナの力は、自分がその出来事を忘れていたり、

絶対に他人に見せないように硬く鍵をかけている過去でさえ、覗いてしまうのだ。




・・・今まで、彼女が過去を覗けなかったことは、ない。



「・・・・これは、ただの仮説だけど・・・心も完全に悪魔になると、過去を覗けないのかも。

私が過去を覗けるのはこの世界に住む、人間だけ・・・・そう、神様から言われているから・・・・」



「・・・・神様?お前、この世界の神の言葉が聞けるのか?」



そんなことは初めて聞いた。



そもそも、人が神の言葉を聞けるなんて・・・

大昔の・・・それこそ、レインヘブンが存在した時代にしかいなかったはずだ。




今は、神様の言葉なんて、誰も聞けない。



何人かの魔法使い達が、魔法で神の言葉を聞けないかと試したが、今の所、誰も成功してない。



今、神の言葉を聞けるのは・・・妖精の中でも最も偉い「長老」のみ。

でも、長老は・・・人間をひどく嫌っていて、絶対に人に会おうとしないのだ。




・・・だから、そう、シーナの言うことは・・・





「・・・ごめんね。今まで、黙っていたけど、私は・・・人間ではないの。

この世界の神様の使い。人間の言葉でいえば・・・・天使かな。」



そう言って、シーナは小首をかしげて笑った。



「・・・天使って。御伽噺くらいしか聞いたことないぞ。」



「あら、失礼ね。なんで悪魔は信じられるのに天使は信じられないの?」



シーナがむっ、とした顔で俺のことを見る。



・・・言われてみれば、確かに悪魔が存在するのに、天使が存在しないっていうのは、おかしいよな。



「私たち、天使はね。初めから人として産まれ、人として生きていき・・・人として、死んで行く。

ほとんど、人間とは変わらないわ。

ただ、人間と違う所は、物心ついた時には自分が何をするべきか・・・という「天命」と、

不思議な力を神様から授かっているの。」



「・・・・シーナの場合、「人間の過去を見る力」がそれってことか。」



シーナとは小さい頃から側にいたから、

正直、彼女の力は、「普通のこと」で、何でそういう力があるのか・・・とか、考えたことなかったな。




そういえば、ロビンはかなり気にしていたっけ。「シーナさんの力は、魔法でも言霊でもない力だ」って・・・・



「私の天命は・・・「預言の中にある「勇者」と共に魔王を倒し、この世界に平和を取り戻すこと」だったわ。」



・・・また預言か。

確か、それのせいで俺は、勇者だと呼ばれるようになっちゃったんだよな。



「でもさ、魔王がきてから何百年も経っているってのに、どーして今なんだ?」



「・・・それは、預言の中にある魔王を倒す赤髪の勇者が産まれてなかったから・・・

他の人じゃ、ダメだったの。魔王を倒す力がないから・・・」



「・・・はあ。」



別に神様なんだからその辺ちょちょいと調整してくれればいいのに、面倒なんだな。



「神様だからって、何でも出来るわけではないのよ。

全て神様の思い通りになってしまったら、それはもう、世界ではないわ。」




・・・そういうものなのかな。

でも、確かに、神様が全部捜査してましたって言われても嫌だな。




「・・・もう、行かなくちゃ。これで私の話は終わりね。」



シーナはさみしそうに笑った。





「・・・待ってくれ、シーナ・・・俺・・・」



「アレクのせいじゃないよ。

私は、天から与えられた天命を全うした、ただそれだけのことよ。」



シーナはそう言って、綺麗に笑った。


びっくりした。声にしてないのに・・・・考えを読まれたかと思った。



それは、シーナが死んでから、ずっと、俺の中にひかかっていた杭みたいなもので。



シーナが死んだのは・・・・自分のせいではないかと・・・ずっとそう思っていて、自分を責めて・・・




―――でも、もう、どんなことをしても、彼女は戻らない。



彼女の言葉は、俺の中に引っかかっていた自責と後悔という名の杭を、いとも簡単に抜いてしまったのだ。



・・・・・・ずっと、心にのしかかっていた重みが、すっ、と消えたような気がした。




「頑張ってね。いつでも見守っているから。」



彼女の姿が薄くなる。





・・・待ってくれ。シーナ、まだ言いたいことがあるんだ。





生きている間に言わなきゃ行けなかった言葉があるんだ。





俺は、お前のことが・・・・





-------



「・・・・さん。」



・・・なんだ、声が聞こえる。



「アレクサンダーさん!起きて!アレクサンダーさん!」



・・・・この声は・・・ロビンか?




真っ暗だった視界が一気に開けた。




目の前にロビンの顔がある。



「あー、良かった。危ない所だったよ、もう少し手当が遅れていたら、手遅れになっていたかも。」



・・・・ずきずきと脇腹が痛む。



そうか・・・俺、マグノリアに刺されて・・・生死の境を彷徨っていたのか。


だから、シーナに会えたのかな。



「・・・全く、刺されるなんてだらしないわね。誰にやられたのよ?」



フリージアが、こっちを睨みながら言った。



「・・・マグノリア・・・だったのかな、あれ・・・」



正確に言えば、あいつの中にいる悪魔だけど。



「・・・やっぱり」



フリージアがそう、呟いた。



「あの子・・・ソフィアだったのね。」



「ソフィア?ソフィアって誰だ?」



知らない人の名前だ。なんなんだろう。



「ソフィアは、このレインヘブン最後の巫女・・・そして、レインヘブン崩壊に携わった張本人っていう噂よ。」



・・・ああ、そうか。あいつには、本当の名前があったんだっけ。

シーナの話にはソフィアって名前は出てなかったからな。



「そうすると・・・悪魔と契約しているってこと?

レインヘブンが崩壊したのは何百年も昔だし、流石に人は生きてないからねー。」



「ロビンの言う通りよ。あの子・・・・悪魔と契約したのよ。そして・・・悪魔に精神を乗っ取られたって所かしら。」



「・・・でも、一つだけ疑問点があるのです。

何故、悪魔はアレクサンダーさんを殺さなかったのでしょうか?

怪我をさせる目的で刺したとは、考えにくいのですが・・・」



・・・そういえば。ワトリーの言う通りだな。



きっと、悪魔にとって俺が邪魔だから殺そうとしたのだろうが・・・俺は、こうして生きている。



「そんなの、知らないわよ。悪運でも強かったんじゃない?」



・・・もしかして、シーナが守ってくれたのかな。


だとしたら、また、一つ、あいつに借りができちゃったな。



「・・・何にしても。良くないことが起こりそうだねぇ。」



ロビンは大きくため息をついた。



「・・・早めにマグノリアを探しましょ。下手したら終焉を引き起こす可能性があるわ。」



「そうだね。アレクサンダーさんの治療にはそんな時間はかかってないから、遠くには行ってないと思うよ。」



「・・・でも、マグノリアさんは言霊を使えました。

もし、悪魔もそれを使えたら・・・遠くに言っているのではないでしょうか・・・」



「・・・・あー・・・。使ってないことを祈ろうか。」



「・・・そうね。」



ロビンとフリージアは揃って大きなため息をついた。






・・・あいつの行き先か・・・・





・・・どこか心当たりはないだろうか・・・・。





END


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