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箱庭シンドローム  作者: 彩音
第五章 預言の巫女~Sophia and Magnolia~
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第六章 シーナの願い~Once again~ 1話



・・・真っ暗だ。




真っ暗で、何も見えない。聞こえない。感じない。



俺、マグノリアに刺されて、死んだのか・・・?




「死んでないよ。」




そうか・・・死んでないのか・・・



―――って、あれ?今、シーナの声が聞こえたような。




・・・いや、あいつがいるはずはないんだ。

だって、あいつは死んだんだし。

化けて出ない限り、いるはずないよな。




・・・いや、俺がもうあっちの世界に行ったのか?




「いや、まだこっちの世界よ。私が化けて出てきているんだけど、アレク、聞こえている?」




「ほら、目を凝らして。」





目を・・・?






急に視界が明るくなり、目の前にシーナが表れた。



「・・・シーナ?」



「・・・久しぶり。」



シーナが笑う。久しぶりのシーナの笑顔。





・・・・本物だ。本物のシーナだ。






会いたかった。





話したい事がたくさんあるんだ。





「・・・シーナ、俺・・・・」



「はい、ストップ!色々言いたいことがあるのは分かるけどね、あいにくあまり時間がないんだ。

だから、先に私の用事を済ませたいの。」



シーナは早口でそうまくし立てた。



「用事?」



「うん。アレクに、説明しておかなきゃいけないことがあるんだ。」



「説明?」



「アレクが引きこもりになってから、私が何をしていたのか、話すね。

私、国ごと操っている組織とか人物とかそういう人がいないか探したの。

魔王がいるのに、あんなのおかしいからさ・・・まだ魔王とか悪魔とかがいるんじゃないかって思って・・・」



・・・いや、あの国王は元からああいう奴だと思うけど・・・シーナも物好きなんだな。




・・・俺も、彼女と一緒に走っていたら・・・何か変わっていたのかな。



「それでね、探してみたら、いたのよ。この国・・・というか、この世界の終焉を狙っている悪魔が。」



「国王は操られていたというのかよ?」



「うーん、そうね、悪魔によって、そういう風になるように仕向けられた、と言った方が正しいかな。

魔王のように力で制するわけではなく、かと言って、精神を魔法で操っているわけでもないの。

そういう風な行動をするように仕向けられていただけ。」



・・・うーん、悪魔もなかなか高度なことをするんだな。

操った方が楽なんじゃないか?



「・・・すると、国王があんなに腐った奴だったのも・・・」



「悪魔がそうするように仕向けていたのよ。」



「・・・え、それじゃあ、魔王がいないのに、この世界がなんだか平和になり切ってないのも・・・」



「・・・まあ、全部とは言わないわ。だって、人の欲というのは、果てないものだもの。

野心を持った人間が、「平和」を乱すようなことをしているのも事実よ。

それに悪魔の入れ知恵が加わって、さらに厄介な事になっているだけ。」



・・・なんつーか・・・複雑だな。




要するに、平和を乱している人間がいるけど、悪魔もそれを手伝っていますよってことか。



・・・ったく、折角平和な世の中になったんだから、せいぜい死ぬまで平和を満喫すればいいのに。





なーんで、己の欲なんかに固執するのかねえ。俺には、わかんねーよ。


放っておいてくれればいいのに、なんで欲がたかって、世界まで壊しちゃうのかねえ。




「あのね、どうやら悪魔達は、この世界をまるまる自分たちのものにしたいみたい。

世界が手に入れば、魔界で、悪魔から魔王に格上げされるらしいの。」



「・・・随分詳しいんだな。」



そんなの、どうやって調べたんだ?



だって、シーナは毎日のように俺の元に通っていたはずなのに・・・いつの間にこんなこと調べ上げていたのか。




・・・もしかして、シーナは知りすぎてしまったから殺されてしまったのだろうか・・・



「それで・・・その終焉を企んでいる悪魔なんだけど、二匹いるの。」



「えっ?二匹?」



・・・確か、終焉で生き残るのは一人だから・・・二匹だと余るよな。どうするんだろう。



「二匹って言っても、片方はボスに仕えている悪魔だから、実質一匹よ。」



「それで、その悪魔っていうのは・・・・誰なんだ?」



「・・・・グーリーよ。」



「・・・嘘だろ・・・グーリーって、俺たちと一緒に魔王を倒したじゃないか!」



シーナは悲しそうに目を伏せた。


・・・グーリーは、槍使いの冒険者で魔王討伐の旅の途中にであった。


寡黙だけど、頼れる男で・・・いい奴だった。





それなのに・・・・






「何でなんだよ・・・。あいつ、魔王の事、憎んでいたじゃないか。」



「・・・そうね。自分の邪魔をする魔王だから、憎かったのかもね。」






俺、あいつと戦わなきゃいけないのか。





あいつを・・・殺さなきゃいけないのか。




やるしかないんだろうな。でも、やりたくねーよ。





でも・・・誰かがやらなきゃいけないんだろうな。

そして、適任なのは・・・勇者である俺ってことか。




・・・・何で俺が勇者に選ばれちゃったのかね。こんなことなら、断れば良かった。





・・・断れるのかどうかは知らないけれど。




「・・・ごめんね。こんなこと、押し付けちゃって。

本当は・・・私がちゃんとしていれば、こんなことにはならなかったのに・・・」



「そんなことない。俺がシーナを手伝っていれば・・・・シーナは・・・」



「・・・ふふっ。お互い様ってことね。」




シーナは小さく笑った。



「・・・ねえ、アレク。どうか・・・グーリーを止めてあげてね。」



「・・・うん。」




あいつに、これ以上、この世界を壊させたくない。


・・・止めてみせるさ。一緒にいた時間は短かったけど、大事な仲間なんだ。



たとえ、彼が悪魔だとしても。



「それで、もう一匹は・・・・?」



「マグノリアちゃんよ。」



やっぱり、あいつか・・・・・でも、どうしてー――



「あの子は・・・・・人から愛されることがなかったの。

だから―――きっと、悪魔に手を貸してしまったのね。」



シーナは遠い目をしながら、ぼそぼそと語った。



「今まで、あの子は記憶を無くしたからこそ、「マグノリア」でいられたのよ。

悪魔の存在を忘れていたから・・・・彼女は人間だった。」



「まさか・・・あいつ、記憶を取り戻したのか?」



シーナがうなずく。



「だから・・・・悪魔が目覚めてしまったの。

あの子が思い出してしまったから・・・。」



俺はその時、全てを理解した。




―――あいつが、記憶を思い出したくなさそうだったのは



―――あいつが、必死に「今」の出来事を覚えていようとレポートのような長い日記を書いていたのは




記憶が戻ったら、自分が消えてしまうのだと、無意識に分かっていたから・・・・?




そうだとしたら、俺は―――




「・・・・・マグノリアちゃんの中の悪魔は、グーリーを魔王とするために、終焉を起こそうとしているわ。」




「お願い。グーリーは・・・・元には戻せないけれど、マグノリアちゃんなら、まだ、間に合うの。

もう一度、あの子を人間にしてあげて。」




「・・・・シーナ。一つだけ、いいか。

お前が死んだのは・・・・マグノリアの中の悪魔と戦ったから・・・・なのか?」



シーナは何もいわずにただ、笑った。

それが、肯定の意味だと、すぐ分かった。



「・・・・・・あの日、アレクは久しぶりに外に出かけていたでしょ。

その時に、彼女が来ていたみたい・・・・。

彼女は・・・理由は分からないけれど、ノー村の人を殺していったわ。

私が村に来たときは―――もう、誰も・・・・・。」



シーナの顔が歪む。今にも泣き出しそうだ。


・・・・・その気持ちは、よく分かる。



あの日、変わりきったノー村を見た俺の気持ちも、同じものだったから―――



「シーナ・・・・。」




「お願い、アレク・・・・。どうか―――あの子を憎まないで。

あの子は何も悪くないわ。少し、道を踏み外してしまっただけなの。」



どうして、シーナは・・・・そういうことが言えるのだろう。



俺の故郷を、大事な人を、全て奪っていったやつなんだ。



―――憎いに決まっているじゃないか。



でも―――シーナは、あいつを憎むな、と言った。



「お前、マグノリアについて・・・何か知っているのか?」



「少しだけ、過去を覗かせてもらったわ。」



シーナは、人の過去を読める不思議な力がある。

おそらく、それを使ったのだろう。



「あの子のこと、少し話すわね。」



そうして、シーナはマグノリアの過去を話した。




―――それは、俺が思っているよりもずっと悲惨なものだった。




END


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