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第4話 尋問、誤解、しゅき無双‼

「……さて。永友。説明してもらおうか」


 我が校では屋上を解放している。安全処置を施しているため、誰でも利用可能だ。今の俺の状況は安全処置もクソもないけども。


 クラスの陽キャグループのリーダー格、山路勝利やまじしょうりが、俺の肩をがっしりと掴んだまま、低く、地を這うような声で言ってのける。


 周囲を囲むのは、山路と同じグループの陽キャ達だ。


「説明もなにも、見たままだろ。ノートを落としたお詫びだっての」


「お詫びでタッパーいっぱいの玉子焼きが出てくるかよ。しかも、あの青井さんが耳まで真っ赤にしてたぞ‼ うらやましいったらありゃしない‼」


 あ、やっぱり赤かったんだ。


 隠せてると思ってたのは本人だけってことね。


「いや、あれは照れてたんじゃなくて、怒りで血圧が上がってたんだよ。山路、思い出してくれよ。あの『お前を殺す』って目を‼ 毒が入ってるか確認しろって言われたんだぞ? あれは実質、処刑宣告だ‼」


 ここに来てイルカ──青井瑠夏の謎ワードが役に立つ。


 適当に並べた言い訳がそれっぽく聞こえたのか、「……処刑?」と男子たちが顔を見合わせる。


「そうだよ。あんなに不格好な玉子焼き、嫌いな奴に無理やり食わせて反応を楽しむ嫌がらせに決まってるだろ‼︎」


 ごめん、イルカ。ウソだからな。あれはめちゃくちゃ美味しかった。でも今はウソを言わしてくれ。ここでイルカの「愛の結晶です」なんて言おうものなら、俺の骨は明日のゴミの日に出されることになる。


「確かに、青井さんの顔は般若みたいだったような……」


「毒味しろ、ってのも相当な言い草だもんな……」


 よし、流れが来た。男子たちが納得しかけている。


 追加言い訳を加えてやろう。


 その時だった。


「──な、永友くんを、放しなさいっ!!」


 バンッと屋上に鋭い声が響いた。


 肩で息をしながら駆け寄ってきたのは、他でもない青井瑠夏本人だった。


 彼女は俺たちの間に割って入ると、俺を背中に隠すようにして山路たちを睨みつけた。


「青井さん……⁉ いや、これは別にいじめてるわけじゃないよ」


 山路が慌てて言い訳をして、周りの男子も、うんうんと頷く。


 まぁいじめって感じではない。学園のアイドル青井瑠夏が特定の男子に弁当なんて作って来たから、男子ノリの事情聴取って感じだ。


 ──ブブッ。


 そんな折、ポケットのスマホが震えた。


 このタイミングでスマホが震えるって、まさか──⁉


 恐る恐るスマホを確認する。


『エーヒレさん!! 大変です!!』


 やっぱりお前かよ。


『さっき、永友がクラスメイトの男子達に連れて行かれちゃって……。屋上の方に行ったみたいで……‼』


 うん、知ってるぞ。今まさにその現場だ。


『どうしよう……‼ 私、怖いけど……でも、助けに行きます‼ エーヒレさん、力を貸してください‼』


 いや、もう来てる。


 目の前にいる。


 めちゃくちゃカッコよく乱入してる。


 エーヒレの力なぞいらないって感じで勇ましく立っておられる。


「言い訳は見苦しいわよ。永友くんが困ってるじゃない。永友くんに指一本でも触れたら、私が許さないんだからっ‼」


 ……おい、イルカ。


 それ、今の状況で言ったら、めっちゃ誤解されるやつだぞ。


 ほらみてみろ。山路達の顔を。


「許さないって……? え? お前ら付き合ってるの?」


「ぎょ⁉」


 壮大にきょどっている青井瑠夏。


 まて。付き合ってはいないぞ。このまま俺達が付き合ってる認定されたら男子達からの総攻撃を受け、俺の命の灯が消える。


「私達は……永友くんは私の……っ」


 頼む青井、いつもの毒舌を俺にくれっ……‼


「永友くんは私の下僕なんだからっ‼ 怪我でもして、私の面倒がみれなくなったら困るでしょ‼」


 ……。


 …………。


 俺、お前の下僕なの?


「あ、ああ……。なんだ、青井さんの下僕か」


「びっくりした……付き合ってると思ったぜ」


 まって。え、まって。納得してるの?


「青井さんの下僕ってのも羨ましいな」


 あかん。これ、男子共が納得している空気だわ。


 山路達が一気に脱力し、苦笑いしながら「悪かったな、永友」と去っていく。


 首の皮一枚で繋がったけど、圧倒的これじゃない感。


 ま、まぁ、いつもの毒舌に救われた……のかね。


 彼女は山路たちが居なくなったのを確認すると、バッと俺の方を向いて腕組みをしてみせる。


「あ、危なかったわね、永友くん」


「下僕を救ってくれてどうも」


 ちょっとばかし嫌味を含めての礼をする。


「ふ、ふんっ。け、けけけ、結婚してると思われるよりマシでしょ」


 俺の嫌味が吹き飛ぶくらいに壮大な勘違いだな。


 あいつらもそこまでは言ってねぇよ。


「勘違いしないでよね‼」


 彼女は顔を伏せ、小走りで去っていった。


 その直後、俺のポケットでスマホが狂ったように震える。


『エーヒレさぁぁぁん!! 聞いてください‼ 今、私、永友くんをピンチから救いました‼』


『王子様を救う女騎士ナイトになった気分です‼ 今日のエクレガは前衛でバシバシ攻めようかなっ♪』


『もう、まじで心臓が口から『こんにちは』しそうでしたけど、愛の力で乗り切りましたよ‼』


『彼を守る私、ちょっと格好良かったかも……しゅき……自分がしゅき……でも永友くんがやっぱりしゅきぃぃぃ‼』


 ……。


 騎士ナイトっつうか、女王様だろ。お前、俺のこと下僕って言ったんだぞ。


 下僕って言った瞬間の山路の同情の目、見てなかっただろ。(一人だけ羨ましそうにしてたけど)


 ああ……違う意味で俺の平穏な学園生活は戻って来ないのだろう。

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― 新着の感想 ―
下僕認定は目出度いですねえw 昼と夜とで主従関係が逆転というやつw
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