第25話 画面の中では常にアイドル。ガチで二次元ヒロインだな
「ふぁーぁぁ……ねむっ……」
大きな欠伸をかましながらいつもの通学路を歩く。
昨日はあのあとイルカに、「騎士の契約紋」を取りに行くから手伝ってと言われてしまった。それはエーヒレがイルカに頼んだもの。冗談で言ったつもりだったが、本当に取りに行くなんて相棒思いなやつだ。感無量。
ん? いや、待って。面倒だから頼んだものを、自ら取りに行くの? トラップじゃない?
「し。ししし、真、おさおさなじみなんだから、当然付いて来てよねっ」
なんて意味不明な理屈で強制労働を強いられた。この子は将来社長になっちゃいけない子だわ。会社がブラックと化す。
そんなわけで、夜遅くまで付き合わされたもんだから絶賛寝不足だ。
「朝からそんな欠伸しちゃって。情けないわね」
通学路にある街灯の柱に背中を預け、冷ややかな視線を送ってくる美少女。青井瑠夏。
探偵かな?
彼女は俺の姿を認めると、わざとらしくスマホを確認し、ふいっと顔を背けた。
「遅いじゃない」
「……俺は別に、誰とも待ち合わせなんてしてないんだが」
「は、はいはい。まったくもぉ」
青井瑠夏は俺の返答など耳に入っていないかのように、不機嫌そうに唇を尖らせながら俺の隣に並んだ。
その瞬間、俺の肩と彼女の肩が接触する。
「──ッ⁉︎」
瞬間、青井瑠夏が阿修羅のような顔になるので反射的に飛び退こうとした。しかし、青井瑠夏は俺の制服の袖をグイッと掴んで離さない。
「ちょっと。なによその反応は」
「いや、肩が当たって怒ってるのかな、と」
「は、はあ? い、いやいや。別に怒ってないし」
そんなことを言ってくる彼女へ、俺はいきなりスマホを取り出してインカメを作動させる。そして、精一杯腕を伸ばした。
「は? え? な、なに?」
「はい、チーズ」
使い古されたシャッターの呪文を唱えると、スマホからカシャリと機械音声が放たれた。
「ほら見──」
スマホに映された画像は、半目の俺と、アイドルみたいな笑顔で映っている青井瑠夏だった。
「ちょっと、いきなりなにすんのよ」
「は? え? なんでぇ?」
今は阿修羅顔なのに、スマホの画像はめっちゃアイドル。なんじゃこいつ。二次元の生き物?
「ちょ、ちょっと。そ、それ、私に送りなさい」
青井瑠夏がこちらのスマホを指さして言ってくる。
「か、勘違いしないでよね。別に欲しいとかそんなんじゃなく。し、真幼馴染として? そういうのは共有しないと」
なにを言っているのか意味不明だが、俺自身が相手に失礼を働いた場合、その意味不明が通じてしまう。
いきなり女の子にスマホ、カシャリは失礼以外のなんでもないだろうからな。いや、この子の阿修羅顔を見せたかっただけなんすけどもね。
「ら、L IME‼︎ 知らないわよね。それで送りなさい」
「え、あ、はい」
そう言えば、イルカとは違うチャットでやり取りしてるし、それは知らなかったな。
言われた通りにL IMEを教えてから、さっき撮った画像を送ると、青井瑠夏は嬉しそうな顔をしてくれた。
すると、俺のスマホが震える。
『良い写真』
俺のL IMEにそんな文字が入ると、青井瑠夏はスマホで顔を隠した。
「さ、さぁ行くわよ盗撮魔。遅刻遅刻」
間違っちゃないからなんとも言えん。とか思ってると、エーヒレチャットの方が震えた。
『エーヒレさん‼︎ 幼馴染の条件である「家が近い」はクリアしていたので、王道の待ち合わせをしてみたら、なんと瑛くんのL IMEゲットしました‼︎ てか、ツーショまで撮りましたけど、これはもう幼馴染ですよね‼︎』
え? この子、俺の出した幼馴染の条件をやろうとしてる?




