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お姫様と土だらけの白いドレス

「姫様!どこへ行かれたのですか、リリオール姫様!」



白髪がもうすぐ混じってきそうな男性は汚れ一つない黒のジャケットを着こなし、懐中時計をちらちらと気にしながら赤いカーペットの敷かれた長い廊下を歩く。

男性はふと立ち止まり、ひとつ息を吐くと後ろからパタパタと足音が聞こえてきたことに気が付いた。



「アルフレッド様、こちらにはいらっしゃいません」



サラサラなダークブルーの髪を一つに束ね、長いスカートのメイド服がよく似合う女性は苦笑いを浮かべながら、男性_第二王女付き執事のアルフレッドにそういった。



「マリーナ、そっちにもいませんか。まったく…毎日のようにこのようなことをしておられて、姫様の好奇心には困ったものです 」

「まぁ、今は色々なことを学ぶ時期ですから」



女性_第二王女付きメイドのマリーナは頬に手を当てながら微笑んだ。



「それももちろん大切なことです。が!本日はルシエラ家が全員そろって食事を囲める数少ない日。こんな大切な日に姫様は何に夢中になられているのだろうか 」



アルフレッドが今日何度目かのため息を吐いたその時、ふと外の中庭に目を向けるとシルバーベージュのふわふわの髪が太陽の光に反射してキラキラと輝いていた。



「いた!!」



大きな声に驚いたように左右に揺れていた髪がぴたりと止まり、そして頭が動く。

目の上で揃えられた髪の隙間から覗く青い瞳は宝石のように輝いていた。

少女はアルフレッドとマリーナを見つけるなり、嬉しそうに笑って立ち上がった。



『アルー!マリー!』

「姫様!一体何をしておられるのですか!」

『おはな!みて!きれーでしょ!』



手のひらを土だらけにした少女_第二王女リリオールは摘んだ花を掲げながら笑った。

真っ白なドレスが土だらけになっていることなどお構いなしで汚れた手のひらを見つめたリリオールはドレスの裾で拭った。



「姫様!ドレスで手を拭いてはいけないとあれほど...、!」

「っあ!アルフレッド様!」



普段リリオールに走るなと注意する自分はどこへやら、見たこともないスピードで中庭へ駆けつけたアルフレッド。



『アル、はやいねぇ』

「鍛えておりますから...ではなく!あぁ、先ほど着替えたばかりなのに、」



膝をつき、ハンカチでドレスの土を落とそうと試みるもしみ込んだ汚れはそう簡単に取れるはずもなく、もう一度着替えからやり直しだと肩を落とすアルフレッド。

遅れてその場にやってきたマリーナはリリオールの姿を見て笑った。



「まぁ姫様、朝の冒険は楽しかったですか?」

『マリー!えぇ、とっても!きれいなおはながとれたの!』



遠くで庭師が微笑ましそうにこの様子を見ていることに気が付いたマリーナは項垂れるアルフレッドの隣に膝をついてハンカチでリリオールの手を拭った。



「それは素敵な発見ですね。それをどうするおつもりで?」

『おかあさまたちにプレゼントするの!だからリボンでむすんで!』



リリオールの手に握られる花は強く握りすぎたのか若干くたびれている。

それでも花を差し出すリリオールの瞳はあまりにもまっすぐだった。

ひとつ息をついたマリーナは笑顔で頷いた。



「...は!項垂れている場合じゃない!姫様、すぐにお部屋に戻りお着替えです。お食事の時間に間に合わなくなってしまいます!」

『たいへん!』

「そうなのです、大変なのです!だから勝手にひとりでどこでも行かないでくださいね」

『ひとりじゃないよ?』



リリオールはそういうと少し離れた木を指さした。

すると長いマントを着た男性が頭の後ろで腕を組みながら木陰から出てきた。



「そうですよ、アルフレッド様。俺もいたんですから、そうカッカしないでください」

「レオネルト!お前がついていながら、なぜ姫様がこんなに汚れているんだ! 」



男性_第二王女付き護衛騎士のレオネルトはきょとんとした顔をした後、笑いながら口を開いた。



「姫様がおかあさまたちにおはなをプレゼントするの!プレゼントはじぶんでするの!なんて健気なことをおっしゃるのでつい」



ぐぬぬとこぶしを強く握るアルフレッドに対し口笛を吹くながらそっぽを向くレオネルト。

その様子をあきれながら見つめたマリーナはリリオールに笑いかけた。



「そろそろお部屋に戻りましょう。そんな恰好でいては王妃様たちにわらわれてしまいますよ?」

『やだ!』

「ふふ、では行きましょうか」

『うん!』



マリーナと手をつなぎ自室へ戻っていったリリオールを見つめながらアルフレッドとレオネルトは話を続ける。



「リリオール姫様ももうすぐ五歳。そろそろ落ち着きが出てもいいころなはずなのですが…」

「静かすぎるよりいいですよ」

「そうはいってもこのアルカンティア国の第二王女であらせられる身。もしものことがあってからでは遅いのですよ」



やれやれと時間を確認したアルフレッドは懐中時計をしまう。



「そうならないように俺たちがいるんですから、そんな心配ばっかしてたらあっという間に白髪だらけになりますよ、っで⁉」

「だまりなさい」



レオネルトの頭上にアルフレッドの鉄槌が下されたのはふたりだけしかしらないことである。

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