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ぼーいずどんとだい  作者: ゲロブス
第十三章 2人の蛾男
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あの作戦

「フゴッ………んっ?」

吉見由香里は、ベッドのすぐそばの冷たい床の上で目を覚ました。

寝相のせいで転げ落ちたようだ。

部屋の壁には、彼女が描いた流と思しき男の、ヘタクソな絵が幾つも貼られている。

「ゆ…夢?確か周りが変異者になって…」

寝起きでぼんやりとした頭のまま、ベッドに腰掛けておもむろにテレビをつけると、ニュース番組が映し出された。

全身血まみれのリポーターが、カメラに向かって、息を荒げながら叫んでいた。

「なんとも呆気ない幕切れです!!まるですべては幻だったかのように、あっさりと事態は収束しました!街に大量発生した変異者達が、突如として元の姿へと戻ったのです!ご覧ください!」

彼がそう述べると、気を失って地面に倒れている人々の様子が映し出された。

「おかげで私も九死に一生を得ることが出来ました!一度変異した以上、もうコイツらに人権は存在しないので、先程の仕返しをしたいと思います!おう!さっきはよくもやってくれたじゃねえか!ゲボ野郎が!このやろこのやろこのやろ!!」

リポーターは目を血走らせながら、目の前で倒れている男の頭部を執拗に踏みつけた。

由香里は青ざめた表情で、画面を眺めながら言った。

「ゆ、夢じゃなかった…!ハッ!そうだ…!流さん!」

部屋を飛び出すと、由香里は階段を駆け下りて、一目散に玄関へと向かった。

リビングを横切ろうとした時、ふいに部屋の中から男の声がした。

「待つんだ、由香里」

見ると、縁がリビングで床にうつ伏せに倒れていた。

「な…何やってるんですか?そんなところで…兄さん」

「俺のことはいい、外に出るのはやめておけ。騒ぎは収まったようだが、まだ安心は出来ん」

「止めないでください!流さんが私を呼んでる気がするんです!『由香里〜助けて〜』って!」

「いや、多分それ気の所為じゃ…」

「何か言いましたか?兄さん」

「あ…何でもないです、ハイ」

由香里に凄まれて、縁は大人しく引き下がった。

それから、彼女の顔をじっと見つめると、縁はしぶしぶ観念した様子で、ため息交じりに呟いた。

「…どうやら俺が止めたところで無駄みたいだな、困ったヤツだ。仕方ない、俺はしばらく動けそうにないが…代わりとして念の為にアレを持って行け。少なくとも、俺の最高傑作だからな」




「これは驚いたな…。粋なマネしてくれるじゃないか」

流はかつての恩人と同じ姿をした、目の前の怪人を見ながら、小さく言った。

彼の手には、数日前に縁から授かった、紙束のうちの1枚が握られていた。

まさかの復活を遂げたと思われた蝶男の正体は、縁が描いた作品だった。

当然、その真相を知る由もない蛾男は、口元を手で拭うと、ペッと唾を吐き出した。

「フン!どういうワケか知らねえが、もう一度あの世に送って…」

『オラは死んじまっただ〜♪オラは死んじまっただ〜♪』

突然、彼のボトムスの中から、緊張感のないメロディーが流れ出した。

「………チッ」

小さく舌打ちすると、蛾男は苛立たし気に携帯を取り出し、耳に押し当てた。

「何だよ!?忙しいってのに!あ…いや俺は大丈夫だけどよ。お前はどうよ?え?それマジ?ハハハ!堅いこと言うなよ、オイ」

「……………」

これも演技だ………演技だよな?

流がその様子を眺めていると、彼の隣で、偽蝶男が口を開いた。

「…オイ、流」

「えっ?あっ…ハイ」

しゃ…喋るのか。

「…アノ作戦デ行クゾ」

「…え?何?あの作戦って…」

「任セタゾ」

そう言うと、偽蝶男は蛾男のもとへと突っ込んで行った。

流は彼の背中に向けて叫んだ。

「いや、マジであの作戦って何っ!?」


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