最強と最弱
『ただいま現場よりお送りしています!!ご覧ください!現在、街には多くの変異者が跋扈しています!まるで世界の終わりを思わせるような光景です!せっかくなので、あちらの変異者にインタビューを試みたいと思います!すいません、貴方なかなか良い感じの変異っぷりですね〜!ひとつ感想を聞かせてもらってもいいでしょうか?あっちょっと…!やめっぎゃあああああ!!』
『…はい、松村リポーターありがとうございました〜。それでは続いてのニュースです。人気バンド、SDGズのメンバーである〇〇氏が、違法な薬物を使用して、愛人の男性と性行為を行った疑いで…』
一方、その頃…。
今にも振り出しそうな、陰鬱な曇り空の下、殺風景なビルの屋上で、2人の男が相まみえていた。
白髪混じりの髪をした、ロングコートを着た初老の男は、小さく拍手しながら、蛾男に言った。
「流石だな。噂通り…いや、噂以上の実力だ。あの蝶男を葬っただけのことはある。最凶最悪の変異者の名は伊達ではないということか」
「アンタは…!」
張り詰めた空気の中、蛾男は一呼吸開けると、続けて言った。
「………いや誰?この流れで全く知らないオッサン出てくることある?えっ、もしかしてアンタがボス?」
「ああ、如何にも。この騒動を引き起こしたのは私さ」
「…まあいいか、つまりお宅を倒しゃ万事解決ってワケね。そんで俺は汚名を返上し、一躍ヒーローってこったな!」
意気揚々と近付いて来る蛾男に、初老の男はゆっくりと右手の手の平を向けた。
「それは結構だが…いいのかな?私が受けたダメージは下僕にも共有される。私を殺せば…今、地上に溢れている変異者達も、一人残らず死ぬことになるぞ?」
「へぇ〜、そりゃ万々歳じゃねーか♪めでたしめでたしだな」
「…そうかな?彼らは私の力によって操られているだけだ。私がその気になれば、人間に戻す事も出来る。君は何の罪もない彼らの未来を奪えるのか?」
「………あぁ?!」
蛾男は目に見えて動揺し始めた。
「そして…どうやら来たようだな」
彼がそう言うや否や、ビルをよじ登って、複数の変異者が屋上に姿を現した。いずれも、まだ幼い子供のようだった。思わずたじろぐ蛾男に、初老の男は不敵な笑みを浮かべ、呟いた。
「さぁ…どうする?ヒーロー」
「えっ、どーしよ…?」
雪崩を打ったように、変異者達が蛾男へと攻撃を開始した。
それらを華麗に回避しながら、蛾男は彼らに呼びかけた。
「わ〜!!止めろオメーら!当たったら痛えだろーが!!」
「…どうした?遠慮することはない。彼らを倒せばいいだろう、これまで君がやって来たようにな」
初老の男は蛾男の様子をあざ笑いながら、挑発するように言った。
「ンなこと出来っかよ!絵的にヤベーだろ!!」
「これは傑作だな、最強の君が…戦う力を持たない、最弱の私に手も足も出ないとは」
「おいガキ共!正気に戻れ!俺はお前らを殺したくは…!」
言葉の途中で、変異者の拳が彼の後頭部にヒットした。
「あっ、気が変わりそう…」




