敵の敵は味方?
次々と現れる幼い変異者の猛攻を辛くも凌ぎながら、防戦一方の蛾男は言った。
「アンタ何が望みだ?こんなことしてよ〜!」
「世界は新たな指導者を求めている、全てを正しい方へと導く指導者をね。人類を超越した上位者である我々こそが、この世を治めるに相応しいと思わないか?私が統治する新世界では、史上初の世界平和が実現するだろう。そのために君や…彼の力が必要だというワケさ」
「…なんでこうもイカれた過激派ってのは、考えることがワンパターンなのかねぇ?うおっ!危ね!」
「イカれた世界にはイカれた指導者が必要なのさ。そんなことより、足元に注意した方がいいんじゃないかな?」
一瞬の隙をつかれ、蛾男は背後からアキレス腱の辺りを切り裂かれ、その場に膝をついた。
「あら痛い」
ここぞとばかりに、変異者達が飛び掛って来る。
初老の男は勝利を確信し、口角を上げた。
「終わったな」
「…アンタがな」
「…?」
耳元で声がした途端、初老の男は背後から何者かに羽交い締めにされ、腕に針のような何かを突き刺された。それと同時に、変異者達の動きがピタリと止まった。
拘束を解除されると、初老の男は力なく跪いた。振り返ると、そこにはもう一人の蛾男が佇んでいた。右手には、サソリの尾節のようなものを持っていた。
「流…」
「再び誰!?」
自身と瓜二つの怪物の登場に困惑する蛾男を尻目に、流は悠長に語りだした。
「…知ってるかな?サソリってのは死んだ後も尻尾に毒が残ってるんだとさ。前に、もしも自分に何かあった時は、好きに使えと彼女に言われていたんでね、さっき持って来たのさ」
「まさか…」
「ああ、そうさ。アンタの手下が殺した、僕の友達の置き土産だ。彼女の毒には変異者を人間に戻す効果がある。ところで…ダメージの共有がどうとか言ってたよな、毒はどうなのかな?」
流の思惑通り、変異者達の肉体が瞬く間に人間へと戻っていくと、そのまま意識を失って、バタリと倒れ込んだ。
「???????」
蛾男はその様子を、頭にクエスチョンマークを浮かべながら、ぼんやりと眺めていた。
「上手くいったな。しかし…まさか全てアンタの仕業だとはね。どうりで転校してから襲われるようになったわけだ。それで、まだ何か手はあるのか?校長センセイ」
「………ふふ」
何を思ったのか、校長は薄っすらと意味深な笑みを浮かべたかと思うと、やがて狂ったように高笑いを始めた。
「…何が可笑しいのかな?」
「イカれちまったんじゃないのォ?」
不穏な空気が漂う中、校長は突然、笑うのを止めると、地に頭をつけて叫び出した。
「どうもすいませんでしたァ!!命だけは許してくださァい!!」
「……………」
数秒後、ビルの屋上から1人の男が、断末魔の叫びを上げながら地上へと落下し、潰れたトマトのように弾け飛んだ。
流が校長の死体を見下ろしていると、背後から蛾男の能天気な声がした。
「え〜と…アンタ俺の生き別れの兄弟かなんか?まっ、よく分かんねーけど助かったよ。そんじゃ、俺はこれで失礼させてもらうぜ。また縁があればよろしく〜」
そう言って飛び去ろうとする蛾男に、流は呟いた。
「…悪いがそうはいかないな、次はアンタの番だ」




