観覧車
「ご来園の皆様にお知らせしまーす!当園には出口も閉園時間も存在しませーん!死ぬまで楽しんでいってね〜!あっ!だけど、どォ〜しても外に出たいって場合は、1つだけ方法があるよ!それは誰か1人を生贄に捧げること!よーするにぶっ殺せってことだね〜!ほんじゃバイバ〜イ!ハハッ★」
どこかの有名な黒ネズミを彷彿とさせる、ハイテンションな口調で説明を終えると、アナウンスはブツッ、という音とともに途絶えた。
直後、流の隣で、縁がボソリと呟いた。
「なるほど…そういうルールってワケか」
その言葉に、流は彼から咄嗟に距離を取った。
「おいおい、そんな警戒するなよ。俺がそんなことをするような奴に見えるってのか?」
そう言って、彼は胡散臭い笑みを浮かべた。
「むしろそうにしか見えませんが」
縁はすぐそばのコーヒーカップに寄りかかると、腕を組みながら状況の整理を始めた。
「確か外に出るには生贄が必要とか言ってたな…。単に俺達を争わせようとするための嘘かもしれないが…。とりあえず周囲を探索してからでも遅くはないだろう。脱出への糸口が見つかるかもしれないしな。そうと決まれば、さっそく…」
「おぉ〜高ェ〜!」
観覧車の頂上で、窓から地上を俯瞰しながら、縁は興奮気味に呟いた。
流は向かいの座席で、その様子を死んだ目で眺めている。
「こんな事してる場合じゃないと思うんですがね…」
「だから、さっき説明しただろ?今ごろ、俺の作品達が周囲をくまなく探索してる。俺達はのんびりしてりゃいいんだよ。スケッチブック毎こっちに来れたのが、不幸中の幸いだったな。それに…なかなか興味深い場所じゃないか、いいインスピレーションになりそうだ。由香里にも見せてやりたいね」
流が窓の外を覗くと、園内を一望することが出来た。
園は周囲を小さい柵でぐるりと囲われているようだった。柵の向こうには、どこまでも続く濃霧が広がっていた。
「…柵の外に出るのはオススメしないぞ」
流の心を見透かしていたかのように、縁が呟いた。
「すでに作品達をいくつか向かわせたが、全て殺されちまった。恐ろしく強い何かがいるみたいだな、外に出れば命はないだろう」
それから少しの沈黙が続いた。遠い昔、母と弟の3人で観覧車に乗った時のことを、流がぼんやりと思い出していると、ふいに縁が口を開いた。
その横顔は、どこか遠くを見ているようにも見えた。
「一応、言っておくが、もしも出口がどこにもなかった場合は…遠慮することはない、俺を殺して君だけでも脱出したまえ。分かったな?」
「何…?どうしてそん…」
「──とか言わないからね?絶対」
縁はいきなり態度を一変させた。
「……………」
「何だよ、その白い目。言う訳ないだろ、そんな都合のいいセリフ。君なんかの為に俺が犠牲になるなんて真っ平ごめんだからな、マジで。妙な期待はしないでくれよ?」
「……………」
「だから何だよ、その目は。あっ、何目ェそらしてんだよ。言いたいことがあるならハッキリと…」
観覧車が一周した。




