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ぼーいずどんとだい  作者: ゲロブス
第十二章 ある平凡な長い一日!!!
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サソリの尻尾

教師の長々としたホームルームが終わると、生徒達はそれぞれ帰宅を始めた。

流も例に漏れず、スクールバッグを肩に背負い、教室の出入り口へと向かった。

すると恒例のように、背後から気の抜けるような、由香里の能天気な声が響いて来た。

「流さーん!!駅前でなんと!猿カフェがオープンしたらしいですよ!!これは行くしかないですよね!?ね!?」

どうやら由香里には昨夜のショッキングな出来事など、頭に残ってないようだ。

流は振り返ると、彼女の顔を思案げにじっと見つめた。

彼の脳裏に、永木や量の姿が思い浮かんだ。

「ど、どうしました…?もしかして目ヤニついてます?」

「…やっぱり、僕とは関わらない方がいいと思うんだ」

「え゛ッ…!?」

いつにも増してシリアスな表情でそう呟く彼に、由香里は思わず目を点にした。

「な…何故ですか!?まさかこっそり抜け毛集めてたのバレて…!?」

「それはそれで問題だが違う」

流は小さく咳払いすると、彼女に背を向けて言った。

「…とにかく、それじゃ」

言い残すと、流はそそくさと部屋を後にした。由香里は鳩が豆鉄砲を食らったかの如く、いつまでも立ち尽くしていた。



その後、流がひとり帰り道を歩いていると、目の前の電柱から、何者かが待ち伏せていたかのように、ヌッと身を乗り出した。

「あれぇ?今日は1人ィ?」

「………」

白々しい口調でそう尋ねる荒井奈美のそばを、流は無言のまま通り過ぎた。

背後から彼女がつけてくる足音が聞こえた。

「昨夜は随分と派手にやってたみなたいじゃん、見たかったなぁ。ところで…あの子とケンカでもしたのぉ?」

「…たまに忘れそうになる、自分が疫病神だってことをな。だけどそういう時は決まって最悪なことが起きるんだよ。君もいい加減、僕に関わるのはやめておけ。さもないとまたトラブルに巻き込まれるぞ」

突然、歩道沿いの鬱蒼とした茂みの中から、ワニのような頭部を持つ変異者が飛び出して来た。

「グオオオオ!!突然だが俺は変異者だァァ!テメエらの肉をよこせェェ!!」

流はウンザリした様子で左右に小さく首を振った。

「…ほら、こんな感じでな」

「楽しそうじゃぁん♪」

ワニ男は2人に指を向けると、威勢よく叫んだ。

「そっちのバカそうなヤツ!まずはお前から食うとしよう!!」

「ハハハ!言われてるよぉ〜?ガー君」

「たぶん君の方だと思うが」

流の予想に反し、ワニ男は口を大きく開け、彼の方へと飛びかかって来た。

「…と思わせて最初はお前からだァァ!!」

流が応戦しようとした途端、ワニ男の肩の辺りに、いくつもの節に分かれた、先端が鈎状になっている細長い何かが突き刺さった。

それはまるで、サソリの尻尾のようにみえた。

「ギニャアアアア!?えっ待って痛い痛い痛い!!」

驚いた流が目で追うと、それは奈美のスカートの下から伸びているようだった。

「よっと」

奈美はそれを振るって、ワニ男を地面に叩きつけた。

すると、みるみるうちにその肉体が人間の姿へと変わっていった。

「これは…?」

「あ〜私の尻尾にある毒だよ。なんか変異者の力を消しちゃうみたいなんだよねぇ〜」

そう言うと、彼女は尾を一瞬でスカートの中に収縮させた。

「…フーン、ところでコイツはどうする?」

流は、正気を取り戻して肩を抑えながら、地面でのたうち回る男の方を顎で指した。

「さぁ?別にほっといても死にはしないでしょお」




「ただいまで〜す…」

由香里は帰宅するなり、蚊の鳴くような声で呟いた。

そのままリビングに行くと、ベレー帽を被った若い男が、待ってましたとばかりにソファから飛び起きて近寄って来た。

「ただいま由香里ィ…。今日は古本屋で60年代のレアなヴィンテージ画集を手に入れたんだ。コイツはゲロヤバいぞ〜!一緒に見るか?」

「わ…わ〜!そうなんですか?ちょっと疲れてるんで後でゆっくり見ますね?」

そう言って笑う由香里の顔に、どこか陰りがさしているのを、縁は見逃さなかった。

「…学校で何かあったか?」

「そんなことないですよ〜!心配しないでください!」

「…本当か?」

「はい!それじゃ少し寝ますんで…」

由香里が自室へと向かうと、縁は後ろをピッタリとついてきた。

「ホントのホントか?」

「はい」

「ホントのホントのホン…」

由香里は部屋に入ると、ドアをバアン!!と音を立てて閉めた。



「………」

縁はドアの前でしばらく立ち尽くした後、意味ありげな微笑を浮かべた。

「…やれやれ、久しぶりにアレをするしかないか」



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