天からの贈り物
流と量の2人による熾烈な空中戦は、尚も続いていた。
夜の摩天楼の間を縫いながら、量は流の後ろを猛スピードで追跡しつつ、言った。
「ちょこまかとすばしっこい野郎だぜ…。いいだろう、最終兵器その②を出してやる…!」
「…一体いくつ最終兵器があるんだ?」
量の背中にあるハッチが開くと、そこから3発のミサイルが放たれた。ホーミング機能があるのか、ミサイルは流目掛けて、勢いよく突っ込んで行った。
「くらえ!デス・クリムゾン・ジェノサイド・デス・インフェルノ・ミサイルゥ!!」
まるで金魚のフンの如く、執拗に追尾してくるミサイルに、流は鱗粉を振り撒いた。2発は空中で溶解させることに成功したが、残りの1発は彼の背中に命中した。
流は撃墜された戦闘機のように、墜落していくと、ビルの屋上に叩きつけられた。
「うぐっ…!」
ダメージが深かったのか、たちまち彼の変身が解除された。
マズイな、身動きが取れない…。クソッ、アレだけはやりたくなかったが…仕方ないか。
量は彼を見下ろしながら、勝ち誇った笑みを浮かべた。
「ハッハッハッ!どうだ流!俺のデス・クリムゾン………え〜と………ミサイルの威力は!ん?」
量は流の頭部から、鬼のツノのようなものが生えて来るのを見た。
彼の脳裏に、母の命を奪った変異者、雷男の姿が想起された。
「オイオイオイ…!まさかそりゃあ…!?」
「…悪いな、そのまさかで」
流は量に、ゆっくりと右手の指を向けた。
夜の街に、耳をつんざくような雷鳴が鳴り響いた。
「あっ!流れ星!」
とあるアパートのベランダで、1人の寝間着姿の若い女が、夜空を眺めながらそう呟いた。
女はそれから、ハッとした表情を浮かべると、両手の指を組みながら星に祈った。
「どうか私好みのイケメンが空から落ちてきますように…♥」
その瞬間、彼女の背後で派手な音とともに、天井を突き破って謎の怪人が部屋に落下して来た。
女はぶったまげて、悲鳴を上げながら振り返った。
「ぎゃあああ!!何何何ッ!?」
女が泡食っていると、今度はベランダに蛾を思わせる姿の怪人が、颯爽と舞い降りて来た。
「邪魔するよ」
「ひいぃっ!何なの!?何なのアンタら!?」
流は錯乱気味にわめき声を上げる女に、鬱陶しそうに言った。
「…悪いけどしばらく出ていってくれるかな?」
「は、は、はい〜!だから殺さないでぇ〜!!」
流は女が外に飛び出して行くのを確認すると、煙を出しながら横たわる量の方へ、歩み寄った。
「潮時か…」
敗北を悟った量は、流に気付かれぬように、左手首のガントレットのボタンを押した。
流は量のそばで立ち止まると、そのままトドメを刺すかと思いきや、変身を解いて彼に手を差し伸べた。
「…どういうつもりだ?」
「何って…仲直りの握手ってヤツさ。もう決着はついただろ?」
「何考えてやがる」
「子供の時に兄弟喧嘩した時は、君の方からこうして来ただろ?だから今度は僕の方かな…と思ってね」
「バカか、お前」
「…あの日、僕が誕生日プレゼント欲しさにあの店に立ち寄らなかったら…別の未来もあったのかもな。すまない」
量は幼い頃の記憶を、朧気ながら思い出した。
「…ありゃ、お前のせいじゃねぇだろ」
少しの沈黙のあと、流は言った。
「今…バイトで稼いだ金でアパートを借りて一人暮らししてるんだ。そこに来るか?聞きたいことも山程あるしな。もちろん生活費は折半してもらうがね」
「…まぁ、悪かねぇかもな」
そう答えると、量は流の右手を握り返そうとした。
「…なんてなぁ」
量は突然、流に掌を向けると、威力を最小限にして衝撃波を放ち、彼を屋外に吹っ飛ばした。
「うおッ!?」
「じゃーな、兄貴」
その直後、小規模の爆発が部屋を包み込んだ。量が押していたのは最終兵器その③である、自爆装置のボタンだった。
流は地面に着地すると、モクモクと黒煙を上げる部屋を見上げながら、呟いた。
「バカ野郎…」
どうでもいいと思うが、その頃由香里は──!?
「あれ…?私何でこんな所に倒れて…?ヒッ!兄さんから通知100件以上来てる…!」




