4つの穴
変異者の被害によって育ての親である母を喪った流と量の2人は、叔母夫婦に引き取られることとなたった。
それが彼らの運命の分かれ道だったのかもしれない。
叔母夫婦は百貫デブの一人息子にばかり愛情を注ぎ、2人を邪険に扱い、毎日のように彼等に小言を呟いた。
量は叔母夫婦に反抗したりすることはなかったが、決して夫婦に心を許すことはなかった。また、子供心にここは自分がいるべき場所ではないと、漠然と思った。
時が経つにつれ、その思いは強くなっていった。
次第に彼は、わけの分からない街のチンピラ共とつるむようになり、気にいらない奴を見かけてはケンカをふっかけた。
そして大体の場合、ワンパンで返り討ちにされて病院送りとなった。
流は、そんな彼に何も言葉をかけられなかった。
そんなある日、量は忽然と姿をくらませた。流は彼がいそうな場所を探し回ったが、全て徒労に終わった。
2人は満月が輝く夜空に舞い上がると、互いに睨み合いながら言葉を交わした。
「お前とやり合うのはガキん時以来か?あの時は決着つかず仕舞いだったが、今回はそうはいかね
ぇぞ?」
そう嘯くと、量は両手の指先からマシンガンのように弾丸を発射した。
流はそれを、いとも容易く弾き返した。
「…変異者というよりもサイボーグだな、そういうの有りなのか?」
「なかなか素早いな。仕方ねえ…最終兵器といこうか」
「もう少し出し惜しみしろよ」
量が右手を前方にかざすと、掌が眩い光を発し出した。そのまま流に向けて何らかの攻撃をして来るかと思いきや、彼はその手を地上へと向けた。流の背筋に冷たいものが走った。
「確かあのアホがいたのは…この辺りだったかァ?」
「何…?フン、撃てるものなら撃ってみればいいだろう」
量は躊躇なく、無言で地上へと衝撃波を放った。
「あ〜クソッ!本当に撃つやつがいるか!」
流は由香里を守るべく、大慌てで衝撃波に自ら突っ込むと、派手な爆発とともに血を吹き出してぶっ飛んで行った。
彼はそのまま、吹っ飛んだ先にある2階建ての家屋の天井をぶち破り、屋内へと落下した。
流が這いつくばっていると、すぐ側からけたたましい悲鳴が聞こえてきた。
「うわぁっ!何だよ!?」
「ひぃっ!変異者っ!?」
声の方に顔を向けると、裸の男女がベッドの上で覆い重なりながら、こちらを見て驚きの表情を浮かべていた。
「…お楽しみ中に悪かったね、すぐ出ていくよ」
流は淡々とそう言うと、羽根を羽ばたかせて天井を再びぶち破り、颯爽と飛び去って行った。
残された2人は天井にポッカリと空いた2つの穴を眺めながら、ポツリと呟いた。
「いや、同じ穴から出てけよ…」
「ねぇ、寒いんだけど…」
すると、安心したのも束の間、またも天井を派手に突き破って、今度は光沢のある鋼鉄のボディを持つ怪人が、部屋に侵入して来た。呆気にとられている2人に、怪人は言った。
「…おい、ここに蛾のバケモノみたいなヤツが来なかったか?」
「…今さっき、出て行きましたけど…」
「チッ、すれ違ったか…。邪魔したなァ」
怪人は跳躍すると、天井に4つ目の穴をブチ空けて姿を消した。
「あぁもう、どいつもこいつも…!!」
男は頭を抱えた。




