26話
ラヴィが部屋に戻ってくることは無かった。
ルスは周辺で彼女を探すが見つからない。
祭司のアスに聞いても見ていないという。
(ラヴィはどこへ行ったんだ?)
ルスは冒険者ギルドへ向かった。
「ラヴィちゃんが行方不明~!?」
「マジ!?」
ギルド内ロビーの隅にあるボックス席で、クロルとシロルは声をあげた。
「朝起きたらいなかったんだ。何も言わずこんな長期間居なくなるなんて初めてで」
「え、ってか二人って同じとこ住んでんの?」
「ああ」
「「……」」
二人は顔を見合わせる。
「そうなんだ。まあ状況は分かったけど~」
「だから一緒に探して欲しくて」
「ん~」
シロルが考え込む。
「まあいいんじゃない?」
「え?」
ルスはその言葉に驚きが隠せなかった。
「勝手に他所のパーティに行ったのかも」
「結構あるよ~勝手に辞めたり他へ移ったり」
「人多いしね。引き抜きとか人間関係の不和とか理由は色々」
二人はあっけらかんとしている。
(ラヴィが何も言わずに?考えにくいけど)
向かいのソファに座っていた二人は徐に立ち上がり、ルスの方へと来る。
「ねえ、それより私たちと…」
三人がけのソファに座っていたルスを挟むように座るクロルとシロル。
「たまには遊ばない?」
二人は妖艶な微笑みを向ける。
柔らかい身体が両腕に触れた。
甘い匂いで脳が刺激される。
二人の顔が近い。
両サイドの視線を感じ、ルスは少しの間硬直した。
「…いや、やっぱり心配だから探しに行くよ」
ルスは立ち上がり、出口へ歩く。
「え?ちょっ!ねえ~!」
残されたクロルとシロルはその場で声をあげた。
冒険者ギルドを出る直前だった。
「なあ、オレ様と戦おうぜ」
急に呼び止められる。
声の主はイラギだった。
「…戦うつもりは無い。それに今忙しいんだ」
「あの女の捜索か?」
「っ!? なぜそれを!?」
「安心しろ、まだ生きている」
「お前まさか」
「断ってもいいぜ?あの女がどうなるかは分からねえがな」
ルスは奥歯を噛んだ。
「なあ、戦おうぜ?」
イラギはにやりと笑う。
「まずは無事を確認させてもらおうか」
「チッ…ついてこい」
イラギは以前ルスが実技試験で使用した建物へ向かった。
建物の一室に入るとイラギの仲間らしき人間たちがいる。
その者たちで隠れていたが、ラヴィは部屋の隅にいた。
身体は縄で縛られていて、ろくに身動きが取れないようだった。
猿ぐつわもされている。
「んんー!」
ラヴィが声にならない声をあげる。
「ラヴィ!」
ルスは駆け寄ろうとした。
「近寄るな!オレ様に従え」
イラギは大きな声で言った。
ルスは素直に従う。
イラギはラヴィのもとへ行き、背中の縄を掴み持ち上げた。
縄が彼女の身体を締め付ける。
「んぅ…っ!」
ラヴィは苦しそうな声をあげた。
イラギは満足そうに笑う。
ルスはイラギを睨んだ。
「どうしてこんな事を…」
「どうして?簡単なことだ。てめえと戦うためだよ」
イラギは言った。
「てめえは挑発にものらねえ。だから作ってやったよ、理由をよ」
「そんな事の為に」
「うるせえ!!」
イラギは怒鳴る。
「イライラすんだよ!持て囃される奴が!俺よりも強いと扱われる奴が!戦ってもねえのに下に見られるのが!」
イラギの目は血走っていた。
「だからぶっ潰してきた。気に食わねえ奴は全員な」
静かに聞いていたルスは口を開く。
「戦うってどこで、どうやって」
「何のためにここに来たと思ってんだ。とっておきの場所を用意してやったよ。特別にな」
二人は部屋を出て、建物の中央へと向かう。
ルスが試験官と実技試験を行った場所だった。
以前と異なり、そこには多くの観客がいた。
「これは…?」
(本当に何も知らねえのか)
イラギはルスがこの国に来たばかりという噂を思い出していた。
「決闘だ。揉めたときなんかに潰し合う。簡単に白黒はっきりつけられるからな」
「今回は観客も用意してやったぜ。オレ様の強さの証人となってもらうために」
「勝敗はどう決めるんだ?」
「そんなもんドロップに決まってるだろ。その前に降参してくれてもいいぜ?」
イラギは笑う。
「…じゃあ、戦おうか」
ルスは静かに言った。
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